AI

2026.06.01 11:30

学術論文の捏造引用が「3年で12倍」、AI幻覚が科学の信頼を揺るがす

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「公開済みの研究論文に含まれる捏造引用は急速に増大する問題だ」。そう結論づける査読付きの新たな研究レターが、先週、The Lancetに掲載された。

研究者は、学術誌に投稿する論文の執筆や編集を助けるため、AIに頼ることが増えている。コロンビア大学の研究チームによれば、こうした実務と、大規模言語モデル(LLM)が実在しない文献に対応しないタイトルを「ハルシネーション(幻覚)」が起こるリスクが、増加の主因である可能性が高いという。

筆頭著者で、コロンビア大学看護学部准教授のマキシム・トパズは、自身が執筆中の論文をAIで編集したところ、捏造引用が追加され、のちに編集スタッフから指摘された経験をきっかけに本研究の実施を決めたと述べた。

その出来事に恥ずかしさを覚えたトパズらは、偽の引用という問題がどの程度広がっているのかを調べた。彼らは自動化された引用検証システムを用い、2023年1月から2026年2月に公開され、PubMed Centralのオープンアクセス・データセットに収録された250万本超の論文を監査した。

これらの論文には1億2500万件超の書誌情報(参考文献)が含まれていた。このうち9710万件(77%)はPMIDを有し検証された。残る23%は主としてウェブサイト、書籍、他の研究を参照するもので、分析から除外された。

略語やスペルミスなど、タイトル上の要因で生じ得る偽陽性を識別するため、複数のフィルターが適用された。これら初期フィルターを通過した参考文献は、PubMed、Crossref、OpenAlex、Google Scholarに照合して検証されている。4つのデータベースのいずれにも見当たらない場合、その引用は捏造された参考文献と分類した。

チームが見つけた捏造引用は、2800本の論文の中で合計4000件強だった。数としてはそれほど多くないが、悪いニュースは、ハルシネーションによる引用がわずか3年間で約12倍に増加し、明らかに増加傾向にあることだ。

2023年は、少なくとも1件の捏造参考文献を含む論文は約2828本に1本だった。2025年には458本に1本へと上昇し、2026年の最初の7週間では277本に1本が少なくとも1件の捏造参考文献を含んでいた。

著者によれば、捏造参考文献は「明らかに欠陥があるわけではない」ことが一般的で、検出が難しい。具体的な科学トピックを扱い、書式は正しく、実在の研究者に帰属させ、もっともらしい刊行日を伴っていた。著者は、2024年以降の急増が、LLMが2022年後半から2023年にかけて広く使われ始めた時期の後に想定される出版のタイムラグと一致すると指摘した。

次ページ > 参考文献を含め、報告の正確性に責任を負うのは最終的に著者自身であるべきだ

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サイエンス

2026.04.22 18:00

社会科学の研究結果は「約半分しか再現できない」、世界最大規模の検証で明らかに

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公表済みの社会・行動科学の実験研究についての「再現可能性と信頼性」を大規模に検証した新たな調査により、過去に公開された結果のうち、新しい研究で再現できるのは約半分にとどまることが明らかになった。

これは「SCORE(Systematizing Confidence in Open Research and Evidence)」プロジェクトの主要な結論の一つだ。同プロジェクトでは、2009年から2018年にかけて62の学術誌に掲載された数千本の科学論文を分析した。この大規模な国際プロジェクトは、米国防高等研究計画局(DARPA)の資金提供を受けて実施された。

再解析の対象は犯罪学、経済学、教育科学、健康科学、リーダーシップ、マーケティング、組織行動、心理学、政治学、公共行政学、社会学といった分野の研究である。結果は権威ある学術誌Natureに掲載された以下の3本の論文にまとめられている。

Investigating the reproducibility of the social and behavioural sciences
Olivia Miske ほか、Nature、オンライン版2026年4月1日、doi: 10.1038/s41586-026-10203-5。

Investigating the analytical robustness of the social and behavioural sciences
Balazs Aczel ほか、Nature、オンライン版2026年4月1日、doi: 10.1038/s41586-025-09844-9。

Investigating the replicability of the social and behavioural sciences
Andrew Tyner ほか、Nature、オンライン版2026年4月1日、doi: 10.1038/s41586-025-10078-y。

次ページ > 「再現性の危機」は社会・行動科学に限った問題ではない

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AI

2026.05.25 18:00

AI生成論文が学術誌を汚染 査読の3割にAI使用の痕跡

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「AIスロップ(AIによる粗悪コンテンツ)」という言葉は通常、ソーシャルメディアのフィードを埋め尽くす低品質な画像やテキストを指す。それが今、科学的知識として何が認められるかを決定する査読システムにまで到達している。

経営学研究におけるトップジャーナルの1つであるOrganization Scienceへの投稿数は、ChatGPTの登場以降42%増加した。そして文章の質は低下している。

同誌編集チームによる新たな研究によれば、AI生成の原稿は人間が書いたものに比べて読みづらく、専門用語が多く、却下されやすいことが示された。一方で、学術誌が掲載可否の判断に日常的に用いる専門家による査読のうち30%以上に、検出可能なAI使用の痕跡がいまや見られる。編集者は、それらの査読が本質的に情報価値に乏しいと報告している。科学をより生産的にするはずだった技術が、当面のところ、評価を難しくしているのだ。もちろんこれは、移行期にあるシステムのスナップショットであり、研究におけるAIへの恒久的な断罪ではない。だが、そのスナップショットには仔細に見る価値がある。

