「大手を振って国民を監視できるようになる」国家情報会議創設法案…かつて“監視対象”だった男性の危機感
政府のインテリジェンス(情報活動)司令塔機能を強化する「国家情報会議」創設法案が今国会で成立する見通しとなった。将来的なスパイ防止法の制定と合わせ、高市早苗政権が「国論を二分する政策」(首相)の推進にアクセルを吹かす中、審議の行方を特別な思いで見つめる男性がいる。かつて公権力の“監視対象”となった大分市の矢須田士(やすだものぶ)さん(72)。「権力は理由をこじつけ、暴走するものだ」。10年前の苦い記憶とともに危機感を強めている。(森亮輔) ■大分県警別府署による隠しカメラが見つかった現場。建物を出入りする人が写るように取り付けられていた【写真】 法案が衆院を通過した4月、矢須田さんは顔をしかめながら言った。「法案が成立すれば、大手を振って国民を監視できるようになる。もっと、堂々と行うようになるのではないか」
国家情報会議創設法案は現在の内閣情報調査室(内調)を格上げし、国家情報会議の事務局を担う「国家情報局」を設置するのが柱だ。国家情報局は各省庁から集約した重要情報などを政権中枢に日々提供する。 2016年6月の参院選の公示直後。当時、連合大分東部地域協議会の事務局長だった矢須田さんは「まさか」の事態に直面した。事務所を置く大分県別府市の建物の敷地内に、県警別府署が隠しカメラ2台を仕掛けたことが判明。出入りする不特定多数の関係者らを無断で写していたのだ。
「普通に生活していて監視されるなんて思いもしなかった」と矢須田さん。県警は特定の選挙違反事件の捜査が目的だったと主張したが、別の狙いもあったのではないかと矢須田さんは推し量る。建物を出入りする人を明確に写し出すようにカメラが設置されていたからだ。参院選で野党候補を支援する人の情報集めだったのでは-。矢須田さんは今でも、県警への怒りと不信感を拭えていない。 今回の法案で政府は市民やデモの監視、プライバシーや表現の自由への侵害に関し「調査事項にならず無用に侵害しない」と説明する。だが矢須田さんは「いったん法律ができると歯止めがなくなる。理屈はどうにでもなる」と言い切る。