【社説】辺野古めぐる学習 文科省の違法認定に残る大きな疑問
この社説のポイント
●辺野古沖で高校生らが死亡した事故で、安全管理のずさんさが明らかに。学校、市民団体の責任は極めて重い
●文科省が教育内容を教育基本法違反としたことは疑問
●違法認定は政治色の濃い判断で、教育現場の萎縮も懸念される
沖縄県の辺野古沖で小型船が転覆し、研修旅行中の同志社国際高校の生徒と船長が死亡した事故を受け、文部科学省が調査結果を公表した。
ずさんな安全管理で17歳の尊い命が奪われた。痛ましく憤りを禁じ得ない。文科省が安全面で「著しく不適切」と結論づけたのは妥当だろう。
一方で文科省は、同校の平和学習について、政治的中立を定めた教育基本法14条2項に違反すると認定した。1947年の法施行時からある規定だが、文科省が違反と認定したのは初めてだ。こちらの判断には大きな疑問が残る。安全面と教育内容は切り分けて考える必要がある。
下見も、波浪注意報の確認もせず 船の登録もなし
船は米軍普天間飛行場の辺野古移設に反対する市民団体に所属。船の事業登録はなかった。学校は下見をせず、当日の波浪注意報も確認していなかった。危機意識を欠き、重大事故を招いた学校と市民団体の責任は極めて重い。
違法認定の理由について文科省は、辺野古移設をめぐる学習で、学校が移設に反対する沖縄県以外の様々な見解を十分示していたことが確認できなかったなどと説明する。
教育内容に足りない点があったことは学校側も認めている。ただ、違法認定に踏み込むのは行き過ぎだ。教育基本法の成り立ちに照らしても腑(ふ)に落ちない。
14条は1項で「良識ある公民として必要な政治的教養は、教育上尊重されなければならない」とし、2項で「法律に定める学校は、特定の政党を支持し、又(また)はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない」とする。政治教育の大事さをうたい、ただそれが特定の党派の宣伝にならないように、と留意点を定める構成だ。
2項は、特に18歳選挙権が実現し主権者教育が期待される中、現実政治を授業で扱うことを抑制する面も指摘されてきた。違法認定で、平和教育など政治課題を扱うことへの萎縮が広がる恐れがある。
事故をめぐり自民党内で教育内容を問題視する声が相次ぐ中、文科省が学校法人への調査に乗り出し、松本洋平文科相が前例のない違法判断を公表した経緯をみれば、政治色が極めて濃い判断で、それ自体、中立性を欠いているとのそしりも免れないだろう。
14条や、教育が「不当な支配」に服さないことを定めた16条の規定が設けられた背景には、国策への追従を求めた戦前・戦中の教育への反省がある。多様な見方に触れつつ現実の政治課題を学び、政治的判断力や批判的思考力を養う機会が損なわれることを、強く憂う。
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