東京女子医大の2歳児死亡、元准教授に有罪判決 元研修医は無罪
東京女子医大病院(東京・新宿)で2014年、手術を受けた男児(当時2)が鎮静剤「プロポフォール」を投与された後に死亡した医療事故で、東京地裁は29日、業務上過失致死罪に問われた同大元准教授、小谷透被告(66)に禁錮1年6月、執行猶予3年(求刑禁錮1年6月)の判決を言い渡した。
同じく同罪に問われた元研修医の福田聡史被告(44)は無罪(求刑禁錮1年)とした。両被告は投与と死亡に因果関係はないなどとして無罪を主張していた。
起訴状によると、2人は14年2月18〜21日、首のリンパ管の手術を受け、集中治療室(ICU)で人工呼吸器を付けていた男児に対してプロポフォールを投与。心電図に異常がみられるなど容体に変化が生じていたのに投与を中止せず、男児を急性循環不全で死亡させたとされる。
プロポフォールは手術時の全身麻酔や術後管理時の鎮静に使われる。即効性があり、投与をやめるとすぐに目が覚める特徴があるとされる。
ただ、長時間投与された小児が死亡する事例が報告されており、薬の添付文書にはICUで人工呼吸器を付けている子どもへの投与は「禁忌」と記載していた。
公判では投与と死亡の因果関係に加え、容体の変化を認識した時点で投与中止などの処置を行っていれば事故を回避できたかなどが争われた。
検察側は論告で、プロポフォールの長時間にわたる大量投与で男児が死亡したことは専門的知見から明らかと主張。禁忌薬を用いる場合は容体を注意深く観察し、投与中止など適切な措置を行う注意義務があったのに2人はこれを怠ったと主張していた。
弁護側は死亡と投与に因果関係は認められないと主張。仮にプロポフォールが原因だとしても国内外で小児への使用例があり、「禁忌」とする科学的な根拠は存在せず、死亡の危険性が高まる量や基準の目安はなかったと反論していた。
事故を巡っては、病院の外部調査委員会が15年の報告書で、男児への投与は約70時間に及び、投与量は成人の許容量の2.7倍だったと言及し、医師らは鎮静剤の危険性への認識が薄く、情報共有も不十分だったとしていた。
両親が医師らに損害賠償を求めた民事裁判でも、東京地裁が21年6月、両被告について「プロポフォールを高用量、長時間使用したのは注意義務違反だ」と賠償責任を認める判決を出し、確定している。
事故で東京女子医大病院は15年、医療安全の管理体制に重大な問題があるとして、高度医療を提供する特定機能病院の承認を取り消されている。