【番外編】VD小話
VDイベント可愛かったですね!マスターは全員に当日配るためにはハサンに弟子入りして分身の術を覚えんと無理だろとか妄想してました。そんなマスターの様子とか全員分小話書きたいけど無理なので安定の槍弓で小話書きました。二日遅れのVD話ですが楽しんで頂けたら幸いです。
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閉店後の夜のカルデア食堂に4つの人影が並んでいた。
「ではカルデア食堂緊急会議をはじめる」
「はい!」
「らじゃ!」
「はいな」
冒頭は厨房の主であるアーチャー・エミヤ、応えたのはブーディカ、タマモキャット、源頼光、のそれぞれ食堂スタッフである。
「議題は供給過多のカカオマスについてだ」
「まったく困っちゃうよねぇ!先日は供給量が少なすぎていかに少ないのに美味しいチョコ菓子を作ろうか悩んでたのにさ!今度は溢れるほどあるだなんて!!」
「全くだ!せっかくの試作品が台無しだ!私の最高傑作もお蔵入りとはなげかわしい!」
「チョコが少ないので小麦粉を多めに用意しましたのに、どちらも余ってしまいますわね」
皆の言葉にエミヤは重々しく頷いた。
「その通りだ。特にカカオマスの過剰供給が深刻だ。バレンタインデーにカカオマスを存分に使った菓子を作ることが出来るのはありがたいが、この供給量ではどうあっても使い切れん。大量のカカオマスを消費しつつ、かつ皆が喜んで食べられる菓子を早急に考えねばならない」
「え、そんなに余りそうなのかい?」
「現地の生産量が飛躍的に伸びている。これから更に加速するとのことだ」
「まぁそんなことになっているのですか……」
「出血大サービスも過ぎると致命傷だぞ」
「全くだ」
再びエミヤが重々しいため息をつくと、ブーディカがそわそわと楽しそうな声を出した。
「それなら私一回作ってみたいのがあるのよね~」
「何だね、ブーディカ」
「お菓子の家!それも人が入れるくらいの大きさの!!」
「ほう」
「おお!」
「あら、それは良い考えですね」
「普段はもったいなくて作れないけど、そんなに余りそうならいいよね。皆の分一人一人作るのはちょっと面倒だし、それなら特大サイズ作って皆で食べてもらうってのはどう?」
「賛成!」
「良いと思います」
「……ふむ、良いアイディアだ」
エミヤは腕組をしてしばし考えたあと、アイディアをつけ加えた。
「ならばいっそのこと『チョコの城』を作るか?」
「城ですって!」
「ほう!」
「あらあらまぁ」
「ここには大柄な子もいる。皆が中に入って食べるとしたら城くらいのサイズが必要だろう。幸いと言うべきか悩むところだが、推定されるカカオマスの供給量なら城くらい余裕で作れるはずだ」
「なるほど!いいね!」
「腕がなるぞーーー!」
「うふふ、気合が入りますわね」
カルデア食堂のスタッフ一同は俄然ヤル気になった。子供達が憧れるお菓子の家は誰しも一度は作ってみたいと思うものだ。しかも材料が無限に与えられるので思う存分作れる。
「問題はデザインだな」
「思いっきり可愛いのがいいな~」
「前衛的かつ刺激的な城にするぞ!」
「私は天守閣が作りたいですわ」
「どれも素晴らしいがバレンタインデーは女性がメインのイベントだ。女性が好む洋風の城が相応しいだろう。その代り四方に塔を作り、それぞれ自分好みに趣向を凝らすというのはどうだろうか?」
「あら面白そうですわ」
「いいね!」
「その挑戦受けて立とう!」
「では中心の城のデザインだが……」
キッチンでの会議は深夜まで続いたらしい。
そしてすぐに次々開発されるチョコ製造設備。
畑ができ、工場ができ、宇宙からもチョコがやってきた。
無限に供給されるカカオマスに立ち向かうカルデア食堂部隊の戦いは熾烈を極めた。
「これじゃ埒が明かない!エミヤもっと大きな湯煎窯出して!」
「了解だ!」
「予定より城を大きくしましょう。もっと柱を太く、壁を厚くする必要がありますね。エミヤさん型をだしてもらえますか?」
「任せたまえ!」
「うおおお!作っても作ってもカカオマスが来るぞ!いつまで続くこの戦い!!」
「負けるなタマモキャット!諦めたらそこで試合は終了だぞ!」
カルデア食堂部隊は毎日毎日延々とチョコを作りつづけた。
