[ futaba / tachiha / aiba / honba / aoba ] [ main / recent post ]

/tachiha/ - たちは板κ

リレー小説用
Name
Options
Subject
Comment
File
Select/drop/paste files here
Password (For file deletion.)

File: 1777065981632.jpg (249.41 KB, 1024x1024, grok_image_1777065961142.jpg)

ea2686c6 No.3364

f5e08079 No.3369

 私の死因は、「事務上の過失」だった。
 徹夜続きの残業を終え、コンビニの自動ドアが開いた瞬間に看板が落下してきた。痛みを覚える暇すらなかった。
 ただ、視界が急激に白濁し、次に気がついた時には、白亜の廊下のような場所に立っていた。
 そこは、いわゆる「死後の案内所」というよりは、薄暗いオフィスビルの一室のようだった。
 デスクには山のような書類が積み上がり、そこから一人の男が顔を覗かせた。神と名乗るにはあまりにも疲弊した、中年男性のような顔つきの存在だった。
「ああ、ごめんごめん。またやってしまったよ」
 男は溜息をつきながら、私の魂(らしきもの)に向かって謝罪した。
 曰く、私が死ぬべき寿命の人間と、同姓同名の全く別の人間を書類上で取り違え、私の魂を回収するボタンを誤って押してしまったらしい。
「謝って済む話か?」と詰め寄る私に、神は慌てた様子で「もちろん賠償はする! 君の望む条件で、来世を確約しよう」と提案してきた。
 提示されたのは、現代日本における超資産家への転生だった。
 容姿端麗、知能明晰、そして一生遊んで暮らせる資産。
 死の理不尽さを理屈で塗りつぶすような、あまりにも魅力的な条件だ。
 私はその契約を即座に飲み、光の輪の中へ飛び込んだ。
 だが、運命とは皮肉なものだ。
 転生プロセスの最中、神界のメインサーバーで大規模なノイズが発生した。
 神が「あ、やべっ」と呟いた声を最後に、私の意識は急激に加速し、本来向かうはずだった胎児の器を通り越して、どこか別の場所へと射出されてしまった。
 ――冷たい。
 それが、意識が戻った瞬間に感じた感覚だった。
 鼻を突くのは、生臭い血の匂いと、焼け焦げたようなオゾン臭。
 私は硬質な金属の台の上に横たわっていた。視界がぼやけている。
 目を開けると、天井には冷たい蛍光灯が並び、私の周囲には、純白の防護服に身を包んだ「何か」が数名、静かに作業をしていた。
 ここは天界の「霊安室」。
 地上の悪魔や堕天使、あるいは禁忌に触れた存在を解体し、神聖な塵に還すための処理場だ。
「今回の個体は、サキュバスの上級種か。厄介なものだ。魂の核がまだ完全に消滅していないな」
 聞き慣れない、冷徹な声が響く。
私は体を起こそうとしたが、四肢が重い。いや、重いのではない。
自分のものとして機能していないのだ。
 視線を自分の体へと向けた。
 そこにあったのは、見慣れたはずの自分の体ではなかった。
しなやかで白磁のような肌。
背中には、折れ曲がった黒い翼が不格好に張り付いている。
そして腰のあたりからは、先が矢印型になった長い尻尾が、まるで意思を持つかのように床を這っていた。
 ――サキュバス。
 異界の種族。
それも、今まさに天使の手によって「退治」されたばかりの個体。
 私の魂は、本来入るはずだった富豪の御曹司という揺りかごを突き抜け、あろうことか、今まさに死んだばかりの魔の肉体という「器」にスリップしてしまったのだ。
「まだ動くか? 解体処理、再開するぞ」
 天使の一人が、容赦なく鋭利なメスを手にした。
 銀色の刃先が、私の心臓のあたりにあるはずの魔核を狙っている。
 金持ちの御曹司として、シャンパンタワーを眺めるはずだった私の人生は、神のミスによって、霊安室の解体台という最悪の場所で幕を開けようとしていた。
 魂が叫ぶ。
 冗談じゃない。二度も死ねるか。
 私は、動くはずのない、けれど確かに自分の神経が通っているその翼を、全身全霊の力を振り絞って羽ばたかせた。

657dac07 No.3380

 天使のメスが振り下ろされる直前、私は無我夢中で自身の魔力を爆発させた。
 天使たちの「まさか、まだ自我が……!」という驚愕の叫びが、耳の奥で遠ざかる。視界が極彩色に歪み、時空がねじ切れるような感覚とともに、私は天界の霊安室から強引に強制送還(エスケープ)された。
 ドサリ、という鈍い音がして、私は硬いアスファルトに叩きつけられた。
 肺に流れ込んできたのは、神聖な空気とは対極にある、排気ガスと湿ったゴミの匂い。見上げれば、深夜の都会を彩る無機質なネオンサインが、滲んで見えた。どうやら、運良く――あるいは運悪く――現代の東京のどこか、人の気配が希薄な路地裏に飛ばされたらしい。
 その瞬間だった。
 脳髄に直接響くような、軽薄で、どこか他人事な声が響き渡った。
『おっと、すまないねぇ。まさか霊安室で覚醒するなんて想定外だ。あそこのセキュリティはガバガバだからね、君の生存本能が強すぎたのかもしれない』
 あの神だ。怒りが沸き上がると同時に、背筋に冷たいものが走った。
「ふざけるな……! ここはどこだ。それに、この体はどうなってんだ!」
 私が怒鳴り声を上げると、自身の声が以前よりも艶っぽく、どこか湿り気を帯びていることに気づいて戦慄した。自分の喉を通っているはずなのに、別の誰かが喋っているような違和感。
『落ち着きたまえ。とりあえず、君のそのボロボロの肉体、全快させておいてあげよう。サービスだよ』
 神がそう告げた瞬間、全身を温かな光が包み込んだ。
 先ほどまで感じていた、肉体がひしゃげ、魂と馴染んでいない違和感が、嘘のように消え去る。切り刻まれそうになっていた皮膚は再生し、翼の傷も消えた。しかし、それと同時に、腹の底から焼け付くような「渇き」が湧き上がってきた。今まで感じたことのない、狂おしいまでの空腹感。それは食べ物への欲求ではない。生命力そのものを求める、魔物としての本能だった。
『さて、本題に入ろう。君を元通り――つまり、理想のイケメン御曹司――に転生させるための条件だ』
 神は事務的な口調で淡々と告げた。
『合計で100点。これを溜めれば、君を無事に転生させてあげよう。……ああ、忘れていた。採点基準はこうだ。精力を奪う対象、つまり君がこれから「食事」する相手だね。男性なら5点、女性なら1点。これを100点分、蓄積すれば契約完了だ』
「……男を20人、あるいは女を100人、か」
 私は思わず自分の手を眺めた。白く細い指先。爪は少し尖り、見るからに邪悪な気配を放っている。この体で、見ず知らずの人間から「力」を奪えというのか。
『頑張ってくれ。ああ、ちなみに。その体はサキュバスとして調整されているから、相手を誘惑する能力には長けているはずだよ。どう使うかは君次第だ。制限時間は……まあ、君がその体で「人間」としての理性を保てる間かな』
 神の気配がふっと消えた。
 残されたのは、街の喧騒と、制御のきかないほど高まる体の熱。
 ふらつく足取りで路地裏から表通りへ出ると、金曜の夜の新宿だろうか、多くの人間が行き交っていた。彼らが持つ温かな「生気」が、視界の中で光の粒のように見えてくる。
 空腹が、本能が、叫ぶ。
 金持ちの御曹司として生きる未来を掴み取るために、私はこの「サキュバス」の皮を被り、この街の獲物たちを狩らなければならない。
 私は深く息を吐き出し、最初に狙いを定めるべき「標的」を探して、人混みの中に足を踏み入れた。

