第294話 サトシの悩み
サトシの家に向かう途中は、その話題で持ちきりだった。
「で、誰なんだよ。俺たちが知っている人か? お兄さんに話してみな」
遠藤は攻めていく。久しぶりに砕けた笑顔を見せている。こういう時に、年上ネタを使うのはちょっとずるい。
「まあ、親友に隠し事はなしだよな」
俺も乗っかった。こう攻められることにサトシは弱い。もう陥落寸前だった。いや、もう何か相談があるということは話題にした時点でわかっているんだけどさ。それにしても、サトシのスペックを考えればほとんどの女子には好感を持たれていると思うけど。いや、これは親友のひいき目なのかな。
「わかったよ、言えばいいんだろ」
サトシがそう爆発すると、俺たちは口々に「言いたいくせに」とか「盛大なフリだよな」と茶化した。サトシは、少しだけ不貞腐れたふりをしていた。「じゃあ、いい」とか「お前たち以外に相談する」とか言いだす。
俺は我慢できずに確認してしまった。
「もしかして、林さん?」
俺の言葉にサトシはあり得ないくらいに動揺して固まった。
遠藤はその反応を見て、苦笑している。どこからどうみても図星だろう。サトシってこんなに分かりやすかったかな。
「どうしてわかったんだ?」
事実上の自供を聞きながら、俺は説明する。
「『絶対に不可能なことを消去していくと、いかにもあり得そうになくても、残ったものこそが真実である』ってシャーロックホームズが言ってた」
俺の答えに、サトシは「文学脳すぎんだろ」と苦笑しながら、「それに答えになっていないし」と遠藤も続ける。
「いや、サトシって今まであんまり女子と接点があるようには思えなかったからさ。男友達と遊ぶことも多いし。それに部活にも女子はほとんどいないと言っていたし、クラスメイトで急に距離が近づくイベントがあったらその都度、話になっているなと思って」
サトシは「うっ」と言葉に詰まらせた。
「じゃあ、部活やクラス以外にサトシと関係がある女子って、林さんしかいないかなって思ったんだ。林さんもサトシに助けてもらってからメッセージのやり取りするようになったと言っていたし」
遠藤からは歓声があがる。サトシは降参だとばかりに両手を挙げた。
「よし。林さんなら俺たちも安心だな」
遠藤はうんうんと頷く。それには同意だ。引っ込み思案なところはあるけど、芯は強いし、頑張り屋だ。
「頼む、エイジ。林さんの好きな作家とか趣味とか教えてくれ。今度デートに誘いたいんだ」
必死に頼まれて、俺は笑う。
「じゃあ、今日のコーラはサトシの奢りな」
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