身寄りのない高齢者「無縁」の最期…納骨や遺留品の扱い、自治体の重荷に
[ニッポンクライシス]第2部「人・くらし」<1>
東京都豊島区の住宅街。賃貸マンションの一室で今年3月、70歳代の男性がベッド脇で亡くなっているのが見つかった。一人暮らしだった。病死とみられ、死後2週間ほどたっていた。 【グラフ】自治体が取り扱った「無縁」遺体数の推移
「日常が突然途切れ、この部屋だけ時が止まっているようだ」。「遺品整理クリーンサービス」(東京都板橋区)の増田裕次代表(51)は玄関でつぶやいた。物件を管理する不動産会社からの依頼で、週に2回、消臭に訪れている。
部屋は男性が亡くなった当時のままだ。片付けや掃除に着手できていない。遺品を引き取る親族が分からず、大家は勝手に処分できないからだ。テーブルにマスクや処方された薬が置かれ、冷蔵庫にミカンや焼き芋が残る。預金通帳には多額の残高が記されていた。「身寄りのない高齢者が亡くなり、遺品の扱いに困るケースは珍しくない」と増田代表は語る。
遺体は親族ら引き取り手がいない場合、自治体が対応を迫られる。厚生労働省の調査で、全国の自治体が2023年度に火葬するなどした「無縁遺体」は推計約4万2000人に上る。
神戸市垂水区の市立舞子墓園。納骨堂の地下にある遺骨保管室には、約3700個の骨つぼが整然と並ぶ。25年度には683柱が「無縁遺骨」として納められた。
市職員が本籍地などから戸籍を取り寄せ、手紙や電話で親族に引き取りの意思を確認している。数か月かけて連絡がついても、「仲が悪かった」「費用が払えない」「連絡しないで」と拒まれるケースが増えている。カバンやつえなど身の回りの遺留品も保管を余儀なくされている。対象や期限に国の明確なルールはなく、市は1年後、処分する。担当者は「業務量も心的な負担も大きい」と語る。
大阪市では毎年9月に慰霊祭を行い、火葬から1~2年後も引き取り手が現れない遺骨を、南霊園(阿倍野区)内の無縁堂に合祀(ごうし)する。15年の慰霊祭で納めた遺骨は2039柱に上り、16年に無縁堂を建て替えて拡張。昨年は3618柱と、20年前の3・5倍だ。市の宮田幸二郎・斎場霊園担当課長は「親族に引き取られないのは、心が痛む」と話す。