0f65e7fb No.3381

 神の気配が完全に消えた後、私は自身の体の奥底から湧き上がる、サキュバスとしての本能に身を任せた。
 このままの姿で――黒い翼と尻尾を剥き出しにしたまま――人混みに紛れるわけにはいかない。それは、私を退治しようとする天使たちを呼び寄せるだけでなく、人間社会をパニックに陥れることだろう。
 「変身」という、魔族としての基本的な能力を思い出す。
 私は、自分がなりたいイメージを強く思い描いた。……清純さと妖艶さを併せ持ち、誰もが振り返るような、現代的な美しさ。
 全身を再び、冷たい魔力の膜が覆った。
 背中から張り付いていた翼が、霧のように霧散していく。長く這っていた尻尾は、腰のあたりで急速に収縮し、跡形もなく消えた。鋭かった爪は丸くなり、琥珀色の瞳は、親しみやすい茶色へと変わる。
 数秒後、路地裏のガラス片に映ったのは、私であって、私ではない存在だった。
 そこに立っていたのは、どこにでもいそうな、けれど、どこにもいなそうなほどスタイル抜群の「女子大学生」だった。
 少し崩したウェーブのかかった栗色の髪に、流行りのオーバーサイズのニット。しかし、その下には、神が与えたサキュバスの肉体が、惜しげもなく「凶器」を隠し持っている。
 ニットの下で主張するのは、以前の私の人生ではお目にかかったこともないような、豊満で大きな胸だ。そして、タイトなジーパンを穿いた下半身は、その曲線美を完璧に強調していた。特に、ジーパン越しにもはっきりと形が分かる、引き締まった魅力的なお尻は、歩くたびに挑発的な揺らぎを見せる。
 「よし……これなら、バレない」
 私は自分の声が、以前よりもさらに甘く、魅力的に変化していることに驚きながら、路地裏から表通りへと足を踏み入れた。
 夜の都会は、眠ることを忘れた巨大な生き物のようだ。
 ネオンの光が私を照らす。
 私は、女子大学生としての「仮面」を被りながら、心の奥底で燃え盛るサキュバスの「渇き」を隠し持っていた。
 行き交う人々は、私をただの魅力的な女性として見ている。……だが、彼らは知らない。この体の中に、彼らの「生気」を貪り食う準備を整えた、悪魔の魂が宿っていることを。
 私は、ジーパン越しのお尻を軽く振りながら、獲物を求めて、夜の闇へと深く紛れ込んでいった。

7f353fd2 No.3397

File: 1777720836749-0.png (1.32 MB, 768x1280, media_1777720587.png)

File: 1777720836749-1.png (1.31 MB, 768x1280, media_1777720579.png)

File: 1777720836749-2.png (1.25 MB, 768x1280, media_1777720572.png)


8ed23cf9 No.3409

 繁華街の喧騒を少し離れた、街灯の薄暗い公園。私は適当なベンチを見つけ、足を組んで腰を下ろした。
 タイトなジーパンが太ももを締め付け、組んだ脚のラインが強調される。私は意識的に、サキュバスの体内に眠る「フェロモン」を、吐息とともに薄く周囲に漂わせてみた。それは物理的な香水よりもずっと凶悪で、抗いがたい生存本能を直接揺さぶる。
 夜風に乗って、私の気配が公園内に広がっていく。
 最初に反応したのは、ジョギング中だったらしい男だ。彼は私の前を横切ろうとした瞬間、まるで見えない壁にぶつかったかのように足を止めた。
 男の視線は、私の顔から胸元、そしてジーパン越しでも主張を隠せない腰の曲線へと、ねっとりと吸い寄せられていく。喉が大きく上下し、彼の「生気」がわずかに揺らぐのを感じた。
(……これがサキュバスの力。男を狂わせる毒か)
 その時、前方から楽しげな笑い声が近づいてきた。
 仲睦まじそうに手を繋いだ若いカップルだ。幸せを絵に描いたような光景だが、私のフェロモンはその結界さえも容易く踏みにじる。
 すれ違いざま、彼氏の視線が、まるで磁石に引き寄せられる鉄屑のように私に固定された。
 彼の目は、ベンチに座る私の大きな胸と、組んだ脚の付け根あたりを、文字通り「凝視」してしまったのだ。歩幅が乱れ、繋いでいた彼女の手を引く力も疎かになる。完全に、魂を奪われたような呆けた顔だ。
「……ちょっと、健一? 何見てるのよ!」
 彼女の鋭い声が夜の公園に響いた。我に返った彼氏が「えっ、あ、いや、何も……」と狼狽するが、もう遅い。
「嘘よ! 今、あの子のこと、ものすごいエロい目で見てたじゃない! 信じらんない!」
「違うって、そんなんじゃないから!」
 彼女は顔を真っ赤にして怒り、彼の腕を振り払って足早に歩き出した。焦った彼氏は、未練がましく一度だけ私の方を振り返り、そのまま必死で彼女を追いかけていく。
 静かになった公園で、私はくすりと笑みを漏らした。
 怒った彼女からはわずかな「負の生気」が、そして混乱した彼氏からは、濃厚で甘い「欲情の気配」が立ち上っている。
「……あと100点、か」
 私はターゲットを絞るべく、今度はもう少し露骨に脚を組み替え、暗がりに潜む「獲物」たちの反応を待つことにした。

