【辺野古沖転覆事故】目撃者がいる、映像もあるが捜査長期化 知床観光船沈没事故との違いは… 元海保本部長が語る事故捜査の “壁”
最後のタイミングで、この行為をすれば事故を回避できたはず、という点を特定することが核心になります。出航時の気象判断なども事故防止の観点では重要ですが、刑事捜査においてはこの直近過失の特定が何より大切です。 さらに、船長だけでなく、この船を管理・運営していた団体の組織としての責任が問われるかどうかも、重要な捜査のポイントになります。団体がどのようにこの船の運航に関与していたのか、船長以外に誰が安全管理の責任を持っていたのかを特定する作業は、相当ハードルが高いと思われます。 ■知床観光船「KAZU 1」沈没事故との違いは 遠山氏: 知床の場合は目撃者も生存者も誰もいなかったため、事実認定に相当な時間がかかりました。乗船者のスマートフォンに残ったGPS情報を元に航行経路を特定するほど、困難を極めたと聞いています。捜索から(事件)送致まで3年を要したのも、その困難さを物語っています。 今回の辺野古の事故については、目撃者が多数いて映像証拠もあります。船体も押収されており、事実認定は知床に比べると時間がかからないと考えられます。転覆のメカニズムについても、知床のように閉鎖された船室への浸水経路を特定する必要がなく、波が打ち込んで転覆したという形ですから、原因の特定は比較的容易かと思います。 ■責任体制の不透明さがハードルか 一方、組織としての責任を問う面では、知床の場合は海上運送法上の登録がされており、運航管理規定の中に陸上の安全責任者が明記されていました。運航管理者かつ統括安全管理者はいずれも社長でしたから、組織内の責任者の特定には苦労が不要でした。その上で、社長がその責任を果たしたかどうかの立証に注力できたわけです。 今回の辺野古の事故では、海上運送法上の登録がされていないため、陸上における安全管理・運航管理の責任体制がまったくない状態です。まず「陸上で誰がその責任を持つべきであったのか」という特定から始めなければならず、知床に比べて1段階ハードルが高い状況です。