ただ隣にいる幸せを 【槍弓】
メリークリスマス槍弓。
クラッカーの代わりにランサーに大タ/ル爆/弾Gをぶつけてもかまわんのだろう?(クックマラソンが終わらない八つ当たり)
若干モブキャラが出張っておりますが気にしないで下さい。
ってかこのランサーはバイト先でどれだけアーチャーを自慢しまくっていたのだろうか。きっとアーチャーが知ったら憤死するレベルに違いない。
にしても、赤騎兵さんを書いた後にランサーを書くと、ランサーがもの凄く大人に見える不思議。流石男前な方のランサー兄貴やで。
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死んでから、こんな恋人たちのイベントに関わるなどと思いもしなかった。
街にはクリスマスソングが流れ、あちこちの街路樹がライトアップされる季節。
ランサーと恋人と呼ばれる関係になっているアーチャーは、そんな街並みを一冊の本を抱えて歩いていた。
神代の神の子であるのに、やたらめったら現代に適応しているランサーが、クリスマスというイベントに反応しないわけがない。
これが本来の宗教色の強い行事であれば話は別だったのだろうが、何しろここは日本。なんでも取り込んでこの国風にアレンジしてしまうのが得意なお国柄だ。
当然のごとく本来の色は薄れ、ただのイベントと化しているこの国のクリスマスは、ランサーにとって楽しいイベントの一つなのだ。
「クリスマスってこんなご馳走食えるのか!」
たまたまTVでやっていたクリスマス特集、その料理の数々を見て歓声を上げていたランサーの姿を思い出し、少しだけアーチャーの表情が柔らかくなる。
まったく、光の御子がご馳走に子供のように目を輝かせているだなんて、一体誰が想像するだろう。
そして期待に満ちた目で、お前もあんなの作れんの? と聞かれては、作って見せるしかないではないか。
そんなことを考える自分も、大概ランサーにほだされてきているのだとは思いもせずに、アーチャーは料理の本を持つ手に力を込めたのだった。
そんなどこかふわふわとした気分だった一週間前の自分を殴り殺したいと思いながら、アーチャーはクリスマス当日の今日、衛宮邸の台所に立っていた。
凛からパーティの準備を手伝ってほしいと請われて、これと言って予定もないからと引き受けたのだが、流石に大人数、その量も半端ではない。
それでも手際よく複数の作業をこなしながら、時折頭をよぎる付箋を貼った料理本のページに、アーチャーは苦い思いを何度も押し殺す。
本当は、ここではなくランサーと同居しているあの部屋で、全く違う料理を作っているはずだったのだ。
クリスマスを楽しみにしているであろうランサーの期待に応えるべく、何を作ろうか趣味と実益を兼ねて思案を重ねていたアーチャー。
だが、そんなささやかな好意は当のランサーの
「24、25日? ああずっとバイトだわ。飯も朝以外は外で済ましてくるから用意しなくていいぜ」
という言葉ですべて水の泡になってしまった。
君はクリスマスの食事を楽しみにしていたんじゃないのか、と言いかけた言葉を喉の奥で飲み込んで、そうか、分かったとだけ頷いたアーチャー。
料理を作ってやると言ったときのあの喜び方も、彼なりの社交辞令であったのだろう。
本気にして色々考えていた自分の滑稽さに、アーチャーはランサーがいなくなった部屋の中で、一人自身をあざ笑ったのだった。
自分の手が次々と料理を完成させていくのに、一向に達成感も満足感もやってこない。
作ることなく終わった料理と比較しては、ただむなしさだけが募る事実に、アーチャーはこれでは駄目だと理解しつつも、一向に気分を上向けることが出来ずに、とうとう大きな溜息をついたのだった。