6a2eb860 No.3421

 男なら5点、女なら1点。
 効率を考えれば男だが、女を100回落としていく地道な作業も、この新しい体を楽しむには悪くないかもしれない。そんな風に思考を巡らせ、ベンチに深く背をもたれさせていた時だった。
「あの、すみません。……ちょっと、大丈夫ですか?」
 かけられた声は、驚くほど澄んでいた。
 顔を上げると、そこには一人の青年が立っていた。年齢は二十歳前後だろうか、私がいま擬態している「女子大生」と同じくらいの年格好だ。清潔感のあるネイビーのシャツに、整えられた短髪。夜の公園に漂う不純な気配を浄化してしまいそうな、絵に描いたような「爽やかな好青年」だった。
「あ……はい。何か?」
 私はあえて、少し心細そうな、寂しげなトーンで声を返した。サキュバスの直感が、この男が「善良な動機」で近づいてきたことを告げている。ナンパではなく、夜の公園で一人沈んでいる女性を放っておけなかったタイプ。……最高に喰い甲斐がありそうな獲物だ。
「いえ、こんな時間に一人で座っていたから。……何か、悩み事でもあったのかなって。あ、怪しい者じゃないですよ。すぐそこに住んでる大学生なんですけど」
 彼は困ったように笑いながら、数歩の距離を保って立ち止まった。その配慮さえも、私の内側にある魔族の本能を刺激する。私はベンチの端を少しだけ叩き、隣を勧める仕草を見せた。
「……少し、疲れちゃって。家にも帰りたくないし、かと言って行く当てもなくて。君、親切なんだね」
 彼が躊躇いがちに腰を下ろすと、私の体から立ち上るフェロモンが、目に見えない蜘蛛の糸のように彼を絡め取っていく。至近距離で見ると、男の喉仏が小さく動いたのが分かった。
「……そっか。まあ、たまにはそういう夜もあるよね。僕で良ければ、話、聞くよ? あ、僕は佐藤って言います」
「佐藤くん……。ねえ、佐藤くんは、運命って信じる?」
 私は彼の方に体をわずかに傾けた。大きな胸のラインが、オーバーサイズのニットを押し上げ、彼の視界に否応なしに飛び込む。ジーパンの太ももが、彼のズボンに触れそうで触れない距離。
「えっ……う、運命? どうかな。でも、今日こうして君に出会ったのは、何か意味があるのかもって……ちょっと思っちゃうかな」
 佐藤くんの頬が赤らみ、声が少しずつ上ずってくる。彼の目から「理性」の光が消え、代わりに熱っぽい「渇望」が混じり始めた。5点確定のサインだ。
「ふふ、可愛いこと言うんだね。……ねえ、佐藤くん。私、すごく喉が渇いてるの。普通の水じゃ癒やせない、特別な渇き……」
 私は彼の耳元に顔を寄せ、サキュバスの吐息を吹きかけた。
「君の力を、私に分けてくれる? そうしたら、君が想像もできないような『いいこと』、してあげられるかもしれないよ」
「……っ。君が、望むなら……。僕は、その……」
 もはや彼の意識は、私の言葉の裏にある「毒」に気づく術を持たなかった。私は彼の震える手をそっと握りしめ、自分の中の空腹が、甘い期待感で満たされていくのを感じていた。
「とりあえず、この男で楽しんでみるか。……ねえ、佐藤くん。もっと静かな場所に、行こう?」
 最初の5点を手にするための、夜の遊戯が始まった。

90a51202 No.3428

 佐藤くんの目は、もう完全にとろけていた。私の吐息とフェロモンが、彼の脳内の「警戒心」という回路を焼き切ってしまったらしい。
「あの……僕、すぐそこに一人暮らしのアパートがあるんです。こんな外じゃなくて、あっちで、ゆっくり話をしませんか?」
 彼は期待と緊張で声を震わせながら、誘い文句を口にした。
 私は彼の手を握ったまま、上目遣いで彼の顔を覗き込む。タイトなジーパンに包まれたお尻をベンチから浮かせ、わざと彼の体に密着するように立ち上がった。
「いいの? 会ったばかりの女の子を部屋に呼ぶなんて……佐藤くん、意外と大胆なんだね」
 私の胸が彼の腕に柔らかく押し当てられる。彼は「うっ」と言葉を詰まらせ、顔を真っ赤にしながら視線を泳がせた。
「あ、いや! 変な意味じゃなくて、本当に落ち着ける場所の方がいいかなって……」
「……ふふ、本当に『話だけ』?」
 私は彼の耳たぶに唇が触れそうな距離で、囁くように問いかけた。
 サキュバスとしての本能が、彼の中から溢れ出しそうな「エネルギー」を感知している。ただの会話で終わるはずがないことを、私以上に彼の体が理解している。
「それは……その……君が、嫌じゃなければ……」
「嫌なわけないじゃない。佐藤くんの部屋、行ってみたいな」
 私は彼の腕に自分の腕を絡め、大きな胸をこれでもかと押し付けた。ジーパン越しに伝わる私の体温に、彼はもう、抗うことなどできやしない。
「案内して? 私、君のこと……もっと深く知りたいな」
 神様、見てるか?
 最初の5点、案外簡単に手に入りそうだ。
 私は足取りも軽く、獲物となった佐藤くんにエスコートされるまま、夜の街灯の下を彼のアパートに向かって歩き出した。

90a51202 No.3429

「すぐそこ」という言葉から、勝手に安普請の木造アパートを想像していたのだが、案内されたのは驚くほど立派な分譲マンションだった。
エントランスは重厚な石造りで、オートロックを抜けた先のロビーには品の良いジャズが流れている。佐藤くんはどこか誇らしげに、それでいて落ち着かない手つきでカードキーをかざした。
エレベーターに乗り込むと、彼は「10」のボタンを押し、沈黙を埋めるように話し始めた。
「あ、僕の親が不動産関係で……。大学の間だけ、空いてる部屋を借りてるんだ。全然オシャレじゃないけど」
鏡張りのエレベーターの中で、彼の視線が、私のタイトなジーパンに包まれた腰の曲線と、そこから伸びるしなやかな脚のラインを何度も往復している。10階へ向かうわずかな上昇時間は、彼にとって、逃げ場のない甘美な拷問のようだった。
通された部屋は、驚くほど整然としていた。
無機質なモノトーンの家具に、必要最低限の家電。まるで主人の誠実さをそのまま形にしたような空間だ。
「えっと、今コーヒー淹れるから。座ってて。……砂糖とかミルク、入れる?」
キッチンに立った佐藤くんは、背中を向けて必死に豆を挽き始めた。ガリガリという音が部屋に響く。自分を落ち着かせるための儀式のようにも見えた。
私はソファに深く腰掛け、足を組んでその様子を眺めていた。
「ブラックでいいよ。ありがとう、佐藤くん」
「そっか。……あ、大学では何て呼ばれてるの? 学部とか、その……」
コーヒーが落ちるのを待つ間、彼は他愛もない、あまりにも健全な世間話を振ってきた。サークルがどうだの、最近の講義がどうだの……。
(……退屈だな。私はお喋りをしに来たわけじゃないんだ)
胃の腑の底で、サキュバスの「渇き」が苛立ちとともにうねりを上げた。
私はふっと息を吐き、体内の魔力を練り上げた。部屋の空気に混ざり合うフェロモンの濃度を、一気に跳ね上げる。先ほどまでの「甘い香り」が、今は濃厚で、脳を直接痺れさせる「毒」へと変わる。
空気が、一瞬で熱を帯びた。
「佐藤くん」
私は、かつて男だった頃の記憶を総動員した。「男が、どんな瞬間に理性を失うか」を、私は誰よりも知っている。
コーヒーカップをトレイに乗せて振り返った佐藤くんの前で、私はゆっくりと立ち上がった。そして、テーブル越しに彼の方へ「前かがみ」になる。
オーバーサイズのニットの襟元が、重力に従って大きくこぼれ落ちた。
至近距離で晒される、白く、圧倒的なボリュームの胸の谷間。サキュバスとしての完璧な肉体が、彼の視神経を直撃する。
「コーヒー、美味しそうだね」
私は彼の目をじっと見つめたまま、左手でさらりと髪を耳にかけた。
指先がうなじをなぞり、細い首筋が露わになる。潤んだ瞳と、少しだけ開いた唇。
「……あ、あの……」
佐藤くんの手が、目に見えてガタガタと震え始めた。
トレイの上のカップが音を立て、彼から発せられる「生気」の匂いが、狂おしいほどに甘く、濃密に室内に充満していく。
「ねえ、佐藤くん。コーヒーの前に……もっと、あったかいもの。欲しくない?」
男としての知識と、魔族としての本能。その二つが完璧に噛み合った仕草の前に、青年の「理性の壁」が、音を立てて崩壊していくのが分かった。

