【辺野古沖転覆事故】目撃者がいる、映像もあるが捜査長期化 知床観光船沈没事故との違いは… 元海保本部長が語る事故捜査の “壁”
■元本部長が語る捜査のポイント 名護市辺野古沖で3月16日に発生した転覆事故は、2人の死者を出す重大な海難事故となりました。海上保安庁による運航団体への家宅捜索や関係者の任意聴取が進められてきましたが、捜査は今後どのような道筋をたどるのか。捜査の現場経験を持ち、第3管区海上保安本部(関東周辺を管轄)の本部長まで務めた遠山純司さんに、捜査プロセスの全体像を聞きました。(比嘉大智) 【関連】辺野古沖転覆死亡事故で玉城知事「事故と平和教育は区別を」 ―― 今後の捜査はどのような流れで進むか 遠山純司 元第3管区本部長(以降、遠山氏): 押さえるべきことは大きく3つあります。1つ目は「事実関係の認定」、2つ目は「責任者の特定」、3つ目は「過失点の特定」です。この順序で捜査を積み上げていく必要があります。 ■「どのように転覆」 求められる事実認定の正確性 遠山氏: 事実関係の認定については、転覆に至る経緯、そして2人が亡くなった経緯をしっかりと確定させることが最初の作業になります。事実認定がしっかりしていないと、後の公判で「その事実は違う」と突かれた場合に、公判が持ちません。出航の経緯から転覆に至るまでの流れ、お2人が亡くなるまでの経緯、その事実関係を確実に押さえることが土台となります。 具体的には、当日の現場映像の分析が重要です。転覆のリアルタイムの映像も残っている。どのようなコースをたどって事故現場に至ったのか、転覆時の状況はどうだったのかを、映像から丁寧に分析します。 これに加えて、目撃者や乗船者、そして被疑者となり得る船長の供述を確保し、事実関係を補強します。さらに転覆のメカニズムについては科学的な裏付けが必要ですから、気象状況や船が元に戻ろうとする力である「復原性」に関するデータを専門家に鑑定依頼することになります。 ■「回避できた最後のタイミング」は… ―― 責任関係の特定については 遠山氏: 両船の船長が原因・責任者になることは動かない。ただ、1人はすでに亡くなっていますので、刑事訴訟法に従い被疑者死亡として不起訴となります。生存している船長の責任を追及することになりますが、刑事事件において最も重要なのは「直近過失」(注意義務違反または過失のこと)です。