凛やセイバーの、一緒に食べていけばいいという言葉を丁寧に断って、アーチャーは一人帰路を歩いている。
結局、最後まで気分が晴れずに、鬱々としたものを抱えたままの自分に嫌気がさして、引き留めるような声から逃げるように衛宮邸を後にしていた。
「全く、なんなのだ。この気分が晴れない嫌な感じは」
思わず口に出してしまい、頭を振る。
日が沈んだばかりの暗闇の中を暫く黙々と歩いたアーチャーは、不意に立ち止まると何か考える様子で暫し立ち尽くしていたが、やがて目的を得た顔で歩みを再開した。
目指すは商店街。
「え、ランサーさん今日ラストまでシフト入ってるんですか? 昨日も入ってたのに、噂の彼女さんはどうしてるんです?」
バイトの休憩中、同じく休憩に入っていた後輩に何してんのこの人的に言われ、ランサーは首を傾げる。
アーチャーならば、今日は嬢ちゃんの頼みでクリスマスパーティーの準備を手伝っているはずだ。
「あ、じゃあランサーさんもそこに後から合流するんですね」
「いや。ラストまでいたら家に着く頃には日付変わるし、オレはまっすぐ帰る」
アーチャーも多分、坊主のいる衛宮邸には長居しないだろう。おそらく料理の仕込みだけを済ませてさっさと退散するはずだ。
そう告げると、後輩の顔がますますヒドいものになった。
なんというかアレだ、未知の生命を見たときのような顔だ。
「念のためお聞きしますが、先取りしてクリスマスのイベントなどをやったということは」
「んにゃ」
「彼女がいるのに、クリスマスのイベント全くやってないとかどういうことですか!」
いきなり爆発された。
「いいですか、クリスマスですよ!恋人たちが幸せそうに歩き子供たちはサンタからの贈り物に一喜一憂する幸せな日です!そして非リア充が血を吐きながら誰かの幸せのために身を粉にして働く日です!俺みたいな!カップル爆発しろ!」
「最後私怨入ってるぞオイ」
ランサーのツッコミは華麗にスルーされた。
「それをスルーですか! そんな扱いされた彼女さんがどう思うか分かりますか!」
「いや、あいつそういう恋人のイベントとか興味ないし」
そもそも彼女ではなく彼氏なのだが、その辺は元より曖昧に伏せているので訂正できない。
なんだこれどうすればいいんだ、と珍しくもランサーが戸惑っている間にも、後輩の説教はヒートアップしていく。
「言い訳しない! 例え興味がなくても、こちらが無視をしていい理由にはなりません! というか、本当に彼女さんからクリスマスの話は出ませんでしたか? 昨日や今日の予定を聞かれませんでしたか? ランサーさんこういうイベント好きだから、相手も何かする事を前提に予定を練ってた可能性もあるんですよ! いやあの彼女さんなら練ってたはずです!」
何でおまえがそんなこと言えるんだと聞けば、普段の良妻っぷりの話を聞いてれば推測できます!と言い切れられる。
「んなこと言われてもなあ……。……あ?」
そういえば、一週間くらい前に24、25日の予定はと聞かれたような。
でもクリスマスなんて一言も言わなかったし。
「普通のスケジュール確認だろあれは? だって毎朝今日の予定聞いてくるぞアイツ」
「今日じゃない日のスケジュール聞いてきたってことは、その日に何かしたいことがあったっていうことでしょうがぁぁぁぁぁ!!」
とうとう怒鳴られた。
「きっと料理好きな彼女さんのことだから、ランサーさんの帰宅にあわせてクリスマスディナー用意しようと思ってたんじゃないですかね!」
料理上手な人は、こういうイベントの時は普段作れない料理を作れるからそっちの意味でも楽しみにしてるもんなんですよ!
