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「ある社員の言動を止められない」 新人が次々辞める職場…女性の66%が認識"お局さま"に管理職が注意できないワケ

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働く女性
「お局さま」と呼ばれるベテラン社員を注意できない理由とは(写真:saki/PIXTA)
  • 船見 敏子 公認心理師、産業カウンセラー、1級キャリアコンサルティング技能士

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ある社員の言動を止められない

「あの人さえいなければ、うちの職場はもっとよくなるのに」。こう感じたことがある人は、少なくないはずだ――。

大手メーカーの九州支社。2年前に支社長に就任したKさんは、ある問題に頭を悩ませていた。

「お恥ずかしい話ですが、ある社員の言動を止められず、困っています。その社員の影響で、新人が次々と辞めてしまうのです」

当該社員とは、地元出身で入社25年のベテラン女性社員。営業事務を担当する、事務所の主のような存在だ。

仕事はできる。だからか、重箱の隅をつつくような指導は日常茶飯事で、ときに同年代の社員を巻き込んで後輩に圧をかけることもあるという。新人に対しても容赦なく、書類に押した印鑑が少し曲がっているだけで烈火のごとく怒ったこともあるそうで、耐えきれなくなった新人が、次々と辞めていくというのだ。

いわゆる「お局さま」問題だと、Kさんは捉えていた。現代の視点で見れば、時代遅れでジェンダーバイアスを含む言葉かもしれないが、今なお職場の人間関係を表す記号として使われることが多い。

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【「お局さま」の言葉の由来】

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歴史的には敬意をもって使われていたこの呼称が、ベテランの女性社員を揶揄する意味で使われるようになったのは、1989年のこと。放送されたドラマがきっかけで、当時の流行語になったようだ。

奇しくも、時代は男女雇用機会均等法が施行され、女性の社会進出が進み始めたころである。寿退社という「常識」が崩れ、職場でキャリアを重ねる女性が増えたことも、このワードが広まる要因だったのだろう。

令和の今、侮蔑的なニュアンスのあるこのワードをあまり耳にしなくなったと思いきや、存在そのものが消えたわけではない。いまどきの若手も、お局さまの存在を認識しているのだ。

リクルートの結婚情報サイトが調査機関を通じて20~30代の男女を対象に2024年に行ったアンケート調査によると、「これまで職場・アルバイト先で『お局っぽい』と感じた人はいましたか?」という質問に、男性の38.3%、女性の66.5%が「ある」と答えている。

それだけではない。「お局さんの属性ランキング」や、「お局さまをどう攻略するか」といったアンケートを、さまざまな企業やメディアが今も行っている。筆者も、Kさんと同じ悩みを打ち明ける管理職にしばしば出会う。

管理職が「注意しづらい」理由

この問題は、解決が難しい。そもそも、管理職が注意しづらいという問題をはらんでいるからだ。

お局さまは、管理職のいないところで威圧的な態度を取る。ゆえに、管理職は、部下から相談されても自身が確証をつかめないため、対応に苦慮するのだ。

また、特に転勤族の支社長にとって、ベテラン社員は「職場のことを何でも知っている先輩」でもある。職位は自分が上でも、その事務所においては後輩。土地勘もなく、仕事の細かい段取りもベテランに頼らざるを得ない。立場が弱いから、叱ることを躊躇してしまうのだ。

加えて、「女性社員との接し方がよくわからない」という男性管理職も少なくない。その結果、問題はますます放置されていく。

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【日本特有の「現象」ではない?】

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実はこの現象は、日本特有のものではない。

1973年にアメリカの社会心理学者たちが「女王蜂症候群(Queen Bee Syndrome)」と名づけた研究発表を行っており、世界共通であることがわかっている。

女王蜂症候群とは、権力を持つ女性が下位職の女性や競争相手とみなした女性に対して、敵対的・非協力的な態度を取る行為を指す。「巣の中での優位性を守るためにライバルを排除する女王蜂」の行動になぞらえて、命名された。

