〈奪われた文化財 未完の戦後処理〉
私たちが博物館で鑑賞できる朝鮮半島の文化財の数々。その中に、植民地支配を背景とした不平等な取引や略奪、窃盗など不正な手段で流入したことが疑われる品もあることは、あまり知られていない。韓国側の返還要求に対して、日本政府は慎重な姿勢のままだ。「奪ったものは返す」という道理を妨げるのは何か。(中川紘希)
◆古代朝鮮の王にまつわる品が、なぜか東京国立博物館に
国宝などの逸品を所蔵する日本屈指の国立博物館、東京国立博物館(東博、台東区)。東洋館の5階に上ると、部屋の入り口に展示ケースがある。ライトアップされていたのは三国時代(4〜7世紀)の加那の「冠」。薄い金の板は静かに輝き、荘厳な雰囲気が漂っていた。
「東博の朝鮮に関する展示の象徴的な存在だ」。市民団体「韓国・朝鮮文化財返還問題連絡会議」の有光健世話人(75)が指摘する。説明文には「古代朝鮮で、金の冠は王の証(あかし)」とあり、国の重要美術品に認定されていた。
一方で王の品がなぜ東博にあるのかは解説されていない。有光氏は「本来は韓国政府が管理すべき品ではないか。それが日本にあるという事実は不当行為によって外部に流出した可能性が示唆される」と話した。
◆東博へ寄贈された「小倉コレクション」とは
展示室に入ると、紀元前の考古資料や三国時代の装飾具や武器、朝鮮時代(1392〜1910年)の美術品などが並んでいた。目立つのは「小倉コレクション保存会寄贈」と書かれた展示品の多さ。リストでは、約200点のうち「冠」を含め約70点がこれに該当した。
小倉コレクションは、植民地期に朝鮮で電気事業により財をなした実業家、小倉武之助(1870〜1964年)が収集した膨大な朝鮮の文化財だ。小倉の死後の1981年、1110点が東博に寄贈された。名品ぞろいで、重要文化財8点や重要美術品31点が含まれた。東博は当時の資料で「朝鮮関係の陳列品はめざましく充実し、質量ともに他に傑出したものとなった」と歓迎した。
小倉は1964年に所有する文化財の目録を発行した際、「余は一介の門外漢にすぎないが、多年にわたり趣味嗜好(しこう)の赴くまま...
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