六本木人気No.1キャバ嬢・ゆいぴすが、糖尿病治療薬「マンジャロ」をダイエット目的で推奨し大炎上している騒動。この問題に対し、彼女がアンバサダーを務めるオンライン処方クリニックに出資する実業家・溝口勇児氏が29日夜にXで長文の反論を投稿した。
「ゆいぴす叩きはやめてほしい」「ダイエットを根性論にするのは非科学的」などと主張した溝口氏だが、この擁護文が火に油を注ぐ結果となっている。彼の主張の多くが炎上の核心から目を背けさせるための巧妙な「論点ずらし(ストローマン論法)」であるからだ。
医療現場の声、製薬会社の公式見解、現役医師が突きつけた「法的根拠」、そして背後に透ける若者搾取の「悪魔的なビジネス構造」まで、事態の真の恐ろしさを徹底検証する。
論点ずらし①:「ただの広告モデル」への責任転嫁を、医師が法律で“完全論破”
溝口氏は炎上の発端となったゆいぴすの振る舞いについて、「広告モデルでしかないゆいぴすへの批判は行き過ぎている」「彼女はあくまで利用者として体験を発信しているだけ」と擁護した。影響力を持つインフルエンサーの責任を「ただのモデルだから」と切り離そうとする論点ずらしだ。
しかし、医師で作家の知念実希人氏が自身のXを更新。この溝口氏の言い分に対し、次のように明確な法的根拠を突きつけて一刀両断した。
「『彼女はあくまで利用者として体験を発信しているだけの広告モデルだし』と書いてあるけど、処方薬に対して『広告モデルが利用者としての体験を発信する』ことは、様々な法律で明確に禁じられているんですよ……
まずは薬機法66条の誇大広告の禁止に抵触し、それをもとした医薬品等適正広告基準では、 『使用経験又は体験談広告は原則行ってはならない』 と明記されているし、また医療法施行規則において、 『主観に基づく効果に関する体験談の広告はしてはならない』 ともはっきりと書かれているんです……」
さらに知念氏は、溝口氏やゆいぴす自身が盾にした「ただのアンバサダー(広告モデル)なんですが」という言い訳そのものが、皮肉にも自らの首を絞めている事実をこう指摘する。
「これが『広告モデル』とか『アンバサダー』じゃなかったら、倫理的にはともかく法的にはセーフになる可能性が高い 医薬品の広告は極めて厳しいルールが定められているのです」
一般の個人が勝手につぶやくのとは次元が違い、「アンバサダー」という肩書きを背負って発信するからこそ「広告」とみなされ、法的な規制の対象として完全にアウトとなるのだ。
知念氏は続けて、正規の製薬大手がこうしたルールをいかに厳密に守っているかを示す具体例として、グラクソ・スミスクライン(GSK)の広告を挙げ、次のように解説を重ねている。
「例えば発症予防、後遺症予防90%以上という素晴らしい帯状疱疹ワクチンであるシングリックスを販売するGSKが、広告では製品名はいっさい書いておらず、あくまで帯状疱疹ワクチンの啓発だけしているのは、医薬品に関する広告にそれだけ厳しい基準があるからなんですよ」
本来、医療用医薬品の広告は、世界的な製薬会社が自社の製品名すら出せないほど極めて厳格な基準の下に置かれている。法律のど真ん中を破っている行為を「彼女はただのモデル」とすり替える擁護は、自ら法律や規制への無知・軽視を露呈する結果となった。
論点ずらし②:「テクノロジー否定」という架空の敵作り
溝口氏は「鬱には抗うつ薬を使うのに、ダイエットだけ精神論でやれというのは非科学的だ」「新しいテクノロジーが登場すると保守派は嘆く」と持論を展開。マンジャロと同じ有効成分の「ゼップバウンド」が肥満症治療薬として承認されている事実を引き合いに出した。
ここも極めて悪質な「論点ずらし」である。医療関係者も世間も、肥満治療に対する医療介入(テクノロジー)を否定しているわけでは決してない。批判されているのは、「美容目的で数キロ痩せたいだけの標準体型の人間が、本来の適応外である強力な糖尿病薬を乱用していること」だ。
知念氏もこれに対し、次のように明確な見解を示している。