90a51202 No.3431

「もう、我慢できない……!」
 絞り出すような佐藤くんの声と同時に、トレイがガシャンと乱暴にテーブルへ置かれた。コーヒーの黒い液体がカップから零れたが、今の彼にはそんなことは視界にすら入っていない。
 次の瞬間、視界がぐらりと揺れた。
 勢いよく肩を掴まれ、彼の熱を帯びた唇が、私の唇を力任せに塞いできた。
「……っ、ん、あ……っ」
 喉の奥から、自分でも驚くほど甘く、可憐な声が漏れ出た。
 つい先刻まで男だった頃の感覚なら、野郎に顔を近づけられるだけで吐き気がし、殴り飛ばして逃げ出すのが「普通」の反応だったはずだ。キスなんて、想像するだけで最悪の極致だと思っていた。
 だが、今の私は違った。
 
 唇が重なり合った瞬間、脳内に麻薬のような快楽物質がドバドバと溢れ出した。サキュバスの肉体にとって、男の欲望を受け入れることは、極上の食事を口にするのと同義なのだ。拒絶反応どころか、細胞の一つ一つが歓喜に震え、もっと深く、もっと強く相手を求めるように疼いている。
 私は抵抗するどころか、自分でも無意識のうちに、彼の首に細い腕を回していた。
 ニット越しに伝わる佐藤くんの荒い鼓動。彼の混乱した思考と、爆発寸前の生命エネルギーが、接触面から私の中へと流れ込んでくる。
(……ああ、これだ。これが『食事』なんだ……)
 彼が夢中で私の唇を貪り、舌を絡ませようとしてくるのを、私は慈しむような溜息とともにすべて受け入れた。
 彼の「生気」が、私の喉を通り、空っぽだった魔力の器をじわじわと満たしていく。空腹が癒やされる安堵感と、男を自分の虜にしているという征服感が混じり合い、背徳的な多幸感が全身を駆け抜けた。
「はぁ、……ごめん、急に。でも、君が……君が綺麗すぎて……」
 唇が離れると、佐藤くんは酷く上気した顔で、私の耳元に熱い吐息を吹きかけた。その目はもう完全に理性を手放し、欲望という名の魔物に支配されている。
「いいよ、佐藤くん……もっと、乱暴でも。……私、君の全部が欲しいな」
 私は彼を誘うように、再び「あん」と小さく吐息を漏らしながら、彼のシャツのボタンに指をかけた。
 男としてのプライドは、サキュバスの甘美な本能に飲み込まれて消えていく。私はこの哀れな青年の「5点」を余すことなく吸い尽くすために、彼を深い深い快楽の底へと引きずり込んでいった。

a142a797 No.3465

「っ、佐藤くん、ちょっと……苦しい、よ」
 私は吐息混じりにそう漏らしたが、それは拒絶ではなく、彼をさらに焚きつけるためのスパイスに過ぎなかった。
私の言葉は、狂ったように私を求める彼の耳には、甘い肯定としてしか響かない。
「ごめん……でも、もう、止まれないんだ。君の匂いが、その声が、僕をおかしくさせる……!」
 佐藤くんはそう叫ぶように囁くと、再び私の唇を塞いだ。今度はさっきよりも深く、激しく。
奪い合うような、貪り食うような口づけだ。彼の歯が私の唇に当たり、微かな痛みが走る。
だが、その痛みさえもサキュバスの体にとっては悦びに変換され、腰のあたりに痺れるような熱が溜まっていく。
「ん……ぁ、ふ……っ、さとう、くん……」
 絡み合う舌の隙間から、私の掠れた声が漏れ出す。
男だった頃の記憶が「おい、相手は男だぞ」と警告を鳴らすが、体の芯から湧き上がる衝動がそれを軽々と踏みつぶした。
 佐藤くんの手が、私のニットの裾から中に滑り込んできた。
熱を帯びた指先が、白磁のような私の肌をなぞる。
「信じられない。こんなに柔らかいなんて……夢じゃないよね? ねえ、君は本当に……人間なの?」
 彼は私の胸元に顔を埋め、肌を吸い上げるようにして熱い息を吐き出した。
その言葉は、無意識のうちに私の正体を見抜こうとしているかのようで、私はゾクりとした快感に背中を震わせる。
「……人間かどうかなんて、今、関係あるの? 私は今、ここにいて、佐藤くんにこんなに触られて……こんなに熱くなってるのに」
 私は彼の髪に指を絡め、自分の胸へと強く押し当てた。
サキュバスの魔力が、私と彼の肌が触れ合う場所から、目に見えない光の帯となって吸い上げられていく。
彼の精気が、私の渇いた枯れ井戸を潤していく感覚。
「ああ……ああ! 好きだ、名前も知らないけど、君のことが、たまらなく欲しい……!」
「ふふ、いいよ。もっと、全部出して……。佐藤くんの全部を、私にちょうだい?」
 私は彼の耳たぶを甘噛みし、サキュバス特有の、理性を溶かす言霊を吹き込んだ。
「君が私を愛してくれるたびに、私はもっと綺麗になれるの。……ねえ、佐藤くん。ベッドまで、待てない……?」
 佐藤くんの瞳から完全にハイライトが消え、ただドロリとした純粋な欲求だけが私を射抜く。
彼は返事の代わりに、私を抱き上げ、ソファへと押し倒した。
「……全部、あげる。僕の人生も、魂も、全部持っていっていいから……!」
 青年の狂おしいまでの叫びとともに、リビングの照明がやけに眩しく感じられた。
私の脳内では、チャリン、という神聖な音と共に「5点」という数字が刻まれる予感がしていた。

