「おう、俺は押し入れにナフサ買い占めてるよ」
俺がそう言うと、オンライン会議の画面の向こうで、総務の田辺が一瞬だけ固まった。
「……ナフサ、ですか」
「そう。これからは原材料を押さえた者が勝つ。石油化学の川上だよ。川上を押さえれば川下は俺のものだ」
俺は湯呑みをすすった。中身はほうじ茶である。川上を語る人間としては少し弱いが、胃にはやさしい。
「押し入れというのは、ご自宅の?」
「そうだ。下段がナフサ。上段がトイレットペーパー。右奥にマスク。左奥に米。日本の縮図だ」
「危険物では」
その発言が社内チャットで切り抜かれ、翌日には俺は「危険物人生課長」と呼ばれるようになった。
俺は課長ではない。係長ですらない。役職名は「主任心得」である。心得というのは便利な言葉で、責任は心得ているが権限は心得ていない、という意味だ。
ことの発端は昼休みだった。
ニュースで「原油価格高騰」「物流不安」「供給網の脆弱性」といった言葉が踊っていた。会社の食堂では、全員が唐揚げ定食を食べながら世界経済を憂えていた。
「何を?」
「米とか、水とか、電池とか」
俺はそこで笑った。
甘い。
人類はいつも末端ばかり見る。パンを買い占め、水を買い占め、乾電池を買い占める。しかし本当に見るべきは川上だ。パンなら小麦。ペットボトルなら樹脂。樹脂なら石化。石化ならナフサ。
だから俺はナフサを買った。
もちろん、普通の家庭にナフサを置いてよいはずがない。よいはずがないことは、だいたい説明書に小さく書いてある。俺は小さな文字を読むと目が疲れる体質なので、読まなかった。
妻は押し入れを開け、しばらく無言だった。
「これは何?」
「未来」
「未来って臭うのね」
「捨てて」
「これは家族を守るためだ」
その夜、妻は子どもを連れて実家に帰った。理由は「石油化学的な価値観の相違」だった。
俺は一人になった部屋で、押し入れを見つめた。
ふすまの向こうに、俺の資産が眠っている。いや、眠っているというより、じっと機会を待っている。資本主義もこうして始まったのだろう。誰かの家の押し入れから。
↓
ナフサ
↓
エチレン
↓
↓
容器包装
↓
↓
午後の眠気
「病院に行け」
「産業医ですか」
「まず眼科以外だな」
社内ではいつの間にか「主任心得のナフサ」が噂になり、若手たちが昼休みに俺の席へ来るようになった。
「本当に持ってるんですか」
「持っている」
「どのくらいですか」
「国家機密だ」
「臭いですか」
彼らは笑った。俺も笑った。ブラックユーモアというのは、最初に笑った人間が最後に燃える仕組みになっている。
本文は丁寧だったが、要するに「会社の名前を出すな」「近隣を巻き込むな」「SNSに書くな」「できれば人間として戻ってきてほしい」という内容だった。
俺は返信した。
お世話になっております。
ナフサにつきましては、個人の思想信条に基づく備蓄であり、弊社とは一切関係ございません。
なお、現時点で燃焼、販売、転売、布教等の予定はございません。
送信してから、最後の一文だけ妙に仕事らしいことに気づいた。人間はどこまで壊れても、メールの結語だけは社会人でいられる。
「押し入れに変なものを置いていると聞きまして」
「変なものではありません。ナフサです」
「変です」
「今の退去価値が高いです」
翌朝、俺は押し入れの前に座り込んだ。
ふすまの向こうから、近代工業の息づかいが聞こえる気がした。いや、単に換気が悪いだけかもしれない。
電話が鳴った。妻だった。
「まだ持ってるの?」
「持っている」
「処分したら帰る」
「処分か」
「子どもが作文に書いたの。『お父さんは押し入れでプラスチックの赤ちゃんを育てています』って」
俺は黙った。
その一文はよかった。詩だった。将来性があった。だが家庭科の先生に読まれるには、少し前衛的すぎた。