男性優位の業界で働く女性ほど、他の女性を競争相手とみなす傾向が強くなることが複数の研究で示されている。

お局さまが生まれた社会背景

着目すべきは、こういった行動を取る要因が「性格の悪さの問題」ではないという点だ。

キャリアを重ねたい。でも、用意されたいすは増えない……。そのような状況の中で、女王蜂もお局さまも、残されたいす取りゲームに勝つべく、思案する。自らの意に反しているかもしれないが、それが結果的に後輩への強い当たりにつながってしまう。

厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」によると、課長相当職以上の女性割合は13.1%。政府目標の30%にはまだまだほど遠い。

女王蜂症候群の研究発表から50年以上、ドラマから30年以上経過した今なお、同様の現象が多くの職場で起きている。

ということは、企業におけるDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン=性別や年齢などの多様性を認め、公平な機会を提供し、互いに尊重し合う環境を作る取り組み)や、女性活躍推進の取り組みが名ばかりになっていることの表れではないか。

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【管理職がすべき2つの対策】

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では、この現状を踏まえ、周囲はどう対応したらいいのだろう。

管理職がまずすべきことは、「話を聞くこと」と「承認すること」の2つだ。何に困っているのか、これからどのような業務を担当したいのか、どんなキャリアプランを描いているのか。そういった本音を話せる場をつくるのだ。

本音を聞き出し、活かす

筆者は、後輩に厳しいベテラン社員と面談をすることもあるが、その多くはとても真面目で仕事熱心だ。向上心が強い人も少なくない。

Kさんも、ベテラン女性社員との1on1面談を改めて設けた。それまでも面談は行っていたものの、どこかぎこちなく接してしまい、表面的な話に終始していた。しかし、筆者が女王蜂症候群のことを伝えてからの面談は違った。

「これまでよくやってくれました」「あなたの力が、この職場の力になっています」。日ごろ思っていたことを素直に伝えると、社員の表情が少しずつ変わっていったという。さらに、仕事やキャリアのことに話を進めると、社員はポツポツと話し始めた。

「新人をちゃんと育てたいと思っています。でも、自分がそうされてきたように、ついつい厳しくしてしまう。それ以外の方法がわからないから、自分でもどうにもできないんです」

「本当はお客様にもっと関わりたい。でも自分にはスキルがないから、無理だと思っています」

面談を終えたKさんは、このようなことを話してくれた。「まさかそんな思いを抱えていたなんて想像もしていませんでしたから、驚きました」。そして、当該社員だけでなく、すべてのメンバーが力を発揮できるよう、仕事の役割分担を見直したという。

一方で、絶対にやってはいけないのは、頭ごなしに叱ること。自分の行為が良くないことだと自覚しながらやめられずにいる人もいるかもしれない。叱れば、怒りを買うばかりか、その社員は自信を失い、問題行動はむしろ悪化する可能性がある。

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【後輩たちが行いたいお局対策】

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一方、同僚や後輩は、お局さまと言われるようなベテラン社員とどう向き合えばいいのだろう。大事なのは、ダメージを最小限に抑えること。自分の身を守ることを最優先してほしい。そのためにも、決してむきになって反論してはいけない。

まずは、日ごろのあいさつは欠かさないようにする。なぜならあいさつは、「あなたの存在を認めます」という合図だからだ。そうして、なるべく関係性を平穏に保つようにする。

そして、きつい言葉を投げかけられても、感情的に反応しないこと。ふーっと息を吐いて、気持ちを落ち着けよう。

さらに、言葉を額面通り受け止めず、何を伝えようとしているのか? を考えるクセをつけるのも、良い対処法だ。

お局さまのなかには、仕事ができる人も多数存在する。その視点から、足りない点を指摘してくれているケースも多いだろう。その「事実」だけをありがたく受け取って修正していけば、スキルが上がっていくかもしれない。

負のループを断ち切るために

人は、されたことを自然にしてしまう生き物だ。きつい指導をされたら、次は自分がそうしてしまいがちになる。もしも今、お局さまに厳しい指導を受けていたとしても、そのループを勇気を持って自分のところで断ち切ることも大切だ。

お局さまという言葉が不要になる社会を、私たちはつくっていけるはずだ。

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