〔米株式〕ダウ続伸、96ドル高=ナスダックも高い(26日午前)
- 時事通信
テレビ朝日のバラエティー番組「あのちゃんねる」をめぐり、炎上騒動が起きている。出演者である“あのちゃん”こと、あの(anoとも表記)さんが「嫌いな芸能人」の名前を言ったところ、名指しされた本人が批判。テレ朝や番組が謝罪し、最終的にはあのさん本人が「番組を降ります」と投稿するに至った。
なぜ、ここまで炎上したか。ネットメディア編集者の立場から考えると、その背景には「“見逃し再生”が重んじられる視聴スタイルの変化」があるように思える。
■火種となった発言から降板表明まで
炎上を呼んだのは「あのちゃんねる」2026年5月18日の放送だった。「出されたお題に答えながら、サッカーのシュートを決める」という企画が行われていた中で出たのが、「ベッキーの次に嫌いな芸能人は?」という質問。
かつて、あのさんがベッキーさんを“共演NG”にしていたことをネタにしたもので、あのさんは「鈴木紗理奈!」と叫びながら、ゴールめがけてボールを蹴った。
これに反応したのが、名指しされた鈴木さんだ。あのさんの名前や番組名は出さなかったものの、インスタグラムのストーリーズで「普通にいじめやん」と投稿。放送内容とこの反応がセットで報じられると、SNS上では、あのさんへのバッシングが飛び交った。
テレビ朝日は5月22日、スタッフの配慮が足りなかったと謝罪。番組公式サイトにも翌日、「番組制作スタッフの配慮が足りず、鈴木紗理奈様に大変不快な思いをさせてしまい、また、あの様にとって本意ではない形の放送・企画・編集内容により、多くの方に誤解を招く結果となってしまいました」などと掲載した。
これで一段落ついたと思いきや、番組のお詫びを受けた、あのさんのX投稿が注目を集めている。投稿によると、あのさんは以前から、番組制作サイドに見解や意見を伝えていたが、「改善されず、自分にとっても不本意な状況が続いた」とのことだ。
降板も視野に入れ話し合いを重ね、「改善します」との言質を得たため様子を見ていたと言うが、今回のことで「もう続けたくないので番組を降ります。つまり、番組が終わるということになると思います」とした。なお撮影直後には、鈴木さんの名前に「ピー(かぶせる音)」をかけるよう求めたが、その発言もオンエアではカットされていたという。
■なぜ、ここまで燃え上がったのか
今回の事案をめぐって、あのさんへのバッシングが加速している。制作サイドの不手際があったとしても、「鈴木さんを傷つける発言を行ったことは変わらない」との立場から、降板に関するあのさんの投稿は言い訳でしかない、との批判は絶えない。
なぜ、ここまで燃え上がっているのか。SNSユーザーの投稿を見てみると、「本人不在の場で、陰口のような形で行われたこと」に対する嫌悪感が強いようだ。また、あのさん自身が過去にいじめられていた経験を語っていたため、「いじめっ子はどっちだ」といった声も少なくない。
なかには、タレントのフワちゃんが、芸人のやす子さんに「死んでくださーい」と投稿したことを思い出す反応も。
しかし、フワちゃんのそれが本人が直接投稿できるSNS上で行われたのに対して、今回は撮影・編集を経てオンエアされた発言であることから、「カットしなかった番組側が悪い」「編集の有無に関係なく、発言したタレントが悪い」のように、その反応は二分されている。
■擁護するつもりはないが、しかし…
ネットの反応を見る限り、あのさんに対する風当たりは強い。そもそも、独特なキャラクターに違和感を持っていた視聴者も多いようで、「ようやく言える」と胸をなで下ろす人もチラホラ見られる。
ただ、筆者からすると「あのバッシング」は、行き過ぎに感じる。テレ朝が認めているように、“スタッフの配慮”が不足していたことに理由があると思えるからだ。そして、スタッフの配慮が欠けた背景には、昨今の「見逃し偏重主義」があるのではないかとも見ている。
「あのちゃんねる」は、本放送に加えて、民放各局によるプラットフォーム「TVer(ティーバー)」や、テレ朝とサイバーエージェントによる「ABEMA(アベマ)」で“見逃し配信”が行われている。