「わかった」と俺は言った。「処分する」
「本当に?」
「ああ。俺は川上を諦める」
電話を切ったあと、俺は押し入れを開けた。
そこには、ナフサがあった。
俺の野心、俺の不安、俺の間違った先見性。世界を支配するつもりで、俺は六畳一間の賃貸契約すら維持できなかった。
結局、俺は専門業者に連絡した。業者の男は淡々としていた。彼にとって俺は珍客ではないらしい。
「最近、多いんですよ」
「ナフサを?」
「いえ、未来を押し入れに入れる人が」
男はそう言って、慣れた手つきで運び出した。
部屋は空になった。
押し入れには、しみだけが残った。近代の跡だった。あるいは敷金の死因だった。
数日後、妻と子どもが戻ってきた。
子どもは押し入れを開けて言った。
「大きくなって社会に出たんだ」
妻が俺を睨んだ。
「また変なこと言って」
俺はうなずいた。
その夜、久しぶりに家族三人で夕飯を食べた。スーパーの総菜のコロッケだった。容器はプラスチックだった。
俺はそれを見て、少しだけ胸が熱くなった。
ソースは嘉悦大学の高橋洋一教授 高橋教授は5月23日放送のTV番組「正義のミカタ」でナフサについてこう語っている。 「全体で足りてるんだからどっかで足りてないって言ってる時どっ...
「おう、俺は押し入れにナフサ買い占めてるよ」 俺がそう言うと、オンライン会議の画面の向こうで、総務の田辺が一瞬だけ固まった。 「……ナフサ、ですか」 「そう。これからは...
これは燃える
これがナフサ小説のオリジンと聞いて
面白い
話の次元はぜんぜん違うけど、日本のタッカーカールソンみたいなもんだよな (そう言うと高橋は喜ぶやろな)
財務省陰謀論者の高橋洋一の話なんか話90分の1くらいで聞いとかないと駄目だぞ
一般消費者はナフサなんか買えないから、麻生太郎の関連会社とかが買い占めてるんだと思うよ。
タンク持ってる各社が普段タンク使用率50%で足りなくなったらつど買えばいいやで運用してたのが 供給へるらしいぞで使用率80%運用に切り替えたとかってくらいの話じゃないの もともと...
高市の言ってる目詰まりってどういうことかこの話が一番しっくりくるな。 さすが首相が一番参考にしている経済学者。
シンプルに何言ってるかわからん 高橋洋一のアンチが 「ナフサをネットで買うって言ってるwww馬鹿すぎるwww」 って反応してるけど、そういう意味なのかどうかもわからん
何を言っているかはわからんが一個人がネットでナフサを買えって趣旨じゃないんだろうなってのはなんとなくわかる 好意的に解釈すると業者間であってもネットである程度の在庫が確...
確かにフィラーがない方が分かりやすいし、事実頭の回転が速い人であることは確かなんだが フィラーをそのまま文字起こしするとその人が馬鹿に見える またそれを利用してイメージ操...
なんか米の時も仲介業者が米止めて、卸業者?や店にまで回ってこないみたいな話あったよな。そういうカスを取り締まる法律作った方がいいよ。
>>ソースは嘉悦大学の高橋洋一教授 解散
https://anond.hatelabo.jp/20260525130504 これだよ AIでもお前の読解でもいいが、これどういう意味なんだ?
意味なんて知ったこっちゃねえよバカw俺はお前が「中立のつもりで主観マシマシのテキストを投げてAIに迎合してもらい射精しながら増田に転載する」「自分の脳内と既に表文化してる...
こっちは高橋洋一が何言ってるかわからなくてAIに聞いてみたりしてるところ お前がわかるならお前が解説してくれるのでもいいんだが そこには意見がなくてただ罵倒したいだけとか、...
何だこいつ… 困ってる工務店の人達の前で言えんのか…
ペンチで耳と鼻もがれてもそんなイキった口が利けるのか