そんな追撃に、ランサーの頭がいつぞやの会話を急に思い出した。
そうだ、あのとき確かに、アーチャーはクリスマスのご馳走を作ってやると言って、オレはすげえ喜んで楽しみにしてるからなって……。
「うあああああああああ何で忘れてたオレぇぇぇぇぇぇ!!!」
叫んでランサーは頭を抱えた。
そんな大事な約束を忘れているなんて、自分のうかつさに腹が立つを通り越して情けなくなる。
やり場のない衝動にとうとう壁に頭をぶつけだしたランサーを、慌てて後輩が止めて言う。
「他の奴呼ぶから、今からでも彼女さんのとこ行ってあげてくださいよ」
「いや、それは流石に……ってか、ここで上がったらアイツを一人にした意味がなくなるから駄目だ」
そも、ランサーがクリスマスというイベントを後ろにバイトをしているのは、とある理由があるからなのだ。それを達成せずにアーチャーの元に向かってはすべてが中途半端になってしまう。
「気づかせてくれてありがとな。アイツには土下座でも何でもして謝るわ。さ、休憩終わりだ、切り替えるぞ」
心配そうな様子の後輩ににかりと笑って、ランサーはホールへと向かった。
頭の中で、どう謝ればいいか模索しながら。
日付が変わる30分ほど前。
ランサーからのメールに呼び出され、アーチャーは新都の駅前で何をするでもなくただ立っていた。
空を見上げれば曇り空で、今にも白いものが降ってきそうな気配。
吐く息の白さに、冬が本格的になってきたと感じる。
道行く人は皆、誰かと一緒か急いで帰る人ばかりで、ぽつんと立っているアーチャーは一人浮いていた。
「まったく、何だというのだこんな時間に」
理由もなく、ただ駅前で待ってて欲しいというだけのメールに従う自分も大概だが、それでもやはり唐突なランサーの要求には納得がいかない。
来たら文句の一つでも言ってやろうと心に決めて、アーチャーはまた白い息を吐いた。
時間の指定もなく呼び出されたので、ランサーがいつ来るかも分からずにかれこれ30分以上は立ちっぱなしだ。
サーヴァントである以上、寒さなど気にならないし風邪も引かないが、世間一般からみれば自分のこの状態は結構酷い扱いだろう。
「……別れ話でもされるのだろうか」
あれだけイベントが好きなランサーのここ数日の態度といい、今のこの扱いといい、ランサーは自分にもう興味がないのではないかとアーチャーは考える。
それはそれで仕方ない。そも、自分のような薄汚い守護者に、彼のような本物の英雄が好意を寄せるなど、あってはいけないことなのだから。アーチャーはいつでも、ランサーとのこの関係を白紙に戻す覚悟は出来ていた。
ただ、それならそれではっきり言って欲しい。でなければどうしていいのか分からない。
「たわけめ。はっきり言えばいいものを」
そんな小さなつぶやきが風に消えるか消えないかのうちに、自分をを呼び出した張本人が近づいてくる気配がして、アーチャーはすっ、と表情を整えた。
何を言われても動揺しない、そんな覚悟の現れで。
「アーチャー、すまん待たせた!」
「別に気にすることはない。それで、こんなところに呼び出して何のようだね」
本当はメールして直ぐに駅前に着いている筈が、酔客が起こしたトラブルに巻き込まれて、すっかりアーチャーを待たせてしまった。
幾ら相手もサーヴァントとはいえ、この寒空の下に呼び出しておいて待ちぼうけを食らわせるとは、ろくでなしにも程があると言うものだ。
只でさえ謝るべきことが山盛りだというのに更に増えてしまって、ランサーは分かっているとは言え、自分の運のなさに文句を言いたくなる。
「すまん、本当に申し訳ねえ。店出るときにトラブルに巻き込まれてな。こんな待たせるつもりじゃなかったんだ」
「……気にしてないと言ったはずだが。で、本当に何のようなのだね」
謝るランサーに、気にしていないと素っ気なく返してアーチャーは本題を促す。こんな時間に呼び出すからには相応の理由があるのだろうと。
「ああ、色々話はあるんだけど、まずはそうだ、移動しようぜ! じゃないともうすぐ終わっちまう!」
「終わる?」
「いいから、ついてこいよ」
「おい、どこにいくんだ。そして手を離せ」
手首をつかんで引っ張るランサーに、苦情をいうが、ランサーはお構いなしにアーチャーをぐいぐいと引っ張りどこかへと向かう。
冷えた手首にランサーの手が手錠のように温かく、そんな自身の発想にアーチャーは何を馬鹿なことを、と一人胸中につぶやいた。
そうして連れてこられたのは、新都のやや大きめの通り。
