ベセント米財務長官が来日し、高市早苗首相や片山さつき財務相と会談した。日本政府の為替介入について「過度な為替変動は望ましくない。日本財務省と緊密に連携を取る」と述べた。今後の為替介入に影響はあるのか。
まず為替相場の実情をみておこう。国際決済銀行(BIS)の2025年世界外国為替市場調査によると、世界の外国為替市場の25年4月の1日当たり取引額は9兆5954億ドル(1540兆円)だ。
取引通貨ペアのシェアをみると、USD(ドル)/EUR(ユーロ)のシェアが21・2%で第1位。USD(ドル)/JPY(円)は2位の14・3%で、1日当たりの平均取引額は約1兆3500億ドル(約216兆円)だ。
こうした中、財務省による介入といっても、財務省が外為特会で保有しているドル債の売却は10兆円程度なので、1日の取引額の5%程度に過ぎず「すずめの涙」ほどだ。商いの少ないGW中だったので注目を浴び、円高への効果は一定期間あっただろうが、今やその効果もなくなっている。
次に先進国では介入するのだろうか。答えは「しない」だ。それは、各国が保有する外貨準備高をみれば分かる。先進国では、外貨準備高はGDPの10%以下であり、日本の30%程度と比べて格段に少ない。ということは、自国通貨高・安の介入がほとんどないことを示している。
先進国では変動相場制である以上当然だ。もちろん各国ともに為替動向には関心がある。為替が二国間の通貨の交換レートである以上、通貨量の比に収束しがちであり、この意味で為替は二国間の金融政策の違いに帰着することが多い。今では、先進国はインフレ目標という金融政策の枠組みを採用しているが、先進国で共通している2%目標に従う限り大きな為替変動はあまりない。
その上で、日本の為替介入にどのような意味があったのかを考えたい。経済効果がない上に介入するのは、日米連携を含めた国内向けポーズだ。長期的な効果がないのでむしろ安心して行える。
さらにドル債を売却すると、含み益が実現することも多い。外為特会が保有するドル債の取得レートは1ドル110~120円程度なので売却額の25%程度の売却益が出る。先日の介入は10兆円程度なので2・5兆円程度の売却益が出て、いずれ税外収入となるだろう。貴重な財源だ。
(たかはし・よういち=嘉悦大教授)