高市早苗首相が政府のインテリジェンス(情報活動)を強化するための司令塔となる「国家情報局」創設に向けた検討を指示した。自民党と日本維新の会との連立政権合意書には2026年の通常国会での創設が盛り込まれたが、市民活動などの監視強化につながる恐れがある。言論や表現の自由を脅かす立法を認めてはならない。
国家情報局創設は、スパイ防止法制定とともに、高市氏が自民党総裁選で訴えた重点政策だ。
自維連立合意には現在置かれている「内閣情報調査室(内調)」と「内閣情報官」を格上げし、外交・安全保障政策の総合調整を担う「国家安全保障局」と「国家安全保障局長」と同格とすることが明記されている。
さらに「内閣情報会議」を発展させて「国家情報会議」を設置する法案を26年の通常国会で成立させることや、27年度末までに独立機関として「対外情報庁」を創設することも盛り込まれている。
政府には内調以外にも、警察庁警備局、法務省の外局である公安調査庁、外務省国際情報統括官組織、防衛省情報本部などがあり、それぞれ独自に活動している。
集めた情報を各組織が抱え込んで共有されず、政策の立案や決定に生かされていないなら問題ではある。情報収集、分析を省庁横断で行う必要性は理解する。
ただ、政府が一つの組織に情報や権限を集めれば、自由であるべき市民活動や報道、言論機関への監視が強化され、活動や表現の萎縮につながるとの懸念は募る。
国家情報局が同格を目指す国家安保局長には警察庁出身の1人を除き、歴代外務省出身者が就いてきた。情報局新設に省庁間の主導権争いがあるのなら問題だ。情報を扱う二つの組織が並立し、役割分担や調整が円滑に行えるのか。
政府は12年の第2次安倍政権発足後、治安法制の強化を進めてきた。特定秘密保護法や「共謀罪」法、土地利用規制法、重要経済安保情報保護法などだが、運用の詳細は明らかにされていない。
その上、国家情報局、対外情報庁、スパイ防止法ができれば、市民監視はさらに強まるだろう。
戦前、戦中には憲兵や特高警察が国民を監視し、戦争に反対したり非協力的な者を徹底的に弾圧した結果、破滅的な敗戦に至った。「監視国家」は民主主義を破壊する。再来を許してはならない。
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