2a5df0ca No.3466

ソファに押し倒された瞬間、私はわざとらしく身を縮め、怯えた小鹿のような瞳で彼を見上げた。
潤んだ瞳に映る佐藤くんは、もはや「爽やかな大学生」の面影など微塵もなく、剥き出しの情欲に突き動かされる獣そのものだ。
「さ、佐藤くん、待って……。そんなに急にされたら、私……」
私は震える声で彼の胸板に手を添えた。
力任せに押し返すのではなく、あくまで拒絶しきれない弱々しさを演出するためだ。
(よし、この『か弱い女の子』の演技が、男の征服欲を一番煽るんだ。かつての自分なら、こんな見え透いた手口に引っかかる奴を笑っていただろうけど……。今はこの体が、どうすれば男を壊せるかを完璧に理解してる)
私の細い指が彼のシャツを掴む。その力加減ひとつで、彼がさらに一歩踏み込んでくるのがわかる。
「だめ……、怖いよ。佐藤くん、目が……さっきまでの優しい佐藤くんじゃないみたい……っ」
「ごめん、怖がらせるつもりはないんだ……。でも、もう抑えられないんだよ! 君の肌に触れるたびに、頭の中が真っ白になって、心臓が破裂しそうなんだ!」
佐藤くんは、私の手首を掴み、ソファに縫い付けるように押さえ込んだ。
荒い呼吸が私の首筋にかかり、彼の体温がジーパン越しにも熱く伝わってくる。
(そう、それでいい。もっと理性を焼き切って、ドロドロの欲望を私にぶつけてくれ。君が理性を失えば失うほど、私に流れ込んでくる『生気』は濃密になるんだから)
私はわざと顔を背け、うなじをさらけ出した。そこはサキュバスにとって、獲物を誘い込むための最も無防備で甘美な「罠」だ。
「ねぇ、佐藤くん。本当に、私でいいの? 私、名前も教えてないのに……。こんなの、いけないことだよっ、ん、あぁ……っ」
首筋に彼の熱い唇が押し付けられる。
吸い上げられるような感覚とともに、私の中に眠る魔力が歓喜の声を上げた。
「名前なんて、後でいい……! 今はただ、君を感じていたいんだ! 嫌か? 嫌なら、今すぐ僕を突き飛ばしてくれ……っ」
「嫌じゃ、ない……けど……。でも、私、どうなっちゃうの? 佐藤くんに、壊されちゃいそう……っ」
私はあえて、泣き出しそうな、それでいて期待を含んだような吐息を彼の耳元で漏らした。
この「壊されそう」という一言が、どれほど男の理性を粉砕するか、今の私は熟知している。
(ふふ、壊されるのは君のほうだよ、佐藤くん。その若くて瑞々しい生命力、一滴残らず吸い尽くしてあげる。……あ、今の私の顔、きっと最高に意地悪な笑みを浮かべてるんだろうな。でも、彼は私の胸に夢中で、そんなことには気づきもしない)
私はそっと、彼の背中に腕を回した。まるで、恐る恐る彼を受け入れるかのように。
「いいよ、佐藤くん。壊しても、いいよ……。その代わり、私を、離さないでね……?」
「ああ、約束する! 君を絶対に離さない……一生、僕のものだ……!」
彼が私のニットのボタンを震える手で外し始めたとき、部屋の空気が一気に飽和した。
サキュバスの領分に完全に足を踏み入れた獲物の、あまりにも甘い、絶望的なまでの愛の告白。
私は彼の肩に顔を埋め、彼に見えないところで、三日月のように目を細めた。
(さあ、お食事タイムだ。まずは最初の5点……。たっぷり楽しませてもらうよ、佐藤くん)

55183cb0 No.3476

 ソファの上で最高潮に達しようとしていた佐藤くんの熱を、私は冷や水を浴びせるように指先一つで制した。
「……あ、待って。佐藤くん、だめ」
「えっ……? なんで、どうして……っ」
 絶頂の淵で突き放された彼の顔は、まるで迷子になった子供のように情けなく歪んでいる。私はわざとらしく首をすくめ、頬を朱に染めて俯いてみせた。
「あのね……私、今日ずっと歩き回ってたから……その、汗くさい、かも。こんな格好で佐藤くんに抱かれるなんて、恥ずかしくて耐えられないよ……」
(……嘘だけどね。サキュバスの体は代謝さえも魔力で制御されている。汗の一滴すら、男を狂わせる極上の香水でしかない。でも、ここで一回『お預け』を食らわせるのが、一番の嫌がらせであり、最高のスパイスになるんだ)
「そんなの、僕は全然気にしないよ! むしろ、君の匂いならなんだって……」
「私は気にするの! ……ねぇ、シャワー、借りてもいい? 綺麗になってから、もっとちゃんと、佐藤くんのこと感じたいんだもん」
 上目遣いで、縋るように彼の袖を引く。
 佐藤くんは今にも叫び出したいような葛藤を顔に浮かべていたが、私の「もっとちゃんと」という殺し文句に屈した。
「……わかったよ。すぐそこだから。……早く戻ってきてね」
「ありがとう。佐藤くん、優しいね」
 私はリビングの真ん中で、彼に見せつけるように立ち止まった。バスルームへ向かうのかと思いきや、その場でニットの裾に手をかける。
「え、あ……脱ぐの? ここで?」
「だって、脱衣所狭いんでしょ? それに、どうせ後で見せるんだから、同じかなって……」
 私は確信犯的に、彼の「目の前」で服を脱ぎ始めた。
 まずはオーバーサイズのニットをゆっくりと頭から引き抜く。細い腕が露出し、その下から現れたのは、レースをあしらった黒いブラジャーに収まりきらない、圧倒的なボリュームの胸だった。佐藤くんの呼吸が止まるのが、はっきりと聞こえた。
(……ふふ、見てる見てる。視線が刺さるようだ。男っていうのは、こういう『無防備な露出』に本当に弱いよな)
 私は彼の視線を意識しながら、時折、悪戯っぽく視線を絡ませる。彼は顔を真っ赤にしながらも、瞬きすることさえ忘れたように私の肢体を凝視している。
 次に、タイトなジーパンのボタンを外した。ジッパーが下がる乾いた音が、静かな室内にやけに大きく響く。
 私は片脚ずつ、しなやかな動作でデニムを脱ぎ捨てた。ジーパンに押し込められていた、形自慢のお尻が解放され、Tバックの細い紐に食い込む肉感が露わになる。
「……っ」
 佐藤くんの喉が大きく上下した。
 私は仕上げとばかりに、背中に手を回してブラジャーのホックを外した。
 腕を抜く際、わざと胸を揺らすように肩をすくめ、髪をサイドに流して、無防備な横顔を晒す。
「……見てていいよ。佐藤くんに見られるの、嫌いじゃないから」
 最後に、薄い布切れを足元へ滑り落ちさせた。
 一糸纏わぬサキュバスの肉体。月の光のような白い肌と、魔性の曲線。
 私は彼と一瞬だけ視線を合わせ、吸い込まれるような微笑みを浮かべた後、くるりと背を向けてバスルームのドアに手をかけた。
「あ、佐藤くん。バスタオル、後で持ってきてね。……よろしくね♪」
 扉が閉まる直前、ウィンクを一つ。
 脱ぎ捨てられた服と、あまりにも鮮烈な残像だけを残して、私は蒸気の向こう側へと姿を消した。
(さて、シャワーを浴びている間、彼はリビングでどれだけ悶え苦しむかな? 戻った時の『5点』が、今から楽しみで仕方ないよ)