筆者はこれまで、査読にかかる構造的な圧力、そしてAIツールがアウトプットを加速させる一方で科学的思考の質を低下させうるリスクについて書いてきた。デューク大学のシャリク・ハサンが率いる同誌のAIタスクフォースによる本論文は、単一のジャーナルにおいて、そうした懸念に詳細なデータを付した初の研究である。

チームのシニアエディターで、ウォートン校の教授でもあるクローディン・ガーテンバーグと話したとき、議論はほぼ1時間に及んだ。彼女はAI懐疑派ではない。「私はClaude CodeとCodexを一日中使っている」と彼女は言った。「この1年の研究プログラムのあらゆる側面で」だという。

だが彼女と共著者たちは、机上に届く原稿の中で、名づけがたい質的な変化に気づいていた。「私たちは主張ありきで来たわけではない」と彼女は言う。「ただ、この感覚に事実を与えよう、と言っただけだ」。彼らは2021年1月以降の投稿6957本と査読1万389本を分析し、Pangramを用いて各テキストのAI含有度をスコア化した。Pangramは独立した評価において、現在利用可能なAI検出ツールの中で最も精度が高いとされています。

投稿の急増

2022年後半のChatGPT公開以降、Organization Scienceへの投稿は42%増え、コロナ禍に同誌が経験した増加の約2倍となった。編集者たちは、この増加のほぼすべてをAIに帰している。人間のみが書いたと判定された投稿は、実際には減少した。2026年初頭までには、同誌に投稿される原稿の大半に何らかのAI関与が見られるようになり、最も急増しているカテゴリーはAI含有度が70%以上とスコア化された論文である。

次ページ > 誰が、なぜAIを使うのか?

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テクノロジー

2026.05.24 12:00

ChatGPTは領収書を偽造できるが、自らの偽造を見抜くことはできない

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領収書の数字1つを書き換えるのに、今や1秒もかからず、コストも数円で済むようになった。使われているのはOpenAIの「ChatGPT Images 2.0」(GPT-Image-2)であり、その手法は「AIインペインティング」と呼ばれる。デジタル上の外科手術のようなものだと考えればよい。AIは写真の一部を削除し、光の当たり方、質感、フォント、紙の繊維感までぴったり合う代替部分を生成して、継ぎ目が一切見えないほど自然に貼り合わせる。

合成メディア検出企業Scam.aiの創業者らを含む研究チームが、4月28日に研究結果を発表した。既存の防御策がどこまで通用するかを検証したものである。その結果は、不正調査、保険金請求、経費監査、訴訟などで文書の真正性に依存している関係者にとって、悪い知らせだった。

偽造文書3066件で人間がAI加工を見抜けるか検証し、正答率は50.1パーセント

チームは、ChatGPT Images 2.0が作成した3066件の偽造文書と、それぞれに対応する本物の原本を組み合わせたデータセットを構築した。元となる文書には、インドネシアの小売店の領収書、英語の領収書、スマートフォンで撮影された領収書の写真、そして7言語にわたる多言語のビジネス書類が含まれる。偽造の対象は、不正で最も重要となる項目──合計金額、明細の単価、日付、文書IDだ。

CanUSpotAI.comという一般公開のテストサイトを通じて、120人の参加者が365組の画像ペアを見比べた。各ペアは本物1点と偽造1点で構成され、参加者はどちらがAIで加工されたものかを判別しようとした。正答率は50.1パーセント。コインを投げるのと同じ確率である。両方の画像を同時に目の前に並べても、人は偽造を確実には見抜けなかったのだ。

代表的なフォレンジック検出ツールのAI偽造検出は、当てずっぽう同然

研究チームは、カメラのセンサーノイズの不整合を探す代表的なフォレンジック検出ツールであるTruForと、文書偽造の検出専用に設計されたツールDocTamperをテストした。ChatGPT Images 2.0による偽造に対し、TruForのスコアは0.599、DocTamperは0.585で、ランダムな当てずっぽうの0.500をわずかに上回るに過ぎなかった。

同じツールでも、同じ文書から作られた従来型の切り貼り式の偽造に対しては、はるかに高い性能を示した。TruForは0.962、DocTamperは0.852というスコアを記録している。つまり、これらのツールは古典的な改ざんに対しては今も有効なのだ。

ところがAIインペインティングで作られた偽造に対してだけ、機能不全に陥る。

ChatGPT Images 2.0、自身が作った偽造を84.7パーセントの確率で本物と分類

研究チームはChatGPT Images 2.0自身に対しても、各画像がAIで加工されたものかどうかを判定させた。モデルは自分が作った偽造を、84.7パーセントの確率で「本物」と分類してしまった。チームは5種類の異なるプロンプト戦略を試したが、どれもこの問題を解決できなかった。段階的に推論させる手法はかえって事態を悪化させた。モデルが本物の画像にまで偽造の痕跡を「幻視」(ハルシネーション)し始めたからである。

AIを活用した不正検出システムを構築する者にとって、ここから得られる教訓は単純だ。生成元のモデルに、自身の出力を取り締まらせることはできない。

次ページ > AIインペインティングは「継ぎ目」を残さず、既存ツールの手がかりが消える

翻訳=酒匂寛

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