半グレの若者がヤクザ加入を拒否「自分ら嫌なんで」と語った理由とは
暴力団排除条例によってヤクザが衰退した一方で、勢力を拡大しているのが匿名・流動型犯罪グループ(トクリュウ)だ。強盗や詐欺といった経済犯罪で世間を騒がせているが、注目すべきはそのメンバー構成である。かつて半グレと言えば、暴走族OBなどの非行少年が中心だったが、現在は中高生や大学生、会社員といった普通の人が関与するようになっているという。※本稿は、犯罪社会学者の廣末 登『ヤクザが消えた裏社会』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 暴力団を抜けても 半グレしか道がない? 2007年に犯罪対策閣僚会議が示した、金融機関における暴力団排除の政府指針は更に徹底され、現在、暴力団や半グレなど反社会的勢力との関係を確認する企業コンプライアンスは常識となっています。 この基準をもっと簡単にいうと、警察庁や銀行のデータベースに登録されている者はもちろんアウト。ネット上に、過去に暴力団組員としての逮捕歴があったり、特殊詐欺などの前歴がある、あるいは、暴力団と「もちつもたれつの関係がある」と当局が認定した者などは、銀行口座の開設が危うくなるということです。大企業に勤めていた人、国家資格を有する人であろうとも、ネット上に過去の犯罪記事が出たら、どの企業でも採用してもらえないのです。 そうすると、自営業や親族の会社に雇われる者以外、離脱者には社会的居場所がありません。人間は社会的動物ですから、1人では生きられません。「居場所」や「受け皿」は、暴力団離脱者に限らず、我々誰しも人間には不可欠なのです。 さらに悪いことに、社会復帰が実現できない結果、暴力団を自らの意思で真正離脱したものの単独で犯罪に従事したり、トクリュウに加入する元暴アウトロー(暴力団をやめて犯罪を続ける者)の犯罪が増加する懸念が生じています。
暴力団離脱者(と、その家族)は「反社」と社会からカテゴライズされ、社会権すら極端に制限されている現状があります。こうした極端な社会権の制限は、暴力団や暴力団の枠から外れて犯罪活動に従事する「偽装離脱者」を念頭に置いた対策であることは理解できます。 しかし、再出発を期してカタギになりたいと願い、主体的に暴力団を離脱した真正離脱者には柔軟な対応が求められると思います。なぜなら、折角、更生しようと思って離脱した真正離脱者が、カタギとして生きなおしができず、生活困窮のあげく、生きるために元暴アウトローとして犯罪に従事してしまう可能性があるからです。 筆者は、法務省の就労支援に従事した経験から、個々のケースを見ずに「もともと暴力団に在籍していたのだから、更生なんかできない、再犯の可能性が高いだろう」という偏見のもと「反社」と一括りに扱うことに対して違和感を覚えます。とりわけ法務省は、「誰一人取り残さない社会」を標榜しているのですから、元暴力団を「反社」とラベリングし、社会的排除する風潮を容認しては、自らの主張と矛盾が生じます。 ● 暴力団員が減っても 浄化されないアングラ社会 たしかに、暴力団排除条例(以下、暴排条例)の施行が全国で完了した2011年以降、暴力団員は減少の一途をたどり、2011年に7万300人いた暴力団構成員数(準構成員も含む)は、2024年末現在で1万8800人と過去最少になりました。筆者は、暴対法ではなく、暴排条例こそがヤクザの斜陽を決定づけたと考えています。 しかし、ヤクザが減れば、アングラ社会が浄化されたのか。その答えは、読者の皆様がよくご存じだと思います。 半グレや準暴力団がはびこり、匿名流動型犯罪グループが跳梁し、暴力団ですら手を出さなかった未成年が犯罪に巻き込まれ、昨今では全ての年齢層が犯罪被害に遭う特殊詐欺や強盗が、日常の脅威となったのです。2024年中に検挙された者は、暴力団構成員等の8249人に対して、トクリュウは、1万105人でした(時事ドットコムニュース2025年4月3日)。