ec41ed31 No.3500

温かなシャワーを浴びながら、私は立ち上る湯気の中でこれからの計画を練っていた。
(……それにしても、まさか自分がサキュバスの体で男を誘惑することになるなんてな。前世の俺が見たら、腰を抜かして泡を吹くだろうよ。でも、案外悪くない感覚だ。この体は、男の視線を浴びるだけで、指先まで魔力が満ちていくのがわかる。まるで全身が最高級のセンサーになったみたいだ)
シャワーヘッドから降り注ぐ水滴が、しなやかな肌の上を弾け、完璧な曲線をなぞって床へと落ちていく。
(目標は100点。佐藤くんで5点だろ? まあ、イケメン御曹司への『お詫び転生』を勝ち取るためのバイトだと思えば、安いもんだな。)
ふっと、鏡に映った自分を見つめる。
水滴に濡れたまつ毛、上気した頬、そして自分でも見惚れるほど完成された肉体。この「器」に魂が馴染めば馴染むほど、かつての「俺」の記憶が、どこか遠い物語のように思えてくるのが少しだけ怖かった。
(まあ、今は目の前の『食事』を完遂させるのが先決だ。佐藤くん、リビングで相当焦らされてるだろうしな)
シャワーを止め、私は軽く体を拭くと、脱衣所に用意されていた真新しいバスタオルを手に取った。
ふかふかのタオルを胸の高い位置で巻き、大きな胸をわざと強調するように少しきつめに結ぶ。ジーパンで隠れていた太ももは、今はバスタオルの裾から大胆に露出している。
私はゆっくりと、湯気の残るバスルームのドアを細く開け、顔を覗かせた。
「……佐藤くん? バスタオル、ありがとう。ちゃんと置いておいてくれたんだね」
リビングの方を見ると、そこにはソファに座り直し、膝の上で拳を固く握りしめた佐藤くんがいた。彼はドアが開く音に弾かれたように顔を上げ、私を見た瞬間に再び息を呑んだ。
シャワー上がり特有の、瑞々しく火照った肌。髪の先から滴る水滴が、鎖骨のくぼみを伝ってタオルの隙間へと消えていく。その光景は、服を脱いでいた時よりもずっと生々しく、彼の「独占欲」を刺激したはずだ。
「……あ、ああ。……その、もう、大丈夫? 寒くない?」
彼の声は、もはや掠れすぎていて、言葉を紡ぐのがやっとという様子だった。私はその様子に満足しながら、少しだけ困ったような、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
「うん、あったまったよ。……でも、背中がうまく拭けなくて。……ねぇ、佐藤くん。ちょっと、手伝ってくれない?」
私はバスタオルを片手で押さえながら、無防備な背中を見せるようにして、彼を手招きした。誘いの言葉と共に、室内のフェロモン濃度を再び、極限まで引き上げていく。
(さあ、佐藤くん。最後の仕上げだ。君の『5点』、最高の状態でいただくよ)

3fc80974 No.3501

File: 1778243223824-0.png (1.02 MB, 768x1280, media_1778242696.png)

File: 1778243223824-1.png (1.06 MB, 768x1280, media_1778242704.png)

File: 1778243223824-2.png (1.13 MB, 768x1280, media_1778242803.png)

File: 1778243223824-3.png (1.09 MB, 768x1280, media_1778242792.png)


78160d5f No.3546

 背中を向けて待つ私の耳に、佐藤くんがソファから立ち上がる衣擦れの音が聞こえた。一歩、また一歩と、彼がこちらへ近づいてくる気配が、脱衣所の狭い空間に張り詰めていく。
「……いいよ。拭いてあげる」
 背後から聞こえた彼の声は、低く、低音の振動が私の背中を直接震わせるようだった。
 佐藤くんの大きな手が、バスタタオルの上から私の肩に触れる。彼の手は信じられないほど熱く、そして小さく震えていた。
(……人間の男の手って、こんなにゴツゴツしてて、熱かったっけ。前世の俺も、女の子の肌に触れる時はこんな風に緊張してたのかな。……なんだか不思議な気分だ)
 そんな感傷を嘲笑うかのように、サキュバスの肉体は過敏に反応する。彼の指先が触れた場所から、電流のような快感が走り、私の腰が自然とくねりを上げた。
「ん……っ、佐藤くん、そこ……くすぐったい、よ」
 私がバスタオルを胸元で抑えたまま、少しだけ振り返って上目遣いで彼を見ると、佐藤くんの瞳は完全に獣のそれになっていた。彼はタオルで私の背中の水滴を拭うフリをしながら、徐々にその距離を詰めてくる。
「……もう、無理だ。拭くなんて、そんなのどうでもいい……!」
 佐藤くんはタオルを床へ放り出すと、私の背中を後ろから抱きすくめた。
 私の豊かな胸が、バスタオル越しに彼の厚い胸板へと押し潰される。彼の荒い呼吸がうなじに触れ、首筋に何度も熱い唇が落とされた。
「ああ、いい匂いがする……。シャンプーの匂いだけじゃない、君の、甘い匂いだ……」
(ふふ、それはシャンプーじゃなくて、私のフェロモン。君を骨の髄まで狂わせる、悪魔の毒だよ)
 私は心の奥で冷徹にそう呟きながらも、彼の腕の中で心地よさそうに身を委ねた。
 佐藤くんの両手が、私の腰のラインをなぞり、バスタオルの結び目に指をかける。ゆっくりと、だが拒絶を許さない力強さで、その結び目が解かれていく。
 ハラリ、と床に落ちる白いタオル。
 鏡に映る私たちは、あまりにも対照的だった。服を着たまま狂おしく私を求める人間の青年と、その愛撫を極上のデザートを味わうかのような表情で受け入れている、一糸纏わぬサキュバスの私。
「佐藤くん……。私を、どうしたいの……?」
「君の全部が欲しい。僕のものになって……、ねえ、お願いだから……!」
 彼は私を正面から抱き上げると、今度こそリビングのベッド――あるいはソファへと私を運ぼうと足を進めた。
 その瞬間、私の中に眠る魔力の核(コア)が、カチリと音を立てて激しく回転を始めた。彼の体から立ち上る、最も濃厚で、最も純粋な「愛欲の生気」が、目に見えない奔流となって私の中へと流れ込んでくる。
(満たされる……! これが、サキュバスの悦び……!)
 かつての男としての理性が、快楽の波にぷかぷかと浮きながら、どこか遠くで囁く。
 ――なぁ神様。イケメン御曹司への転生も魅力的だけど、この『悪魔のバイト』、思った以上に悪くないかもしれないな。
 私は佐藤くんの首に両腕を絡め、彼を破滅的な快楽の奈落へと引きずり込むべく、その唇に自ら深く口づけを交わした。

78160d5f No.3547

 佐藤くんの腕に抱えられたまま、私はリビングのベッドへと押し倒された。
 シーツに沈み込むと同時に、彼は覆いかぶさるようにして、貪欲に私の肌を求め始める。その手つきは乱暴で、余裕の欠片もない。まさに理性を完全に手放した「野生の獣」そのものだった。
「あ、うそ……待って、佐藤くん、そんな……っ」
 私は顔を真っ赤に染め、怯えるように両手で自分の胸元を隠した。
 視線を激しく彷徨わせ、呼吸を浅くする。まるで初めて男の情欲に触れてパニックを起こしている「生娘」のように、健気で可憐な抵抗の演技を完璧に作ってみせた。
「ごめん……本当にごめん、でも、もう止められないんだ……!」
 彼は獣のような唸り声を上げ、私の細い手首を掴んでベッドに固定した。完全に私を支配したと思い込んでいる男の顔。その剥き出しの征服欲が、さらに彼の生気を限界まで昂ぶらせていく。
(……ふふ、いいよ、その顔。最高にそそる。男って本当に単純だな。ちょっと怯えて、弱そうな素振りを見せるだけで、自分が世界の支配者になったみたいに錯覚するんだから)
 か弱い生娘を演じる私の内心は、信じられないほど冷静で、そして圧倒的な「余裕」に満ちていた。
 
