「脱税は慣習」と豪語した北新地の高級クラブ経営者 8600万円納付せず失った店と自宅

高級クラブなどが立ち並ぶ大阪の歓楽街・北新地=大阪市北区

税金のごまかしは水商売の慣習-。大阪の歓楽街・北新地の高級クラブの運営を巡り、源泉所得税約8600万円を脱税したとして、所得税法違反罪に問われた経営者の男(52)は、大阪地裁の法廷でこううそぶいた。だが立件分にとどまらず、税務申告を怠った代償は大きく、納付のため店や自宅を売却するはめに。国税当局は「調査をすれば脱税は分かる。割に合わない違法行為だ」と警鐘を鳴らす。

「店の活動費に充てた」

大阪国税局が男を大阪地検特捜部に告発し、特捜部が在宅起訴した。起訴内容は令和4年9月~5年12月、経営していた3店舗で働くホステスやいわゆる黒服の従業員に対し、報酬などとして約8億8000万円を支払ったのに源泉所得税を納付しなかったというもの。

源泉徴収は、会社が従業員に給与などを支払う際、あらかじめ所得税分を差し引き、雇用主側が代わりに納付する制度。クラブやキャバクラのホステスは店側が雇用するのではなく、個人事業主として働く形態が多いが、そうしたケースでも店側が支払う報酬や衣装代、深夜帰宅のタクシー代などについては源泉徴収の対象となる。

男は公判で、3店舗で計100人あまりに上っていたホステスや黒服らから差し引いた源泉所得税分は、納税せずに「店の活動費に充てた」と説明した。

借金で火の車

背景にあったのは、華やかな高級クラブが抱える苦しい〝台所事情〟だった。

男は事業資金の大半を知人からの借金でまかなっており、利益のほとんどはその返済に回していた。手元に残る金は月に200万円ほど。そこからホステスへのプレゼント代や「支度金」と呼ばれる引き抜き費用、スタッフとの遊興費などを引くと、自由にできる金はほぼなかったという。

ただ脱税の理由はそれだけではなかった。男は被告人質問で、脱税は「業界の慣習」と供述した。黒服についてはそもそも源泉所得税分を差し引いていなかった期間が長く、「源泉徴収をするとスタッフがやめる」と説明した。

男の供述からは、店側だけでなく、個々のスタッフも適切な税務申告を行っていない実態が垣間見える。実際に東京国税局は昨年、東京・歌舞伎町などのホストクラブ運営会社やホストら約30人に対し、計約20億円の所得隠しを指摘。ほかにも高額な脱税事案が相次いでいる。

高額申告漏れ ホステス・ホストは2位

国税庁によると、令和5事務年度(5年7月~6年6月)における申告漏れが高額な個人事業主の業種トップ5のうち、2位が「ホステス・ホスト」だった。申告漏れの平均額は3654万円で、加算税を含む追徴税額は平均507万円に上る。「キャバクラ」もトップ5の常連だったが、新型コロナウイルス禍を経て客足が戻っていないためか、3事務年度以降は圏外となっている。

納税を怠れば、未納額を支払うだけでは終わらない。原則10%の不納付加算税が上乗せされるケースがあり、悪質な仮装・隠蔽を伴う所得隠しと判断されると、より重い原則35%の重加算税の対象となる。男のもとには納税の督促が何度も届いていたが、「数が多すぎて、どこから手をつけていいか分からなかった」と語った。

公判では、男が源泉所得税だけでなく、消費税なども納めていなかったことが明かされた。男は今回の起訴分を含めてすでに納税したというが、そのために店を手放し、自宅も失ったと述べた。

「これからはきちんと納税したい」。最終意見陳述でこう反省の態度を見せた男に対し、10月14日に言い渡されたのは、懲役1年、執行猶予3年、罰金1700万円(求刑懲役1年、罰金2600万円)の有罪判決だった。男は控訴せず、判決は確定した。

全ての人が国税当局の調査を受けるわけではないが、「どうせばれない」と安易に考えていると痛い目に遭う。国税当局は目を光らせている。(倉持亮)

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