ストーリー

第6回「ニュースがなくても生きていける」 エンタメに染まるZ世代の日常

有料記事

社会部・浅田朋範
[PR]

オールドメディアが響かない Z世代のリアル⑥

 「オールドメディア」の記事が同世代に響かない――。入社以来そう感じてきた20代後半の朝日新聞記者が、かつての同級生らと向き合い、すれ違う理由と情報をめぐるZ世代のリアルに迫ります。

 3回目は、魅力的なエンタメ情報に囲まれ、水を差すようなニュースを忌避する男性に聞きます。記事末尾の「取材後記」で、取材を経て見えたメディアやニュースの今後を記者が考察します。

 カップルや家族連れでにぎわう、3月中旬の東京・赤坂のレストラン。パスタを食べながら、広告制作会社で働く同級生の男性(29)は、3年ぶりに再会した記者(29)にちゅうちょなく語った。

 「ニュースがなくても生きていけるよね」

 そうならば、手元のスマホから、いつもどんな情報を得ているのか? ニュースを見ないなら何を? 立て続けに尋ねると、スマホの画面には、芸能人がパーソナリティーを務めるラジオやお笑い番組の視聴記録がずらりと並んでいた。

 机を並べた中学時代、男性は同じクラスで学級委員を務め、修学旅行や校外学習といった行事のたびに、まとめ役を担うリーダー格だった。サッカー部ではゴールキーパーで、放課後のグラウンドでボールに食らいつく姿が印象的だった。

 大学を卒業し、2020年から働く都内の広告制作会社では、企業の要望に応じて、新商品の販売促進イベントの企画や制作を担当する。

 練り上げた企画が実現し、SNSやイベントの来場者の好意的な反応を目にすると、「自分がこれをつくったんだ」という達成感が味わえ、仕事の原動力になっている。

 繁忙期は、退勤時に終電を逃す時もある。それでも仕事はやりがいがあり面白い。

エンタメに埋め尽くされた日常

 平日は午前5時半に起き、30分で身支度を整えて家を飛び出す。ワイヤレスイヤホンを耳に付け、スマホアプリの「radiko(ラジコ)」をタップする。深夜に放送された「オールナイトニッポン」の軽妙な曲が耳に心地よい。

 同時に、X(旧ツイッター)やインスタグラムを開く。小さな画面に表示されるのは友だちの近況や、サッカー選手のプレー動画。出社前に立ち寄るジムでは、ランニングマシンで走りながら、お笑い芸人のコントを聞く。

 昼食時も皿の隣に置くスマホで、30分ほどのお笑い番組を見ながら食べるのが日課だ。午後8時半ごろに会社を出ると、再びイヤホンを着けて帰路に就く。

 仕事中などスマホを使えない時間帯以外は、浴びるようにラジオやお笑い動画を視聴する日々。神奈川県の自宅から都内の大学まで片道2時間の通学時間にはまって以来、ラジオやお笑いで埋め尽くされた毎日に、ニュースが入り込む余地はない。

 仕事でミスをしても、ラジオ制作者になったつもりで「これをどうやったら面白く伝えられるか」を考えると、ポジティブな気持ちになれた。

 社会人になって6年が経ち、学生時代と大差なく「お笑いばっか見てていいのか」と、後ろめたい気持ちに駆られる時もある。

 「一つくらいは賢いものも見…

この記事は有料記事です。残り1649文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません

お気に入りのニュースサイトをGoogleで優先的に表示できます。今すぐ「朝日新聞」をかんたん登録

この記事を書いた人
浅田朋範
東京社会部|司法クラブ
専門・関心分野
司法、日本で暮らす外国人、ヘイトスピーチ
  • commentatorHeader
    成川彩
    韓国在住 文化系ライター
    視点

    取材した記者は20代後半ですが、私のような40代前半でも、同世代が新聞を読んでいないことを痛感しながら新聞記者の仕事をしていました。それでも、私の親世代は毎朝食卓で新聞を広げ、休刊日はひどくがっかりした顔で「新聞がないと寂しい」と言っていま

    2026年5月25日 07:00
  • commentatorHeader
    杉田俊介
    批評家
    視点

     「無力感しか感じない現実を映し出すニュースより手元のスマホから簡単に得られる娯楽を求め、限られた時間はエンタメ情報に覆い尽くされる」というリアリティは、若者ではないわたしにもわかる気がします。  正直、テレビや新聞でニュースを見るのが苦

    2026年5月25日 07:00

関連トピック・ジャンル