【四次マスター】アンリミテッドブレイドニャークス・その4【猫化】
四次マスター:猫 四次サーヴァント:常連客 五次弓:店主 五次槍:バイト
という猫カフェパロディ設定のお話四本目。
一作目:店で働くマスター猫たちの詳細もこちらです。novel/1092144
二作目:槍弓+四次キャスター陣営です。novel/1096951
三作目:槍弓+衛宮親子の話です。novel/1100082
アンケートにご回答いただきありがとうございました。キレイ猫のprpr戦記が人気だったので、順番をくりあげてはやめに書き上げました。あわせてカリヤ猫さんの話も簡単にですが消化しました。槍弓は、書くのはまた後でと思っていたのですが、Extraをはじめて、5戦目の週から赤弓のデレがはじまって……あんまりにも幸せそうにナチュラルにデレるので可愛さに負けて書いてしまいました。彼のツンはどこへ行ってしまったのでしょう。カムバック!カムバクツンデレ!!だれか私に赤弓のツンを返してください!
※「赤弓のツンが死んだ!」「この人でなし!」(追記)
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1)スナイパー「キリツグ」vsぺロリスト「キレイ」
七匹の猫と一緒に紅茶とケーキを楽しむ店、UBN(アンリミテッドブレイドニャークス)。
世間一般で言うところの「猫カフェ」という形態をとるこの店には、二枚看板とも言える二匹の黒猫がいた。
一匹は「キリツグ」という名前で、来歴こそ定かではないものの、店主の家の猫である。全身が漆黒の被毛で覆われているこの猫は、窓辺からのスナイピングを特技としていた。何も狙撃銃を構えてトリガーを引くわけではない。通りに面した見晴らしのいい硝子窓の前に立ち、通行人を視線で射抜くのだ。彼の目に射抜かれた女性は(何故か被害にあうのは女性だけである)、何かに引き寄せられたように、それこそ、魔法にでもかけられたかのようにふらふらとUBNの扉をくぐるのだ。
キリツグはごく標準的な体形で、これといって目立つ特徴はない。しかし、その背中には独特の雰囲気があり、夕暮れ時の窓辺にただずむ後姿は、世間からあぶれた不良少年を思わせた。一体彼の何がそこまで女性を夢中にさせるのかは不明だが、百発百中の精度を誇る狙撃手は常連客の間で「スナイパー」「女殺し」「リア充」「外道」などユニークなあだ名をほしいままにしている。ちなみに「外道」の由来は、得意のスナイピングで女性客ひっかけておきながら、いざ店に入ってくると見向きもしない、というとんでもない接客態度に由来している。
UBNの看板猫として、「キリツグ」と対をなすもう一匹の黒猫は「キレイ」である。彼は厳密に言えば黒猫ではなく、胸元と前足の先だけが白いブチ猫である。キレイにはキリツグにはない、外見的な特徴が二つある。一つは、手袋をはめたような白い前足と、胸元に白い浮かぶ十字架によく似た白い模様。もう一つは、ノルウェージャンフォレストキャットやメインクーンを髣髴とさせる立派な体格である。
猫の平均体重は3キロから5キロ。よほど立派な骨格をしていない限り、5キロをこえれば肥満と言われているが、キレイは5キロを大幅にこえた8キロ級の猫である。もちろん、肥満猫ではない。むしろ余分な甘さなど一切感じさせないガチムキの筋肉質な猫だ。大人になりきっていないウェイバーが3キロ弱、最も一般的なサイズのリュウノスケが4キロ未満。彼らと比較すると、キレイの凄さがよくわかる。もちろん、重いだけでなく、体も大きい。ちょっとした小型犬など片足でなぎ払ってしまえそうなほど丈夫かつ頑丈な前足。それでいて身のこなしは軽く、高所から着地しても物音ひとつ立てないしなやかな後ろ足。
彼を見慣れている店主やバイトのウェイターでさえ「これはもしや、大きな猫というより、小さな熊か豹なのでは?」と定期的に疑問を抱くほど見事な肉体美の持ち主は、立派な体格に反して極めて冷静かつ穏やかな性格の持ち主でもあった。
基本的に、彼は怒らない。追いかけっこに夢中になったウェイバーやリュウノスケに踏み代替わりに使われても。寝ぼけたトキオミがうっかり狭い場所で寝返りをうち、そのまま背中に落ちてきても。病弱なカリヤが神経質になるあまりのべつまくなしに威嚇しても。高慢なケイネスがおやつの順番に割り込んできても。猫の扱い方を知らない客にぬいぐるみ扱いをされても。彼は決して怒らない。唯一怒るのは他の猫の身に危険が迫ったときだが、店主一人で目が行き届かなかった頃ならばまだしも、バイトとして雇われたウェイターの青年がホールに常駐するようになってからそうしたトラブルは殆どおきなくなった。
しかも彼は、冷静なだけでなく、とんでもなく面倒見がいい。面倒見のよさを表すエピソードの一つが、毛づくろいだ。客が少なく、暇なときは、日向で毛づくろいをしている。――――主に、自分以外の猫を。
他猫の毛づくろいが大好きなキレイの最近の渾名はいわずもがな「ペロリスト」である。