街路樹が電飾で飾られており、冬季間限定のイルミネーションとしてチカチカ輝いている。
「よっしゃ、間に合った」
「なんだね、まさか、これを見せたかったとでも?」
「おう」
まさかと思いつつ訪ねれば応と返ってきて、アーチャーは虚を突かれた。
わざわざ夜遅くに呼び出して見せたかったのが冬の間ずっとやっている只のイルミネーション。
意味が分からない。と正直アーチャーは思った。
「ランサー、このイルミネーションは冬の間ずっとやっているものだ。何も今日急がなくても」
「今日じゃなきゃ駄目なんだよ」
イルミネーションの方を見ていたランサーが、アーチャーを振り返る。
「クリスマスの日に、オマエと見ることに意味があったんだ」
振り返ったランサーの顔が、酷く真剣で、アーチャーは思わず唾を飲み込む。一体、何を言われるのだろう。
「……アーチャー」
なんだ、と答える喉がひきつる。
「すまない」
ああ、やはり、別れを告げるつもりなのだろうか。最後の思い出というのを作ってくれたのだろうか。
「オマエとの約束を、すっかり忘れてた。いや、それだけじゃなく、オマエの意志も聞かないで一人でオマエのこと決めつけてた。オレのこと殴ってもいい。それだけのことをオレはした。本当にすまなかったアーチャー」
「……は? え?」
すっかり別れの言葉が来ると思っていたアーチャーが、話の展開に付いていけずに狼狽えているのを、ランサーは違う方向に解釈したしたらしい。怒濤のように謝罪を並べる。
「バイトの後輩に言われて、ようやく気づいたんだ。オレはオレの都合でしか動いていなかったって。オマエのことを思うオレを一番に優先して、オマエのことをきちんと考えていなかった。オマエがオレのことをいつも優先して、自分の気持ちを殺してしまいがちなことが完全に頭から抜けてたんだ。いや、そんなオマエに甘えていたのかも知れねえな。兎に角……」
「ま、待ってくれランサー。君は別れ話をするために私を呼びだしたんじゃないのか?」
ランサーの言葉を遮ったアーチャーの疑問に、ランサーはきょとん、とした。
「なんだそれ、どうしてそういう話になるんだ」
「どうしても何も、ここ数日の君の態度から読みとったことなのだが」
あれだけイベント好きなランサーが、クリスマスなのにアーチャーに何をねだることもなく、早朝から深夜まで家を空けている。
平時ならばアレが食べたいこれが食べたいとうるさいのに、夜遅いから夕飯いらないと言う始末だ。
そんな調子だったので、睡眠時間を除けば、この一週間でアーチャーと過ごした時間は10時間あるかないかだろう。
「だから、てっきり私といるのが嫌になったのだとばかり……」
「違う違うそれだけは絶対ねえ!」
首が取れるんじゃないかという勢いで首を振るランサーに、どうやら本当に違うらしいとアーチャーは判断する。
では一体、本当に何のために呼び出されたのだろう。
「あー。だからな、その。今からでもなんかそういうイベントっぽいこと出来ねえかなって考えてたら、バイト先の後輩がここのイルミネーションは0時までやってるって教えてくれたんだよ」
アーチャーの料理は望めない。外食するにもまともなレストランなんかはすでに閉店している。ケーキだってもう、どこのコンビニでも売り切れだろう。デートなんてもってのほかだ。
万事休していたランサーに、後輩が教えてくれたのがこのイルミネーションだったのだ。
デートと呼ぶには貧相で、あまりにも短い時間ではあるけれども、今日という日を最後まで諦めたくはなかったのだ。
家族や恋人とすごす日に、オレが一緒にいたいのはオマエだと、オマエだけだと伝えたかった。
否、それを伝えることこそがこの一週間で傷つけたアーチャーへの一番の謝罪であると、ランサーは考えたのだ。
「別に、クリスマスだのなんだの、私にとって特別な日でも何でもないのだが」
「そうだな、オマエ自身はこんなイベントに興味はないんだろう。でも、オレが騒いでいればオマエは何かを返してくれる。少なくとも何かを考えてくれてるだろう?」
その程度には愛されてるってことは分かってるんだぜ、とランサーは笑う。
アーチャーがどんなに可愛くない反応を返しても、それが自分を思いやっての素っ気なさだと知っているから、なおのこと愛しさがつのるのだ。
「そんなオマエの気持ちを、オレはオレの都合で見逃して、踏みにじった。恋人の名が泣いちまうよなこんなんじゃ」
「私のことなど、君が気にすべきことではないだろう」
