大規模災害などに備えた緊急事態条項創設の憲法改正論議を巡り、衆院法制局が作成した条文のイメージ案が出された。選挙実施や国会開催が困難な場合に備え、国会議員の任期延長を可能とする。内閣が「緊急政令」を制定できる内容という。憲法改正の行方は。

 まず現実問題として憲法改正のハードルは高い。日本は憲法96条で定められているが、諸外国の憲法改正要件をみると、通常の法律の成立要件と同じ(軟性憲法)、または、通常の法律の成立要件に加重(硬性憲法)がある場合に分けられる。主要国では前者は英国、イスラエル、ニュージーランドくらいで、後者が多い。

 硬性憲法のうち加重されるものとして、(1)議会議決の加重要件(2分の1より大きい表決数・一定期間後の再議決)(2)国民投票(3)特別の憲法会議(4)州の承認―がある。

 このうち、(1)議会議決の加重された表決数(2)国民投票(4)州の承認が、憲法改正の難易度の鍵を握っていると考えてもいいだろう。そこで、これらを加味した憲法改正難易度をみてみよう。

 主要国16カ国で筆者の視点で定量的に難易度指数を計算してみると、日本が0・89と最も高く、韓国0・78、中国0・11、インドネシア0・11、インド0・31、フランス0・53、ドイツ0・22、イタリア0・20、カナダ0・39、メキシコ0・39、米国0・45、ブラジル0・23、トルコ0・13、南アフリカ0・39、オーストラリア0・50、アルゼンチン0・39となっている。日本は最も憲法改正難易度が高い国だ。

 この結果、戦後における世界各国の1年当たりの憲法改正頻度について調べると、日本0、韓国0・14、中国0・14、インドネシア1・33、インド1・77、フランス0・52、ドイツ0・93、イタリア0・24、カナダ0・28、メキシコ2・52、米国0・09、ブラジル3・70、トルコ0・44、南アフリカ1・13、オーストラリア0・05、アルゼンチン0・03。毎年から数年に1回の頻度で憲法改正を行う国が多いが、日本はゼロだ。これは憲法改正難易度が世界一ということと呼応している。

 こうした憲法改正難易度の国際比較研究から導かれるのは、主要国並みに憲法改正のハードルを下げることが先決ということだ。まずはじめの憲法改正は96条であるべきで、その後政権を取った側が憲法改正をしたらいいと思うが、そうした声は与野党からまったく聞こえない。時代とともに憲法も変えていくという常識論が通じない日本は嘆かわしい。

 しかも、憲法改正の議論があまりに遅い。国会は立法者なのだから条文イメージでなく条文そのもので議論したらいい。

(たかはし・よういち=嘉悦大教授)

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