もちろんいつも通りに食堂の仕事もしていた。メニューにはチョコソースの肉料理やチョコを使ったデザート、茶会用にチョコチップクッキー、軽食用にチョコカップケーキ、少量でも常に消費し続けた。バレンタインデー当日にはもうチョコ食べたくないと言われないよう手を代え品を変え消費し続けた。
尚且つ、マスターのチョコ作りを手伝い、チョコを作りたがる女子達を手伝い、またお返しを作りたがる男達も手伝った。そんな訳で人手はいくらあっても足らなかった。自分のチョコを作り終えた清姫にも手伝ってもらった。
そんなただでさえ忙しい時に無限に供給され続けるカカオマス。もう城に消費するしか間に合わず、チョコの城は予定よりかなり大規模なものになりつつあった。
当初は体育館規模のサイズだったのが、どんどんとチョコが積み重なり、学校くらいのサイズになってしまった。
そしてこれ以上拡張はできないとなったところでやっと工場停止の知らせが来てカルデア食堂隊は安堵した。
「やっと止まったか……」
「かつてない厳しい戦いでした」
「もうネタが尽きてたから助かったー!」
「我がアイデアも無限には生まれぬぞ」
「あとは飾り付けだな」
残りのカカオマスを使用して土台の城に思い思いに飾り付けをしていった。
そして、バレンタインデー当日、皆にお披露目された。
ブーティカの塔はシンデレラ城のような外観で、内部はお姫様の部屋のようにマカロンやクッキーで可愛らしく飾りつけられていた。
「きゃー可愛い!さすがブーディカね♪でも食べちゃうのがもったいない!」
「え、何この鏡!飴でつやっつやでホントに鏡みたい!!」
「ハート型クッキーの壁紙かわいい!私の部屋もこれにした~い」
「喜んでくれて嬉しいよ!さ、皆でお茶にしようか!」
「「「「は~い♪」」」
女性のスタッフやサーヴァントから好評だった。渡す立場になりがちな女性陣が欲しかった友チョコor自分用のチョコというニーズにぴったりだったらしい。
タマモキャットは塔の外観は玉藻の前で、内部は前衛的なチョコ像が乱立するチョコレート人形館だった。
「おお、このツヤツヤした頬、ふくよよかな体つき、正に私だな。素晴らしい、実に素晴しい。ローマに飾りたいほどだ」
「うむ!余のスイートでファビュラスな魅力をよくぞチョコで再現したな!我ながら食べちゃいたいくらいいにキュートだな!」
「私の尻尾の毛艶をよくぞチョコレートで表現しました。さすがですね」
「アストルフォがチョコに!!うわッ!こっちにはデオンまで~~!!!……これ幾らで売ってくれる?」
「ふはははは!我が芸術の前に財布ごとひれ伏すがいいぞ!」
一部のナルシス気味なサーヴァントとコアな趣味を持つ某スタッフ達に絶大な支持を受けた。
頼光は塔の外観を天守閣、内部を和室風に仕上げた。
床の間にはホワイトチョコにビターチョコで書かれた掛け軸、窓枠にはチョコで作った飾窓、特に奥の一室は壁はべっ甲飴で飾られた金の茶室風となっていた。誰の為か一目瞭然である。
「お、おう……さすが大将……ゴールデンだぜぇ……」
「ほほう、月見台まであるとは風流な。ブランデーとチョコで月を眺めるのも一興」
「これはこれは見事な出来だ。異国の祭りもこうしてもらえると私にも馴染みやすい」
「ほほほ、楽しんで貰えて何よりです。さ、こちらで一服立てましょう」
チョコと抹茶をコーディネイトした部屋は佐々木や柳生など、日本出身のサーヴァントに親しまれた。
そしてエミヤの塔と言えば……。
「これは私のフォトン・レイですね。3色飴でおいしそうです」
「オレのイー・バウもある。はぁ~相変わらず無駄に器用なんすね」
「あ!僕のスパタもある!!」
「僕の鎖もありますよ!」
「私の十字架もあったわ!きゃーおいしそう~♪」
中に入ったサーヴァント達は己の武器を探して歩き回っていた。中にはチョコ武器でチャンバラをはじめる輩もいた。
そう、エミヤの塔はありとあらゆる武器を模倣したチョコで飾られていたのだ。
「武器庫かよ。お前らしいっちゃらしいが、色気ねぇなぁ~」
「うるさい」
ランサーに呆れられるのも仕方ない。
エミヤは塔の飾りに悩んだのだ。子供や女性が好むものはブーディカが作っている。自分の出自らしい和風も頼光が作っている。なら何を作ろうかと悩んでいるうちにもどんどんカカオマスが届いてしまう。焦ったエミヤは一つの結論に達した。
(もう好きなものを作ってしまえばいいのだろう?)
