政府のインテリジェンス(情報の収集・分析)機能強化の一環として、司令塔の「国家情報会議」と実務を担う「国家情報局」を新設するための関連法案が衆院で可決された。自民党の数の力を背景に急ピッチで審議が進むが、国民生活にも絡む課題が浮上する。スパイ防止法制の次の一手と目される「外国代理人登録制度」にも、活動の制約を懸念する声が国際人権団体などから上がる。(松島京太、太田理英子)
◆「デモなど市民活動の監視」明確には否定せず
安全保障政策やテロ対策を決めるための情報の分析や評価を行うとされるのが、国家情報会議。首相をトップとし、官房長官や外相、防衛相、国家公安委員長などのメンバーで構成される。事務局は「内閣情報調査室(内調)」を発展的に組織した国家情報局が担当。これまで「縦割り」とされてきた警察庁や公安調査庁、外務省などの情報機関が収集した情報を横断的に集約する。
高市早苗首相は2月の施政方針演説で「(収集・分析した情報を)ハイレベルで集約し、高度かつ的確な意思決定を行う必要がある」と強調し、「外国からの不当な干渉を防止するための制度設計を進める」とも語った。設置法案は今月23日の衆院本会議で、中道改革連合や国民民主党の賛成も得て可決された。
一方、審議の過程で明らかになった問題点の一つが、プライバシー侵害の恐れだ。17日の衆院内閣委員会で、デモなどの市民活動の監視に用いられることについて高市首相は「一般的に想定しがたい」としたが、明確には否定しなかった。
実際に、情報機関によるデモ監視が違法と認められた事例もある。陸上自衛隊の「情報保全隊」にイラク派兵反対活動を監視されたとして市民が国に損害賠償などを求めた訴訟で、本人が公表していない本名や勤務先の情報収集はプライバシー侵害で違法とする仙台高裁判決が2016年に確定。同判決は「年金改悪反対」や「核廃絶を求める署名」の活動も情報収集の対象だったと認定した。
◆国の情報収集活動を監視する機関がない
情報機関の政治利用とみられるケースも国会で取り上げられた。15日の衆院内閣委で中道改革連合の長妻昭氏は、内調の職員が、国政選挙の情勢や自民党総裁選の演説に盛り込むための「ご当地ネタ」を集めて回ったという新聞記事を披露。公安調査庁の職員が与党議員に選挙情報を提供してきたことを示唆する内部文書も伝え、「こういうことをしないと明言して」と迫ったが、同庁の担当者は「お答えは差し控える」と述べるにとどめた。
法案の参考人質疑にも招かれた斎藤裕弁護士がさらに問題視するのは、国の情報収集活動に対する監視機関の不在だ。海外を見ても、米国では上下両院の「情報特別委員会」が中央情報局(CIA)の活動を監視する。英国やドイツ、フランスなどにも同様に監視する仕組みがある。
斎藤弁護士は、内調などに対しても監視機関がない現状をおかしいとしつつ、「省庁が横断的に情報収集することでプライバシー侵害に関わる可能性が高まるため、さらに監視する必要性が高まった」と指摘する。今回の法案では、首相や閣僚らで構成する国家情報会議が、情報の分析を担うと明記する。「情報を本当に客観的に分析できるのか。監視機能がなくて政権の意向に沿った情報を出すだけでは、高市首相の言う『高度かつ的確な意思決定』はできないのではないか」と懸念する。
◆参院を通過・成立すれば「スパイ防止法」第1段階に
法案は、5月8日にも参院で審議入りする見通し。立憲民主党は修正を求める姿勢だが、衆院で複数の野党が賛成しており、与党が少数の参院でも可決される公算が大きい。成立すれば、自民・日本維新の会の連立合意に基づく「インテリジェンス・スパイ防止...
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