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3月の会見でのひかりさん(写真左)と田中弁護士 撮影/FRaUweb
3月の会見でのひかりさん(写真左)と田中弁護士 撮影/FRaUweb

PTSDの証明が、今後の性犯罪裁判を変えるかもしれない

ひかりさん側が求める訴因変更がなぜ行われないのか、納得いく説明が行われないのはなぜなのかを疑問に感じていたが、取材する中でひかりさん側がなぜPTSDを論点とするのか、その大きな理由がわかった。

田中弁護士は、「PTSDの証明は、単に被害者の傷つきの深さを示すだけではなく、被害者供述の信用性を支える重要な間接事実になる」と話す。

PTSDに関する誤解はいまだ多いが、単に「嫌な思いをした」ことにより日常生活が困難になることがPTSDではない。死ぬような恐怖を体験したことによって起こる脳機能の異常がPTSDである。PTSDを発症している事実は「死ぬほどの恐怖を体験した」しなければ発症し得ないので、PTSDを発症していること自体が「被害に遭ったこと」を裏付ける強い事情となり得る、というのが田中弁護士の主張だ。

つまり、同意の上で性行為をして後からの事情で被害申告に至ったならば、被害者は「死ぬほどの恐怖を伴う心的外傷体験」は受けていないので、PTSDは発症し得ないからだ。

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「性被害後のPTSD発症率は女性の場合約50%で、男性だとさらに高い。しかし性犯罪事件でPTSDを『致傷』として起訴しているのは全体の数%程度です。これは検察の“サボり”ではないか

もちろん裁判員裁判になることを嫌がる被害者もいる。けれど被害者が希望し、国際的診断に基づく医師の診断書があるなら、原則としてPTSDを致傷として起訴すべきではないでしょうか。そのためにも検察は精神科医や心理職と、もっと連携しておく必要がある」(田中弁護士)

性犯罪は、加害者が同意を主張したり、被害者証言が疑われたりすることが少なくない。その時点では同意していたのに、後から気持ちを変えたのではないかと被害者が責められることがある。

しかしPTSDの診断があれば、少なくとも被害者に同意する意思がなかったことの間接証拠になり得る可能性がある。証拠が残ることが少ない性犯罪において、PTSDの証明は被害者側の有力な証拠の一つになり得るかもしれない。田中弁護士は、性犯罪とPTSDの関係についての理解と、発想の転換を検察に求めていると感じた。

もちろん、PTSDの証明が被害者供述の信用性を支えるという論理は、裏を返せば「PTSDを発症していないから被害に遭っていない」という逆側の主張を許してしまうことになりかねない危険性も孕む。

ただ問題の根底にあるのは、指摘されているように「検察官のPTSDに関する知識にバラつきがある」点だろう。検察が扱う事件は性犯罪だけではないのだから、特定の知識を求めるのは行き過ぎという意見もあるだろうが、底上げは必要だと感じる。

PTSD発症で致傷罪をつける裁判例が増えれば、性暴力が人の心身にどのような影響をもたらすかの一般の理解が今よりも深まるだろう。そしてそれは結果的に、起訴率が他の犯罪と比較して低い傾向がある性犯罪の証明について、検察が前向きになることにつながらないだろうか。

◇後編「検察内の不祥事に、検察はコメントせず。大阪地検・元検事正の性暴力裁判に見る「司法の閉鎖性」」では、ひかりさんの事件を中心に、性暴力裁判での司法の閉鎖性の現実と、その問題点を具体的にお伝えする。

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