 佐藤くんの熱い唇が、私の鎖骨、そしてニットから解放された大きな胸へと容赦なく吸い付く。激しい愛撫が体に刻まれるたび、私のサキュバスとしての肉体は、極上のスパにでも浸かっているかのような深い快楽に包まれていた。
「ん、ぁ……っ! だめ、そんなところ……、変になっちゃう……っ」
 悲鳴のような可愛い声を漏らしながら、私はわざと腰を小さく跳ね上げ、彼をさらに挑発する。
(痛くも痒くもないどころか、気持ちよすぎてとろけちゃいそうだ。前世の男だった頃の俺なら『野郎の相手なんて最悪だ』って脳内で大騒ぎしてただろうけど、今の俺はサキュバス。この獰猛な愛撫こそが、私にとっての『最高のフルコース』なんだよね)
 佐藤くんが夢中で私の体を貪るにつれて、彼の肌から発せられる濃厚な生気が、目に見えない光の粒子となって私の毛穴から体内へぐんぐんと吸収されていく。
 空腹だった魔力の器が、極上の蜜で満たされていくような圧倒的な充足感。
「ああ……君の中に、入らせて……。僕を、一つにして……!」
 汗を輝かせ、完全に我を忘れて懇願してくる佐藤くん。
 私は潤んだ瞳で彼を見つめ返し、涙を浮かべながら、小さく、小さく頷いてみせた。
「……うん。痛く、しないでね……? 佐藤くん……っ」
 どこまでも「従順な獲物」のフリをしながら、私は心の中で冷酷に、そして淫らに笑っていた。
(さあ、極上の食事のメインディッシュだ。佐藤くん、君の若くて瑞々しいエネルギー、一滴も残さず私の血肉にしてあげる。まずは最初の5点、たっぷり味あわせてね――?)

3142eeb9 No.3548

File: 1779618737567-0.png (2.09 MB, 768x1280, from-PixAI-201523080633030….png)

File: 1779618737567-1.png (2.1 MB, 768x1280, from-PixAI-201523080633030….png)


2f5f59a9 No.3549

File: 1779618855743-0.png (2.18 MB, 768x1280, from-PixAI-201523080633030….png)

File: 1779618855743-1.png (2.18 MB, 768x1280, from-PixAI-201523080633030….png)


4b13d070 No.3575

 ベッドのシーツに背中を預けた私を、佐藤くんは戸惑いと情熱の入り混じった目で見つめていた。彼の呼吸は荒いが、その指先はどこか優しく、私を傷つけないようにという配慮が感じられる。
「怖がらせて、ごめん。でも、君を……本当に大切にするから」
 彼は手慣れている感じではなかった。女性の扱いが百戦錬磨というわけではない。けれど、決して下手ではなかった。私の体の反応を一つ一つ確かめるように、丁寧に、かつ確実に私を求めてくる。その一挙手一投足に、ただの独りよがりのエッチではなく、まずは「目の前の女性を満足させてあげたい」という誠実な思いと、彼なりのテクニックが見え隠れしていた。
 ゆっくりと、私たちの境界線が溶け合っていく。
 彼が私の体へと滑り込んできた、その瞬間。
「……っ、はぅっ……!」
 私は大きく背中を反らせ、爪を彼の背中に立てながら、これ以上ないほど可憐な喘ぎ声を漏らしてあげた。
(……あ、これ、本気でやばい。演技で声を出したつもりが、体の芯が熱くて、半分以上は本音が漏れた。何これ、人間の男の体って、サキュバスの肉体と合わさるとこんなに極上の刺激になるわけ!?)
 私の中に侵入してきた彼の熱。男だった頃の記憶なんて、その圧倒的な快感の奔流の前に、一瞬で消し飛びそうになる。
「大丈夫……? 痛かった、よね……?」
 佐藤くんは動きを止め、心配そうに私の顔を覗き込んできた。その優しさが、サキュバスとしての私のサディスティックな本能をさらに刺激する。
「ううん……、痛くない、よ。佐藤くんのが、あったかくて……私、どうにかなりそう……っ」
 私は彼を安心させるように、潤んだ瞳で微笑み、ジーパンから解放されたしなやかな脚を彼の腰に絡めた。そして、体内のフェロモンの出力を、ついに100%へと解放した。
 ドクン、と部屋の空気が跳ね上がった。
「あ……、あ、ああ……っ!」
 その瞬間、佐藤くんの目の色が完全に変わった。私の体から放たれた極大のフェロモンが、彼の脳内に残っていた「優しさ」や「理性のブレーキ」を完全に焼き切ったのだ。
「佐藤くん……? あっ、んあぁっ!?」
 それまでの丁寧な動きが嘘のように、彼は豹変した。
 腰を叩きつけるような、激しく、容赦のない衝動的なピストン。私の大きな胸が激しく揺れ、ベッドがギシギシと悲鳴を上げる。
「もう……無理だ! 綺麗すぎて、気持ちよすぎて……っ、頭がおかしくなる! 君を、僕のものに……壊れるまで、僕の全部をぶつけさせてくれ……っ!」
「あぁっ、んっ、は、激しっ……! さと、佐藤くん、すご、すごいよぉっ!」
 牙を剥いた獣のような彼の猛りに、私は翻弄される生娘を演じて悲鳴を上げ続けた。……だが、私の内側は、底なしの愉悦に打ち震えていた。
(ひゃはは! そう、それでいい! 理性なんて全部捨てて、その瑞々しい命のエネルギーを全部私に注ぎ込みなよ! ほら、どんどん私の魔力に変わっていくのがわかる……!)
 激しくぶつかり合うたびに、佐藤くんの体から目に見えない「生気の結晶」が、私の肉体へと急速に吸い上げられていく。
「好きだ……! 好きだ、君が欲しい……っ、ああぁっ!」
「私も……、佐藤くんの、ぜんぶ、だいすき……っ! もっと、奥まで、ちょーだい……っ!」
 狂乱のピストンが続く中、私は彼の背中にしがみつき、彼を快楽の絶頂という名の底なし沼へ、さらに深く、深く沈めていった。