窓辺のカウチがお気に入りのトキオミなどは、あまりにも熱心にキレイが毛づくろいをするものだから、最近は自分で作業する必要性を感じなくなったらしく食後以外は毛づくろいをサボっている(彼の優雅なただずまいの何割かは、キレイの努力によって保たれている)。無論、キレイに毛づくろいをされるのが嫌だという猫もいる。むしろこの店ではキレイの親切心からくる毛づくろいを迷惑だと思っている猫の方が多い。ケイネスは彼は自分が認めた常連(という名の奴隷)と店主にしかブラッシングをさせない。カリヤは弱っているために無理な接近はそもそも店主が許さない。ウェイバーは基本的に嫌がるのだが、前足一本でひょいと転がされていいようにペロペロされるという毎度のオチである。リュウノスケは揉めるのが面倒なのか、こだわりがないのか、いつも無気力でされるがままにひっくりかえされている。
そしてキリツグはといえば、毎回、全力で抵抗し、全力で逃走していた。
逃げられると追いかけたくなるのが肉食獣の性なのか、キリツグが本気で逃げ出すと、キレイも普段の温厚さを投げ捨て、本気で追った。キリツグは体格こそキレイに負けるものの、素早さにかけては店内一である。スピードに任せて店内を駆け回るキリツグを弾丸にたとえるならば、その背後にぴたりとついてどこまでも追尾するキレイはホーミングミサイルだ。店内を縦横無尽に駆け回りながら、それでいて客や店員にはかすりもしない二匹の追跡劇は最早UBNの名物である。なお、キリツグがキレイに捕まった場合は、その場で押し倒された挙句、衆人環視のもとで全身をペロペロされるという罰ゲームが待っている。捕獲された際のキリツグの必死な鳴き声と、毛づくろいが終わったあとの哀愁漂う後姿を哀れに思った店主が、大柄なキレイでは進入できない小型のシェルターを作成したために、最近はキリツグが逃げ切ることの方が多くなっているのだが。
「シェルターがぬいぐるみで塞がれている、だと?」
「なるほど。それでさっきの勝負はキリツグが負けたのか」
「キレイが猫なのか、時折本気で疑問に思うわけだが」
「おとなしく捕まったと見せかけて、油断したところを蹴って逃げたキリツグもいい勝負だと思うがな」
キリツグとキレイ、ヒートアップしすぎた二匹をそれぞれを抱きかかえて制止した店主とウェイターは、猫離れした二匹の黒猫を見下ろし、相互に顔を見合わせた。
「キレイ、あまり爺さんをいじめないでやってくれ。君はよかれと思ってやっているのかもしれないが、キリツグは毛づくろいが苦手なんだ」
「今更、言ってきくようなタマかよ」
「他の猫に対しては寛容なんだが、爺さんに対してだけは駄目なんだ。爺さんも、キレイだけは異様に怖がる」
「相性が悪いんだろ」
「それだけではないような気がするから言ってるんだ」
ウェイターがシェルターの封鎖を解除すると、キリツグがするりとその中に入っていった。
よほど恐ろしかったのか、尻尾がぱんぱんに膨らんでいる。
キリツグを隔離した後、キレイの興奮がさめていることを確認して床におろすと、大柄な黒猫はさきほどまでの狂乱が嘘のように落ち着いた様子で水飲み場に向かっていった。
基本的に、キレイは冷静な猫である。面倒見がよすぎるきらいはあるが、それは彼が以前勤めていた職場の影響もあるのだろう。
キレイはこの店に来る以前、動物病院で働いていた。言峰医院、という名の病院で、店主が子供の頃よく世話になったのもその病院だ。腕のいい老医師が働いており、正確に表現するならばキレイは言峰医師の飼い猫なのだが、彼は病院にとって重要な働き手として認識されていた。
受付での接客や、入院している仲間に寄り添い不安を和らげることが主な仕事だったが、緊急時には血液を提供していたらしい。言峰医師は、彼の命を犠牲にしている負い目もあったのか、キレイをことのほかかわいがり、息子に対するように真摯に接してきた。キレイも言峰医師を慕い、病院の看板猫として立派に働いていたのだが、ある日、言峰医師が病に倒れ帰らぬ人となった。言峰医師には子供がおらず、彼の親戚の娘が後を継ぐ予定だったが、生憎、彼女はまだ大学で勉強中の身の上だった。彼女が卒業するまで言峰医院は一時的に封鎖となり、引き取り手もなく行き場を失ったキレイを、UBNで働くことを条件に店主が受け入れたのだ。
キレイは人間の言葉や感情をかなり正確に理解しているだけでなく、他の仲間の様子を観察する術にも長けており、店主が一人で店を切り盛りしていた当時は、さながら第二の店主のように働いていた。ところが最近、バイトとはいえ常駐のウェイターを雇い入れたことで、彼がやるべき仕事は減り、暇になったのだろう。それが他猫の面倒をみること=熱心な毛づくろいのはじまりではないかと店主は推測しているのだが。なぜそこから黒猫二匹による超高速鬼ごっこが始まってしまったのか。なぜキレイはキリツグばかり執拗においかけるのか、人間の身の上では彼らの心境まで推測することはできず、ただひたすら首をかしげるのみである。
「まあ、逃げれば逃げるほど追いかけたくなる気持ちも、わからないでもないけどな」
「今、何か余計なことを言わなかったか?」
「いーえ、何も。ホールで注文とってきまーす」
余計なことを言うなとばかりに店主に睨まれたウェイターは、お小言を言われる前に、さっさと伝票を片手に客席へと歩いていった。カウンターに取り残された店主は、水分補給を終えたキレイと視線を合わせた後、何とも言えぬ複雑な表情を浮かべ、ため息をついたのだった。
アンケートは再び全部選択で!(ドヤア