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【四次マスター】アンリミテッドブレイドニャークス・その3【猫化】/Novel by あおいぬ

【四次マスター】アンリミテッドブレイドニャークス・その3【猫化】

5,193 character(s)10 mins

四次マスター:猫 四次サーヴァント:常連客 五次弓:店主 五次槍:バイト

という猫カフェパロディ設定のお話三本目。
一作目こちらになります。店で働くマスター猫たちの詳細もこちらです。novel/1092144
二作目は槍弓+四次キャスター陣営になります。novel/1096951

弓切というべきか士切というべきか。
攻>>>青槍>赤弓>>>(こえらえない壁)>>切嗣>>>受
ちょっとしたきっかけがあればひっくり返るのが槍と弓かなと。

そして、そもそも猫カフェですらないこの話を投下すべきか迷うこと五分。

時系列とか世界観とか細けぇことはいいんだよおおおお!いまだ存在しない第○魔法か遥か彼方の並行世界かちょっと変わった心象風景か彼が座で見る末期の夢か。そのあたりはみなさまのご想像にお任せします。なんとなくふんわりと仕組みは考えてはいるのですが、まだ理屈になってません。すまぬ……スマヌ……。

槍弓の馴れ初めについて書き始めたら猫カフェどころか猫と無縁な展開なってきてしまったので、仕切りなおすか、このまま書くかで思案中です。そしてウェイニャーをprprしそびれた。無念。

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 はじまりの記憶は、紅蓮で埋め尽くされている。
 燃え盛る炎。
 そこから連想されるはずの苦痛はなく、ただ、命が尽きようとしている予感と絶望だけがあった。
 どこかに逃げようにも、前足どころか、爪先すら、満足に動かすことができなかった。
 もう終わるのだ。自分にとっての、何もかもが。
 焼け焦げた体を地面に横たえ、生きる事に対し、全てを諦めかけたその時。
 降り注ぐ雨とともに、崩れかかった肉体と魂を救い上げる、優しい腕と笑顔が視界を満たした。



「最初に言っておかなければならないことがある。僕はね、今でこそこんな姿をしているけれど、実は、猫なんだ」

 かつて、養父は、御伽噺としか思えないそんな話を、至極真面目に語ったことがある。
 記憶が薄れかけている今でも、その当時の光景は鮮明に覚えている。
 あれは私が病院のベッドで目を覚まし、最初に面会した日のことだった。
 大規模な火災に巻き込まれ、身元不明の子供として収容された私は、第一発見者である彼に引き取られる事となった。怪我を負った後遺症で記憶を失い、身元を証明する所持品もなく、保護を名乗り出てくる血縁者も不在。頼るべき身寄りもなかった私は、一緒に暮らしたいという彼の申し出に何の迷いもなく頷いた。私の返答を聞いた彼は、ほっとした表情を見せた。自分の提案が受け入れられるか、不安だったのだろう。

「あとでお医者さんと相談して、退院の日取りを決めよう。僕はそれにあわせて君を受け入れる準備と、必要な事務手続をすませておくよ」

 そう言って彼は笑い、後は他愛もない雑談をして終わった。
 初対面に近い二人だ。会話を続けようにも、共通する話題はろくに存在しない。
 別れ際になって、不意に、彼は真面目な顔をして私を見た。
 何かとても大事なことを打ち明けようとしている。幼いながらもそれを理解した私は、黙って彼の目を見つめた。鋼のように鈍い色彩の瞳が、ほんの一瞬、きらりと金色に光った気がした。それが目の錯覚か否か、瞬きをして確かめるより前に彼はこう言った。

 実は自分は、人の姿をしている猫なのだと。

 その言葉を嘘だと否定することはできなかった。
 ならばその言葉を信じたのかといえば、否である。

 私はただ、彼の言葉を受け入れた。
 それが嘘でも本当でも、幼い己にとってはどちらでもよかった。
 彼が猫であろうが人間であろうが、消えかけていた命を助け、救い上げてくれた腕の持ち主であることにかわりはない。

 当時の私にとって、彼の笑顔だけが、唯一持ちうる「記憶」だった。
 本当に、ただそれだけが、全てだった。


***********


「爺さん、また猫を拾ってきただろ!」
「……いや、実はこれには訳があって…」
「誰が病院に連れて行くと思ってるんだよ。引き取り手をさがすにしてもそろそろ限界があるし、それまでは面倒みてやらなきゃならないんだぞ!」
「わかってる。大丈夫、今回は僕が面倒をみるから」
「じゃあ病院にも連れて行ってくれるよな」
「……う、それは……」
「ったく、…どうして動物病院がそんなに苦手なんだよ。人間の病院は平気なくせに」
「病院が苦手なわけじゃない。あそこの先生が苦手なんだ」
「でも腕はいいだろ。近所だって評判だ。うちの事情を知って、治療費も安くしてくれるし」
「それは、わかってる。でも、どうしても、…苦手なんだ……何というか、生理的に…」