4b13d070 No.3576

「……はぁ、はぁ、……っ!」
 どれほど激しく突き動かされただろうか。佐藤くんはひときわ大きく身体を震わせると、私の胸元に顔を埋めて、熱い吐息とともに一回目の絶頂を迎えた。
 彼の内側から、濃厚な生気の塊がドクドクと私の中へ注ぎ込まれていくのが分かる。
(……ふぅ、ごちそうさまでした。これでまずは5点獲得だな。神様、見てるか?)
 脳内で勝利の鐘を鳴らし、私は「生娘」の演技を解いて、彼の背中を優しく撫でてあげようとした。……だが、何かがおかしい。
 佐藤くんは私の体に乗っかったまま、一向に離れようとしないのだ。それどころか、私の中に収まったままの「それ」は、一度果てたはずなのに、萎びるどころかさらに熱を帯び、パツパツに膨れ上がっている。
「……あれ? 佐藤くん……っ?」
「はぁ、……おかしいんだ。一回いったのに、全然おさまらない……。君の体が、僕を離してくれないんだ……っ!」
 佐藤くんの目は、まだとろけたままだ。
 どうやら、私が無意識に垂れ流し続けているサキュバスのフェロモンが、彼の男としての限界を無理やり突破させてしまっているらしい。これじゃあ、こちらから「おかわり」をねだる必要すら全くないな。
「……んぁっ!?」
 彼が再び、挿入した状態のままで激しく腰を動かし始めた。まさかの2回戦突入だ。
「あ、あぁっ! すご、また、大きくなって……っ、んんっ!」
 野生の獣に戻った佐藤くんに穿たれながら、俺は心の中で信じられない衝撃に打ち震えていた。
(おいおい、マジかよ……! 俺、さっきから何回絶頂を迎えてる!?)
 男だった頃の感覚なら、一度いけばそれで終わりで、賢者タイムが来るはずだった。だが、今の俺はサキュバスだ。佐藤くんが激しく攻めてくるたびに、俺のこの新しい体は、簡単に、何度も何度も快楽の頂点へと引きずり上げられる。
 しかも、不思議な感覚があった。
 普通ならこれだけ激しくされれば、体力が削られて疲弊していくはずだ。なのに、俺が行く(絶頂を迎える)たびに、全身の細胞がパチパチと弾けるように活性化していく。
(……いや、これ、調子が良くなってる!?)
 そう、行くたびに、神様に全回復してもらったはずの体が、さらに軽く、エネルギーに満ち溢れていくのが分かるのだ。肌のツヤが増し、体内の魔力の巡りが急速に鋭くなっていく。男の生気を吸い上げ、それを自分自身の快楽のエネルギーとして還元する――これこそがサキュバスの肉体の真骨頂であり、本能的な「成長」のシステムなんだ。
「ああぁっ! 君、すごすぎるよ……っ、僕、吸い尽くされちゃう、のに、気持ちよすぎてやめられない……っ!」
「は、はぁっ、んあぁっ! いいよ、佐藤くん、もっと……もっと俺を……私を、めちゃくちゃにして……っ!」
 快楽の波に溺れながら、俺は危うく一人称を「俺」と叫びそうになり、慌てて可愛い声で誤魔化した。
 けれど、内心の俺は大爆笑していた。
(ひゃははは! 最高だなおい! 人間に戻るためのポイント稼ぎのつもりだったけど、このサキュバスの体、極上すぎる! 佐藤くん、悪いけど明日の朝まで帰さないからな。君の生気、全部俺の栄養にしちゃうんだから!)
 エンドレスで続く快楽の狂宴の中、俺はサキュバスとしての本当の覚醒を感じながら、青年のすべてを貪り尽くすように腰を絡めていった。

4b13d070 No.3577

「はぁ、はぁ……っ、もう、本当に……一歩も動けない……」
 深夜から明け方にかけた何回戦目だったか、佐藤くんはついに限界を迎え、真っ白な灰のようになって仰向けにベッドへ倒れ込んだ。
 全身汗だくで、胸を激しく上下させている。その体からは、もう湯気が出るんじゃないかってくらいの熱気と、出し尽くした男の気配が漂っていた。
「ふふ、佐藤くん、お疲れ様。すっごく気持ちよかったよ?」
 俺はシーツの上に這い上がり、彼の横顔に優しくキスをした。
 普通の人間の女性なら、ここで一緒に添い寝して終わりだろう。だが、俺のサキュバスの体は、まだまだ「お腹ペコペコ」だと叫んでいた。何回も絶頂を迎えたおかげで、今の俺は疲れを知るどころか、エネルギーが満ち溢れて肌なんてツヤツヤだ。
 俺は視線を下げ、彼の股間へと這い寄った。
 そこにある男の象徴を見つめながら、俺はふと思った。
(前世の『俺』なら、野郎のこんなものを見るだけで顔を背けてただろうな。ましてや、触るなんて絶対にあり得ない。……なのに、どうしてだろうな。不思議と、これっぽっちも嫌悪感がないんだ)
 それどころか、果実のシロップか何かが溢れているように、甘くて美味しそうにさえ見える。これが、魂までサキュバスの肉体に染まりつつあるってことなのか。
「ねぇ、佐藤くん。まだ、終わりじゃないよ?」
「え……? あ、あぐ……っ!?」
 俺がペロリとそこを舌で舐め上げると、佐藤くんの体がビクッと跳ね上がった。
 彼の限界を超えたはずのペニスが、俺の唾液とサキュバスの魔力に刺激され、まるで魔法にかけられたように、再びドクンドクンと大きく、硬く反り立ち始める。フェロモンの効果は本当に絶大だ。
「嘘だろ……、まだ、大きくなるなんて……。君は、本当に、何者なんだ……?」
 恐怖と快楽が混ざり合った目で俺を見上げる佐藤くん。その弱り切った表情が、たまらなくサディスティックな欲求をそそる。
「何者でもいいじゃない。佐藤くんのここ、すっごく正直だよ? ほら、こんなにカチカチになって、私を待ってる」
 俺はふふっと妖艶に笑うと、彼の体をまたぐようにして、その上に跨がった。いわゆる「騎乗位」の体勢だ。
 タイトなジーパンを脱ぎ捨てた俺の、形自慢のお尻が、彼の太ももの上でゆっくりと動く。大きな胸が重力で揺れ、彼の視線を釘付けにした。
「ひぁ……っ、あ、あそこに、君のそれが……」
「佐藤くんが動けないなら、今度は私が動いてあげる。……いいよね?」
 俺は彼の上に腰を落とす直前、わざとうっとりとした表情で、彼の耳元に顔を寄せた。
「佐藤くんの全部、私の体の中にちょうだい。……もっと、おねだりしてみて?」
「く、君の……君の好きにしてくれ……っ、もう、どうにでもして……っ!」
 諦めと狂おしいほどの快楽に身を委ねた青年の叫びを聞きながら、俺はゆっくりと、自分の身体で彼のペニスを迎え入れた。
(あはは、最高! 動けない男を上から攻めるのって、こんなに支配感があって気持ちいいんだな! さあ、残りの生気も全部、俺が美味しく吸い尽くしてあげるよ!)
 朝の光が薄暗い部屋に差し込み始める中、俺が主導権を握る、終わらない快楽のステージが幕を開けた。



[Return][Go to top] Catalog [Post a Reply]
Delete Post [ ]
[ futaba / tachiha / aiba / honba / aoba ] [ main / recent post ]
[Yotsuba B][Yotsuba][futaba]