「オマエを気にしないで他の誰を気にしろってんだオイ」
顔を背けてしまったアーチャーを、ランサーは引き寄せ抱きしめる。
「愛してんぜアーチャー。約束忘れてごめんな。何度謝ったって足りないし、そう簡単に許してもらえるとは思っちゃないけど、本当に悪かった」
あと、不安にさせて悪かったな、と耳元で囁くランサーに、アーチャーはぎゅっとランサーの上着の裾を握った。
たわけめ、と小さく呟いて、消えてしまったイルミネーションの下、ランサーの胸に頭を押しつけるアーチャーと、その背中をあやすように叩いて白い髪を撫でるランサー。
すっかり人通りの無くなった通りで、二人は暫しそのまま、互いの体温を感じていた。
「ところで、一つ聞きたいのだが」
「何でも答えるぜ」
二人の暮らすアパートまでの道をゆっくり歩きながら、アーチャーが疑問を口にした。
「どうして、あんなにバイトを入れていたんだ?」
ここ暫くの間、家にはただ寝るためだけに帰っていたようなランサーの勤労戦士ぶりが、ずっとアーチャーには気になっていた。
何か家に帰りたくない理由でもあるのなら出来るだけ改善するから、と言い出したアーチャーに、直ぐさまそれは違うと否定した後、言いにくそうにランサーは切り出した。
「あのな、オレもクリスマスっていうイベントを無視してた訳じゃなく、むしろ全力でのっかる気満々だったんだよ。ただ、ベクトルが違っただけで」
どういう意味だと言いたげなアーチャーの視線に、ランサーはすべてを白状した。
「だから、二人で過ごすとかじゃなく、クリスマスプレゼントの方に全力を傾けちまったんだよ! オマエ、普段はオレのからのプレゼントなんて受け取らないから、クリスマスプレゼントならいいだろうって思ったんだよ! で、いいの見つけたんだけど、ちょっと予算オーバーしたから、きつめにシフト組んで今日に間に合うようにしたかったんだよ!」
今日のバイト分でめでたく目標金額は達成したのだが、バイト終了後には目当てのものがある店はすでに閉まっていた、というオチが待っていた。
「締まんねえよなったく。ま、そういう訳なんで、プレゼントは明日だ」
悪いな、と頭を下げるランサーに、アーチャーは首を振る。プレゼントの有無などどうでもいいのだ。
繋がれていた手に、ぎゅっと力をこめて握り返す。
「君がいるなら、もう充分だよ。オレは」
ありったけのしあわせを込めたアーチャーの笑顔に、ランサーは顔を真っ赤にしてその場にうずくまった。
おま、オマエ、その顔は反則だっ……!!
オレを殺す気か聖杯戦争も再開されてないのに萌え殺すつもりかそうかそうなんだなよく分かったそれに答えるにやぶさかではないがそれだとオマエといちゃいちゃしたり出来なくなってしまうのでやっぱり却下だがこの仕返しを何とかしたい。
複数の感情でごちゃごちゃになった頭で出した結論に従い、ランサーはしゃがんだままアーチャーの手を引き寄せる。
そうして。
ランサー? と自分を覗き込むその顔を捕まえて、濃厚なキスをしてやったのだった。
ぐーで殴られた頬をさすりながら、思い出したようにランサーが嘆く。
「腹減ったなあ」
「何も食べていないのかね?」
オマエ待たせてたのにどっかに寄れるかよ、という返答に、アーチャーはそれもそうかと頷いた。
「では、クリスマスディナーとはいかないが、帰ったら何か簡単なものを作ろう」
「マジか。助かる」
これでどっかにクリスマスケーキでも売れ残ってればなあ、とぼやいたランサーに、ケーキならばあるぞとあっさりアーチャーは言った。
「その、クリスマスケーキではないのだが」
「何かは分からねえが、オマエの作ったものに不足はねえだろ」
衛宮邸からの帰り道、どうにかしてこの胸のもやもやを吹き飛ばそうとアーチャーがとった選択は、本来作ろうとしていた何かを思いっきり作ることだった。
そうしてアーチャーが選んだのは、メニューの中でもかなり手間と時間がかかるケーキ。
ランサーがそれを見て、お菓子のツリーみたいだなと言っていたから、普通のケーキではなくそれを作ろうと決めていたのだ。
「本来はクリスマスに作るものではないのだがね」
「別にかまわねえっての。どんなのだろうな、楽しみだぜ」
早く帰ろうぜと繋いだ手を引くランサーに、早足で追いつき隣を歩くアーチャー。
テーブルの上に山と積まれたクロカンブッシュが、二人の帰りを待っている。
可愛い二人をありがとうございます!きゅんきゅんしました!