 子猫が入ったダンボール箱を抱えたまま、俯いてぼそぼそと喋る養父はまるでいたずらが見つかり、しかられた猫のようだった。寝癖で跳ねた後ろ髪が、萎れた猫耳のように見える。幼い私はそんな養父の姿を見ると、それ以上追求する気を削がれてしまうのが常だった。小学生とは思えないほどしっかりしている、と近所でも評判の子供だったが、原因は偏に、頼りない養父の存在にあった。
 彼は生活能力が皆無で、日がな一日、日向でごろごろしていた。働かずとも暮らせるだけの財産があったところをみると、昔はそれなりに、仕事のできる人物だったのだろう。けれど当時の私は、縁側で猫にまみれてごろごろしているだけの養父を、だらしない、としかりつけることしかしなかった。
 彼は特に朝が苦手で、午前中はほとんど使い物にならなかった。陽が落ちると少し元気になり、散歩にでかけることもあった。買い物や散歩など、二人で一緒に出かけることもあったが、家を出るのは常に夕方以降であったように思う。
 まるで吸血鬼のような暮らしぶりだが、異形の生き物を連想するには彼はあまりにも儚い存在だった。外見年齢に対し、痩せて衰えた手足。日に日に長くなる睡眠時間。食事量も徐々に減っていく。その有様は、年老いた猫によく似ていた。

――――僕はね、今でこそこんな姿をしているけれど、実は、猫なんだ。

 そんな言葉を信じていたわけではないけれど、それほど遠くない未来に、養父の命が尽きてしまうであろうことは容易に想像がついた。幼い私は少しでも彼のためになればと、必死で家事を学び、料理を学び、彼がのべつまくなしに拾ってくる猫の面倒を見て、毎日を過ごした。

 養父は散歩に出かけるたびに猫を拾ってくるという悪癖があった。行方も告げずふらりと出かけていったかと思えば、ダンボール箱や、布の塊を抱えて帰ってくる。散歩の途中で見つけてしまい、仕方なく拾ったというのが定番の言い訳だ。出かけるたびに、弱っている猫や、怪我をした猫、親の庇護なしでは生きられない子猫ばかりを拾ってくる養父は、もしかしたら、散歩のついでに拾うのではなく、彼らを保護するためにでかけていたのかもしれない。
 当然ながら、屋敷にはたくさんの猫が住んでいた。二人で暮らしていた当時は、年中無休で里親探しをしていたような気がする。比較的貰い手のつきやすい子猫はまだしも、年老いた猫や、ハンデのある猫の新たな飼い主を探すのには苦労した。貰い手のない猫は、屋敷で面倒をみるしかない。幸いにも、彼らは養父に恩を感じているらしく、住人に対して迷惑をかけるような行為は一切しなかった。養父は特別猫に好かれる体質であったらしく、彼らとある程度の意思疎通もできているようだった。
 私と養父が暮らしていたのは住宅街に立つ古い日本家屋で、昔は武家の屋敷であったらしい。二人で暮らし始めた当初は荒れ果てた民家だったが、それを二人で少しずつ修繕し、猫も人も暮らしやすいよう、改造を施していった。猫の通行を妨げない専用のドアにはじまり、日本家屋ならではの梁を利用したキャットウォークをつくり、足腰の弱った猫のために離れをバリアフリーにし、数年もしないうちに私の家は名実共に立派な猫屋敷となった。
 養父と、彼が拾ってきた猫たちと暮らす生活はせわしいながらも充実していた。隣家が地元の名士であったため、そこから得た人脈で里親探しもぐんと楽になった。やがて、元気で溌剌で破天荒極まりない隣家の娘が遊びにくるようになり、家の中にこれまでにない明るさが灯った。毎日がとても楽しくて、穏やかで、――――いつこの生活に終わりがきても、悔いはないと。自然と、そう思えるようになった。

 そして、彼の命が尽きる時がくる。
 それは美しい月夜の晩だった。
 彼は私の隣で微笑み、瞼を閉じるように言った。

「ごめんね。もう、この姿では、君の傍にはいられない」
「……猫に、戻るのか?」

 何故そこで、そんな言葉を呟いたのかは、わからない。
 彼があまりに優しい声で笑うものだから、わからないながらも、それでいいか、という気分になった。

「ああ。…そうだ、もとに、もどるんだ。僕にかかっていた魔法が、もうすぐ、とけてしまう」

 もうすこし、この姿で君の傍にいたかったな。
 だけど、大丈夫。僕はいつでも、君の傍にいるから。

 そう言って彼は私の目を塞ぎ、額に柔らかなキスを落とした。
 瞼を開いたときにはもうその姿はなく、そのかわりのように、縁側には一匹の猫がいた。
 先ほどまで養父が座っていた座布団の上に座ったその猫は、伺うような視線でこちらを見上げていた。