見逃し配信の普及は、深夜番組の視聴習慣を大きく変えた。本放送の視聴率はもちろんながら、TVerでの再生回数も人気のバロメーターとなり、制作現場には「見逃し視聴したくなる番組づくり」のプレッシャーも与えられていると考えられる。
■本放送で火種、SNSが拡散する「共犯関係」
そこで、ひとつのパターンとなるのが、「炎上スレスレの際どい内容」だ。タレントが本音のぶっちゃけトークを行い、それがスポーツ紙やネットニュースの記事になる。従来であれば、そこで終わりだったが、本来のニュアンスを確認するために“元ネタ”である番組を視聴する導線が引かれた。
そこに無断転載ながら、一般ユーザーが投稿した “切り抜き動画”が拍車をかける。言うなれば、本放送で火種を生めば、SNS上でメディアやネットユーザーといった第三者が拡散してくれて、見逃し再生につながる。このように、ある種の共犯関係が生まれているのは事実であろう。そして、そこに商機を見いだしているテレビ関係者がいてもおかしくない。
完全なる邪推でしかないが、あのさんが訴えていた「不本意な状況」の背景には、こうした“見逃し偏重主義”の弊害がある可能性は否定できない。番組での発言がひとり歩きすれば、それがプラスの評価でも、マイナスでも、矢面に立つのはタレントだ。
多くの視聴者は「なぜ、この発言がオンエアされたのか」などと推察することなく、発言そのもので評価する。つまりは、際どい発言が出た文脈を無視して、その発言単体で判断するため、タレント側の負荷は大きくなるのだ。
■問題はタレントを守りきれなかった制作側に
制作サイドとしてみれば、「SNSでバズらせるのも仕事のうち」となるかもしれない。しかし、本来であれば、川上から川下まで、きちんとコンテンツ流通を見守るべき立場だ。コントロールできない状況になった時、タレントに火の粉がかからないようフォローする体制は、あってしかるべきだろう。
その点において、今回の事案は、タレントを守りきれていなかったと考えられる。あのさんの「嫌いな人」発言を擁護するならば、カメラが回っている、しかも「言わなければ、場の空気が冷えてしまう状況」において、誰の名前も口にしない対応は難しいのではないか。
そこから先は、制作側の手腕にかかっている。まるごとカットしたり、音声をマスキングしたり、実名を出さない編集はできたはずだ。とはいえ、“ピー”音で覆うことで、あらぬ臆測を生むかもしれない。
そのリスクを想定していたのであれば、鈴木さん側に話を通したうえで、オンエアすればよかった。もちろんそれは「やらせ」の一種であり、番組の面白さを弱めかねないが、昨今のコンプライアンス意識の高まりを考えると、選択肢の1つであっただろう。
■「あのちゃん像」を作った冠番組は、なぜズレたのか
制作サイドにおける最大の落ち度は、名指しされる側、今回であれば鈴木さん側の反応を予期していなかったことだ。もし事前に根回ししないのであれば、「ジョークとして通じる相手か」を、しっかり見極めるべきだったのだろう。
とばっちりを受けた“被害者”に話題性を付けさせるのも、SNSやネットニュースに宣伝を担わせるのも、はっきり言ってしまえば、番組制作側がやるべきことを一方的に外注している行為に他ならない。
「ぶっちゃけネタ」は、切り抜きによるバズが起きやすい反面、延焼したときに消火しづらい。そうした特徴を持つだけに、あらゆるリスクを事前に軽減させて、コントロールすることが重要なのだ。にもかかわらず、それが機能していなかったのが、今回の事案における問題点と言えるだろう。
そもそも「あのちゃんねる」は、一般的な知名度が高まる前の2020年から放送されている、あのさん初の冠番組だ。地上波からCS放送、YouTubeなど、放送される場所は移り変わったが、「あのちゃん像」を形作る場所として機能していたように思える。
しかし地上波放送の場合には、視聴率なりTVer再生回数なりの“数字”が求められる。そうした変遷もまた、ズレの要因になったのではないだろうか。
城戸 譲 :ネットメディア研究家・コラムニスト・炎上ウォッチャー
最終更新:5/26(火) 15:00
最近見た銘柄はありません