チベット亡命政府の元国会議員、ケドゥプ・トゥンドック氏が27日、国会内で講演し、中国で7月1日に施行される「民族団結進歩促進法」について「民族を消滅させ、抑圧を実行する口実に使われる」と危機感を訴えた。自治区などでの人権侵害を問題視する国外の個人や団体に法的責任追及が及ぶ可能性に触れ、「民族文化の基礎を破壊する意図を持ったものだ」と指摘した。
「生活への介入が正当化される」
ケドゥプ氏はチベット仏教最高指導者、ダライ・ラマ14世(90)の兄の長男。ダライ・ラマ法王の補佐官や亡命政府の国会議員を3期務め、現在は亡命先の台湾で活動する。
同法は今年3月、全国人民代表大会(全人代)で可決され、中国の「民族の団結」を阻害した外国の組織や個人の法的責任を追及する、と規定した。少数民族への漢族同化政策を後押しし、人権侵害を非難する国際組織や民族団体も処罰対象となり得るとの懸念が出ている。
ケドゥプ氏は「民族の団結」の理念について「多様性を否定するものだ。チベットを消滅するため、アイデンティティーや文化を排除しようとしている」と指摘。「文化を維持することが違法になる。施行されれば抵抗できなくなる。日常生活への介入や監視が正当化される」と語った。
15世選定、北京に権限無し
また、中国人民解放軍による「チベット解放」名目での1950年のチベット侵攻について、「自由な国への侵略だった。プロパガンダで歴史を変えることはできない。チベットが独立国家だったことを忘れてはならない」と強調した。
ダライ・ラマ14世の後継者の選定を巡って中国政府が関与を主張していることに対し、「無宗教国の中国がダライ・ラマを任命する権利があると主張するのは不真実で、宗教に対する冒瀆だ」と反発。「次のダライ・ラマはチベット法王庁とチベット国民の自由意思で選ばれる。北京政府に権限はない」と述べた。
そのうえで「チベットの人々の精神には尊厳と輝き、強い抵抗精神が宿っている。破壊することはできない。いつかはチベットは自由になる」と語った。「自由は与えられるものではなく勝ち取るものだ。世界はチベットと共に真実と正義、自由のために戦ってほしい」と呼びかけた。
未来を奪う資格はない
27日の講演は「アジアの自由と民主主義を考える講演会」として開かれ、自民党の石橋林太郎、上野宏史、吉田真次、山本大地の各衆院議員らも出席した。
中国から天安門事件(1989年)の後、日本に帰化した日本維新の会の石平参院議員は「中国の民主化がライフワークだ」という。「チベットは独立国家だったが、チベット人の土地を奪い、文化や宗教を破壊した」と指摘し、「チベットもウイグルも南モンゴルも民族自決で自分たちの道を歩むべきだ。未来を奪う資格は誰にもない」と強調した。(奥原慎平)