「肥満症に対しては、マンジャロと同じ成分であるゼップバウンドがすでに保険適応になっています。(中略)以上の人は保険で治療可能の場合も多いです。肥満外来を受診して下さい」
「(マンジャロもゼップバウンドも)健康体重の人が使うには安全性が確認されていません。素人が安易に勧めないで頂きたいです」
真の肥満症患者にはすでに適切なテクノロジーが用意されている。美容目的の健康な人が使う安全性が確認されていない事実を「革新派vs保守派」という架空の対立構図にすり替えるのは、危険な詭弁である。
論点ずらし③:「適応外使用の一般化」を完全否定する製薬大手の“通報”宣言
さらに溝口氏は「医療の歴史を見れば適応外使用の事例は数え切れない」と主張。あたかも「今回のダイエット使用も、歴史上よくある適応外処方の一つ」かのように語った。
しかし、この言い分は、日本イーライリリー、ノボ ノルディスク、アストラゼネカなど製薬大手による共同声明によって完全に打ち砕かれている。
- 安全性・有効性は「未確認」: 国内で承認された使用法以外で使用された場合、「本来の効果が見込めないだけでなく、思わぬ健康被害が発現する可能性も想定される」と明記。
- 見つけ次第「規制当局へ通報」: 承認された効能外の使用を推奨していると受け取れる記事等については、「確認次第、規制当局(厚生労働省など)への連絡、相談を速やかに実施してまいります」と通報を宣言。
製薬会社から「見つけ次第通報する」とまで突き放されている現実を無視し、歴史的な適応外使用と同列に並べるのは完全な事実誤認である。
専門医も告発する「形骸化した医師の診察」とグレーな仕入れ
彼らが運営するビジネスモデル自体にも、医療現場から厳しい目が向けられている。
ある糖尿病専門医は、自由診療のクリニックが薬をネット上で「物販(薬の横流し)」のように扱っている現状を非難。さらに、卸会社に対して「保険診療目的」と偽って糖尿病薬を仕入れているのではないかという、グレーなルートの疑惑まで指摘している。
そして何より世間を呆れさせているのが、「医師の診察の形骸化」への強烈な嫌悪感だ。ホームページに『医師の診察結果によっては処方できない事があります』と書いてあっても、「まともな肥満診療をしている医師ならああいう感じ(安易な処方)にならんやろ」という不信感が、炎上の根底にある。
スペ値信仰を煽る…若者を食い物にする「悪魔的ビジネス」のエコシステム
溝口氏は、「何度も挑戦して挫折し、自分を嫌いになっている人が数多くいる。そういう人の助けになる」と語った。だが、その言葉の裏にある「巨大な搾取の構造」こそが、今回最も恐れられ、叩かれている本質である。
騒動の発端となったキャバ嬢オーディション番組『LAST CALL』。そこでは、ゆいぴすのようなカリスマ嬢たちが審査員として絶対的な権力を持って君臨する。番組の合間には美容クリニックのCMが流れ、視聴者は「ゆいぴすちゃんみたいになりたい」「可愛くなければ価値がない」という強烈なルッキズムと、外見のスペックを数値化して評価し合う「スペ値信仰」を徹底的に刷り込まれる。
番組で若者のコンプレックスと整形・痩身への強迫観念を極限まで煽り立て、「マンジャロ打ちな?」とカリスマ嬢の口から“魔法の薬”を提示させる。そして、焦燥感に駆られた若者たちを、自らが出資するオンラインクリニックへと誘導し、高額な薬や施術を売りさばく――。
マッチポンプのように自ら不安を作り出し、その解決策として法規制スレスレの医療用医薬品を流し込む。これは「テクノロジーによる救済」などではなく、若者のコンプレックスを金に換える「悪魔的とも言えるビジネス構造」だ。
精神論を否定し、適応外使用を正当化する実業家の言葉の裏で、本来の糖尿病患者から薬が奪われ、健康な若者たちが未確認のリスクを負わされている。一連の炎上は、モラルを失った美容医療ビジネスへの世間の怒りがついに沸点に達した証左と言えるだろう。