「――――爺さん?」
 
 幼い私が話しかけると、全身を黒い毛皮で覆ったその猫は、金色の目をきらりと光らせ、にゃあ、と鳴いた。
 それはいつか、自分が猫であると語ったときに彼が見せた、金の瞳によく似ていた。


***********


 記憶は、そこで途切れている。


 そこから先の私の人生は、まともに人に語れるような内容ではない。
 今の暮らしは、言うなれば最後に哀れみとして渡された手切れ金のようなものだ。
 いつ終わってもいいし、いつ消えてもいい。
 とはいっても、面倒を見ている猫たちを放り出すわけにはいかないので、最低限、彼らの行き先を見つける必要はあるのだが。

「どうした。悪い夢でも見たのか?」

 背後から声をかけられ、不意打ちのそれに驚き、振り返る。
 そこには、青い髪に赤い瞳をした男――居候もどきの同居人が立っていた。人の気配には敏感に反応するはずのセンサーがまるで反応しなかったことに、疑問より不安を抱く。それほど深く考え込んでいたつもりはないのだが、もしかしたら、自分で思う以上に、無防備な状態で立っていたのかもしれない。

「別に。何となく、目が覚めただけだ」
「へえ」

 こちらの言い分を全く信じていない顔で、男が近寄ってくる。隣室で寝ていたはずだが、いつの間にここまで来たのか。足音を立てぬ歩き方は、四足の獣のようにしなやかで優美なそれだ。うっかり見とれているうちに、手首をつかまれ、引き寄せられた。有無を言わさぬ強引さで、そのまま肩に腕がまわる。

「きれいな月だな」

 そう言って男が笑い、夜空に視線を向けた。先ほどまで私が眺めていたものと同じそれを、赤い瞳が見つめている。なるほど。言われてみればたしかに、きれいな月だ。脳裏を巡る記憶でいっぱいになっていた私の頭は、その言葉でほんの少しだけ我にかえった。

「残念だな」
「何が」
「これで隣にいるのが女性なら、君の方がきれいだと、褒めて終わる流れだろう」
「男でわるかったな。かわりに俺が言ってやろうか」
「やめてくれ。想像しただけで寒気がする」
「まあ、そう言うなって」

 男は笑って、月から視線を外し、こちらを向いた。
 明かりのない室内で、赤い瞳が鮮やかに揺れた。まるで月の光を目の底にためていたのではないかと思えるほど、美しい赤だった。

「目、とじてろ」

 かつて、養父が幼い私にそうしたように男の手が私の目を塞いだ。
 視界を失った私は、けれどそれに抗うことなく、覆いかぶさる掌の下で素直に瞼を閉じた。
 瞼の動きを感じ取ったのか、目元に押し当てられていた体温が離れていく。
 残像のように焼きついた赤。それが記憶から薄れるよりはやく、顔に、何かが触れた。
 額へのキス。それから瞼、鼻先と触れて、最後に唇が密着する。
 口付けなのかと問われたら、多分、そうなのだろう。曖昧な答えをかえしてしまうほど、それは性的な匂いがせず、そうであるが故に忌避も嫌悪もなく、ただひたすら、柔らかいだけの感触を残して離れていった。

「おやすみ。エミヤ」

 目を開くと、隣室へと消えていく背中が見えた。
 私は発するべき声も、言葉も失い、その場で暫く呆然と立ちつくした。
 やがて時刻が深夜であることを思い出し、一人で床についた。

 それ以来、月夜の記憶は途切れる場所がかわった。
 否、強引に上塗りされたというべきか。
 養父がくれた別れのキスでおわるはずの思い出が、同居人によって仕掛けられたそれに続くのだ。最後には唇が触れ、柔らかく離れて終わる。エミヤ、と名を呼んだ、かすかな吐息すらも、完璧に再現された。月を見るたびに思い出すそれは養父からもらったキスとよく似ていた。例えるならば同種の獣が鼻先を寄せ合うような他愛もない接触であった。けれど、それが何を意図していたのかは不明であり、想像も思考も及びもつかぬが故に、思い出す都度、混乱は深まった。

 嫌悪も、忌避もなく、触れて離れた気配が、養父のそれより存在感を増すまで、さほど時間はかからなかった。



Comments

  • 戒葉(ROM専)

    アンケートは全部選択で!(ドヤア

    June 11, 2012
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