岡田彰布氏の解説はなぜ、面白いのか、阪神OBが指摘する『監督目線』と『タイガース愛』 快音の中野にもダメ出し「2番打者の打撃でない」
2025年3月17日 10時36分
◇コラム「田所龍一の『虎カルテ』」
この1週間、阪神ファンや球団関係者の間で話題もちきりだったのが、3年ぶりに復活した岡田彰布前監督(67)=現オーナー付顧問=の《野球解説》である。
以前から岡田氏の解説は「他の評論家陣と違って悪いところもズバリと言ってのける」と評判だったが、3月9日、甲子園球場で行われた巨人とのオープン戦で久々にマイクの前に座った岡田氏は、3年のブランクを感じさせない“舌好調”。翌日のスポーツ紙は試合が2-8と大敗したこともあり、『岡田節復活!』『さすが岡田解説!』と試合よりも大きく報じた。
岡田解説はなぜ、面白いのだろう。あるOBはこう話した。
「岡田の解説は見る目線が他と違う。監督としての目線なんだ。試合に勝つためにはどうしたらいいか、この選手にどうして欲しいか―と、ベンチの監督の思いで話すから面白い」
なるほど。確かに「監督経験者」の解説は、どんなスター選手の話よりも説得力がある。
「それに岡田は正直で、誰よりもタイガースを愛している。だからキツイことも言える。それがどれだけ選手の役に立っているか…。球団は感謝こそすれ、迷惑に思ったらバチがあたるよ」
では、3月9日の巨人戦の「岡田解説」を振り返ってみよう。最初にやり玉に挙がったのが、いきなり大量点を取られた先発・西勇輝―坂本誠志郎のバッテリー。1回1死一、三塁で巨人の4番・ヘルナンデスに中堅へ犠牲フライを打たれて先制点を奪われた場面だ。
「(1ボール2ストライクと)追い込んどるのに、あの場面で外国人選手や若い子に高めにボール球でもストレートは絶対にアカン。バッテリーは高めのボールを見送らせて次の低めの変化球で打ち取ろうと考えたんやろうけど、外国人選手や若い選手は打ち気にはやっているから少々のボールでも振ってくる。この1点がどれだけ大きいか…」
岡田氏の指摘通り、そのあと西勇は大城卓、中山、浅野に3連打を浴び、1回に3点を奪われた。次は「2番・中野拓夢」のバッティングである。
中野は昨年の不振を反省し、今年のキャンプでアッパースイングからダウンスイングに戻した。どの解説者も「今年の中野は違う」と評価していた。この巨人戦でも6回1死一塁で左前へクリーンヒット放った。ところが岡田氏は「これは2番打者のバッティングでない」とバッサリ切り捨てたのだ。
「この場面でベンチが中野に求めているのは左翼へのヒットではなく右翼方向への《引っ張り》。右方向へ打てば、たとえヒットにならなくても走者は二塁へ進む。ヒットやエラーが出れば一、三塁になる。一、二塁にするバッティングじゃなく、一、三塁にする打撃。それが2番打者の役目」
「引っ張れ!」と昨年のシーズン中も岡田監督は口を酸っぱくして中野に言った。それでも引っ張り切れない。岡田監督はこれまでのあるDeNA戦で「2番打者」牧秀悟に「お前、1死一塁の場面でどんな気持ちで打席に入ってる?」と聞いたという。
「『右方向に打つことしか考えてません』と言うとった。そういうことよ」。それは技術の問題ではなく、意識の問題―と岡田監督は言いたかったのである。
3月15日(カブス戦)、16日(ドジャース戦)、藤川阪神はシーズン開幕を直前にした米メジャーチームと東京ドームで対戦した。カブス戦は先発・門別啓人が5回をパーフェクトピッチング。3-0で快勝。
16日のドジャース戦は先発・才木浩人が、「1番・DH」大谷翔平を1回、フォークボールで空振り三振。3回の第2打席はストレート勝負で中飛に打ち取るなど、5イニングを1安打7奪三振の快投。打っては4回無死一、三塁から3番・佐藤輝明がサイ・ヤング賞を2度獲得した左腕、ブレイク・スネル投手(32)から右翼へ豪快な先制3ランを放ちこれまた3-0。
その4回の攻撃だ。四球で出塁した近本光司を一塁に置いて2番、中野が外寄りのストレートを引っ張り、センター右へヒット。無死一、三塁となった。犠牲フライでも1点という心の余裕が、佐藤輝のいつもよりコンパクトなスイングにつながり、先制3ランを呼び込んだ。改めて岡田解説通りだと思った。
その4回の攻撃だ。四球で出塁した近本光司を一塁に置いて2番、中野が外寄りのストレートを引っ張り、センター右へヒット。無死一、三塁となった。犠牲フライでも1点という心の余裕が、佐藤輝のいつもよりコンパクトなスイングにつながり、先制3ランを呼び込んだ。改めて岡田解説通りだと思った。
試合前から阪神の選手たちは大谷や3番フリーマン、4番T・ヘルナンデスらドジャースの打撃練習を、目を輝かせて注目。試合後には才木が2メートル超の長身投手タイラー・グラスノーにカーブの握り方、投げ方を伝授してもらっていた。いい光景だった。きっとタイガースの選手にとっては《収穫》の多い2試合だったはずだ。そういえば、9日の解説で岡田顧問は1度目の監督だった2008年、レッドソックス、アスレチックスとのプレシーズンマッチを振り返り、こんな話もしていた。
「あんまりええことないわな。思い切ってインコースを攻めたりできないし、日本でやっているのに、みんなメジャーの味方になって、実験台にされてるみたいで、どっちかと言うと悪者扱いやった」
時代が変わったのだろう。この岡田解説だけは当てはまらなかったようである。
▼田所龍一(たどころ・りゅういち) 1956(昭和31)年3月6日生まれ、大阪府池田市出身の69歳。大阪芸術大学芸術学部文芸学科卒。79年にサンケイスポーツ入社。同年12月から虎番記者に。85年の「日本一」など10年にわたって担当。その後、産経新聞社運動部長、京都、中部総局長など歴任。産経新聞夕刊で『虎番疾風録』『勇者の物語』『小林繁伝』を執筆。
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