カカオマスを使い切る勢いで作れるものといったら英雄&武器オタクのエミヤはそのどちらしかない。英雄はタマモキャットが作っているので、必然的に武器のほうになる。パチモンを持ってるので型もすぐとれるので無限に生成できるのだ。
「ゲイボルクもあるのか?」
「あったがキャスターの君が持っていった後だ」
「ははぁん、嬉々としていただろ」
「あれほど喜ぶなら武器としても使えるモノにすれば良かったな」
「武器になるチョコって何だよ。それもう菓子じゃねぇだろ」
ランサーは呆れたが、そう思わせるほどのキャスターの喜びっぷりだったのだ。赤い飴でコーティングしたゲイボルクは見かけは完璧だったのだ。ちょっと魔力を通して強化すればチャンバラ出来るくらいの強度になる。今度作ってやろうとエミヤは考えていた。
「これ全部お前が作ったんだよな?」
「ああ」
エミヤが頷くとランサーは壁にかかっている短刀を手に取り、刃先へ噛み付きポキンとへし折った。ホワイトチョコの刃は輝きを出す為に飴でコーティングされており、ボリボリとした食感が楽しい。だが非常に甘い。
「ん~…美味いけどちと甘ぇな」
「基本子供や女子向けだからな。ビタータイプは味の調整と飾り程度にしか作っておらん。頼光殿の天守閣なら抹茶を使った甘くないチョコも多く作っていたはずだ」
「お前が作ったわけじゃないんだろ?ならいらねぇ」
「む……」
そう言われてふと気付いた。そういえば自分はランサー用のチョコを作ってない。そもそもランサー用にチョコを作ろうという発想自体なかった。カカオマス消費にばかり頭がいっぱいで本来なら好ましい相手にチョコを贈る記念日だというのをすっかり忘れていたのだ。
(甘いものが好きではなかったはずだが、一応作るべきだったか?)
曲がりなりにも定期的に情を交わす相手だ。本来ならランサーに贈るべきものを作らず、皆で食べる分のみ作ってしまった。ぞんざいに扱ったようで申し訳ないとチラリとランサーを見やった。
「その……チョコ、欲しいかね?」
「いんや?甘いモンはあんまり好きじゃねーしよ」
予想通りの答えだった。それに安堵しつつも気を遣わせたとも思う。でないとわざわざ来て自分が作ったチョコを食べることはしないだろう。
「……これなら中がプラリネでさほど甘くないぞ。アーモンドの食感が楽しいチョコだ」
そう言って、エミヤは飾ってある扉の装飾に使われているボタン状の飾りを一つ外してランサーの口に向けた。ぱかりと口を開いたランサーの口へ放り込んでやった。
「ん、悪くない。なぁ、酒が入ったのはねーの?」
「未成年も多いのにチョコボンボンなぞ作るわけないだろう」
「そりゃそうか」
ランサーはポリポリと短剣の残りを食べている。好きじゃなくとも口をつけたのだから残すような真似はしないのだ。こういうとこは好ましい。あと一欠けらというところで飽きたのか、ランサーがエミヤに向けて差し出してきた。
「ほれ、あーん」
言われるまま口を開くとチョコの切れ端を放り込まれた。そのまま咀嚼する。ミルクチョコレートの優しい味がした。
「食べたか?」
頷くとランサーの顔が急接近してきた。
「ランサー?……んぅ……」
ランサーはエミヤの頭を掴み固定し深く口付けた。口の中を肉厚の舌が入り込む。お互いチョコまみれの舌をこすり合わせられ唾液で広がる。口の中がチョコまみれになる。甘ったるいキスなぞランサーの好みではないだろうに何を考えているのか。幸い誰もいないので、ランサーの好きにさせておいた。
「ん~、こっちのが好みだな」
ランサーは獣のようにベロリと唇を舐めた。
「何がだ」
「お前の魔力って口から吸収すっとウィスキーみてぇな味すんだよな」
「は?」
「甘ったるいチョコと混ざって大人な味になったってこと。俺好みに、な」
「な……」
パチンとウィンク付きで笑うランサーは妙に雄臭い。エミヤは顔が赤くなるのがわかり口元を覆って顔を背けた。
ランサーは向けられた頬にキスを落とし囁いた。
「チョコはいらねぇが夜は空けとけよ」
「……考えておこう」
そう言っても必ず空けてしまうのだ。それを知ってるランサーは笑いながら去っていった。
チョコのキスマークがついたのをエミヤは知らない……。
(終わっとけ)
エミヤさんは後でビター味のチョコボンボン作ってくれると思うよ。
オマケでチョコ槍もらってはしゃぐキャスニキも書こうと思ったけどいろんな人が書いてて満足しちゃいました。