『史上最大のヒモ 濡れた砂丘』(©東映)
『史上最大のヒモ 濡れた砂丘』(©東映)

「三和銀行オンライン詐欺事件」もフィクション化

なお、『滋賀銀行九億円横領事件 女の決算』が放映された翌月、81年3月には「三和銀行オンライン詐欺事件」が発覚。コンピューターを使った1億8000万円の横領にマニラへの逃避行、「好きな人のためにやりました」という発言が話題を集め、実行犯の女性行員は告白手記『愛の罪をつぐないます』を刊行した。当然フィクション化も相次ぐが、2時間ドラマは『愛に堕ちた女』、ピンク映画は『実録 ザ・素子』と、それぞれタイトルの違いが一興だ。

時は流れて2012年、角田光代の横領小説『紙の月』が刊行され、2年後には原田知世のドラマ版、宮沢りえの映画版が立て続けに発表された。後者は大量の一万円札をまとった人妻銀行員というキービジュアルを採用、まるで『OL日記 濡れた札束』と『史上最大のヒモ 濡れた砂丘』をアップデートしたかのようなポスターが放たれた。世に欲望の種は尽きまじ。下世話ながら、ふんどしに続いて万札を巻いた宮沢りえに感無量の殿方も多かったと思われる。

さて、最後は識者のコメントで締めくくろう。『特選小説』の連載「愛人から覗き見た戦後史」やエッセイ「バクチ本に魅せられて」(文春オンライン)など、日本一の滋賀銀行9億円横領事件研究家として健筆を振るうurbansea氏にとって、かの事件に魅入られる理由はどこにあるのだろうか――。

「俗に“高飛びは男の花道、横領は女の恋の地獄道”と言われますが(わたしが勝手に作った犯罪格言ですが)、一攫千金を狙う男と地道に横領し続ける女の非対称がやるせないですよね。愛と銭金のふたつの現世欲が絡み合うだけでなく、職場ではハイミスとして蔑まれて孤立する彼女の淋しさも垣間見えてくる。艶歌であり怨歌である……そんな藤圭子の歌の世界のようでもあるのが、魅力です」

滋賀銀行の事件をもとに「女の罪」という歌謡浪曲まで発売された
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