1日目 背中に刻まれた悪魔の紋章
呪いを解くためにはセックスによる男の精気が必要!? アリスは毎晩夜這いに来る男達を受け入れて、連続絶頂に達する……
ここまで全年齢向けですが、次回からR-18になっていきます。
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食卓にそのまま招かれたアリスたち。身体や衣服の汚れも気になったが、アリスのお腹がグーと鳴ったためにまずは腹ごしらえをすることとなった。赤面するアリス。ラルフはそれを見てまたも胸の高鳴りを覚える。
(ああ、お嬢様、体面を気にされているな。かわいい……)
清楚なアリスが慌ててお腹を押さえる姿を見られて眼福なラルフである。
「ふむ、ではそのキャンベル城のクリストフ王子との婚礼の儀が」
「はい、半月後を予定しています」
食事にありつきながら、ラルフとアリスはルードネスからの質問に答えていた。野菜が溶け込んだスープが振る舞われていた。相当煮込んだと思しきスープはカボチャや芋が原形をとどめていないほど煮崩れしており、飲むだけでいろいろな栄養が取れそうだった。
「明日もこの村で疲れを癒やしていかれるとよろしかろうと思います。そしてわたくしルードネスが、アリス様の婚礼の儀に貢献したとして、その、褒賞などいただければ……」
「あなた、あまりに失礼では……」
ルードネスの物言いを妻のヴァネッサがたしなめる。いきなり大胆な要求をしてくるルードネスだが、古来より一宿一飯の恩義は語り草になるほどに感謝されるものである。ラルフはかつて読んだ昔話を連想していた。
「いえ、ルードネス様のお屋敷に私たちをお泊めいただいたことには深く感謝しております。ご恩はのちほど必ずお返しいたしますわ」
アリスは真剣な面持ちで返す。こういう義理堅いところも彼女の魅力だよなとラルフは少し頷く。
「あ、いえ、冗談を申しただけです。申し訳ありません」
「ただ、ルードネス様とヴァネッサ様にご迷惑をかけ続けるわけには参りませんし、キャンベル城も私どものフェラーズ家も心配しているかと思います。明日の朝早々には出発いたしますので……」
「いえいえ、まだ婚礼までお時間もあることですし、しばらくこちらに逗留されてもよろしいのでは」
褒賞云々は冗談だったようだがルードネスから引き留めるような文言が出たことでラルフは驚いた。彼らにラルフたちが話した事情は真実ではあるが、ルードネスからするとそれを完全に信じる根拠もないし、食事や寝床だってタダではない。すでにアリスが恩義を感じた話もしているから、日が昇ればさっさと出て行ってもらってもよさそうなものである。それを引き留めようとする真意はいったい何なのだろうか。
「まあそんな、私たちがご迷惑をかけ続けるわけにも参りませんわ。お心遣い感謝いたします」
「そうですか……まあ、まずは一晩休まれることですな。その護衛騎士団でしたか、相当お強いようですし、モンスターを倒して関係各所にアリス様とラルフさんの行方がわからないことは伝えているでしょう。いずれ捜索の手がこの村にも及びますから、迎えが来たときに一緒に出立されればよろしいかと」
「な、なるほど……」
ラルフはうーんと唸りつつ、納得してしまった。騎士団の同僚の顔が頭に浮かぶ。確かに彼らがやすやすとモンスターに全滅させられるとも考えにくい。誰かしらが生き残り、フェラーズ家とキャンベル城に知らせが行っている可能性は高そうだ。そう考えると少し心に余裕ができたように感じるラルフであった。
「ごちそうさまでした。とっても美味しいお食事でしたわ」
アリスがそう言って立ち上がる。ラルフの方はとっくに食べ終えていたため、アリスに追随して立ち上がり頭を下げた。
ルードネスも席を立って近づいてくる。
「ルードネス様、やはり私たちは明日の朝に……」
「まあまあ、あまり心配なさらないことです。世の中、なるようにしかならないのですからね」
アリスがあくまで引き留めを固辞しようと喋り始めた。そこへ励ましなのかよくわからないことを言いながら、ルードネスはアリスの背中をポン、ポンと2回叩いた。
(……? 今、ルードネスさんの身体が青く光ったような……?)
ラルフはルードネスの身体の発光を目にしたような気分になるが、それも一瞬のことで見間違いだったようにも思えていた。
「う……ううっ」
その時、立っていたアリスがふらつき、テーブルに身体を預けて突っ伏してしまう。
「アリス様! どうなさったのですか!」
慌ててラルフが呼びかけるが、すぐにアリスは目を覚ましてよろよろと立ち上がった。しかし片方の手はテーブルに付いたままで、独りで身体を支えるのも大変そうだ。食事したばかりだというのにどことなく顔色も悪い。
「ご、ごめんなさい。少しクラッときてしまって」
「アリス様はやはりお疲れのようです。お風呂の準備ができておりますので、お入りになってお休みください。ラルフさんはアリス様が入られたあとで構いませんかな」
「あっ、はい、承知しました」
アリスの使ったお湯に自分も入れるのかと想像して一瞬邪な考えが頭をよぎったラルフだったが、それよりもアリスの体調が気になる。この場は自制心が勝った形だ。肩を貸そうと近寄ったが、アリスに手を上げて制されてしまった。
少し経ってアリス本人は元気を取り戻したようで、ルードネスとヴァネッサに礼を言いながら案内された部屋に向かっていった。ラルフも後を追うように食堂を出て行く。
アリスの部屋は2階。ラルフにはアリスの隣の客間があてがわれており、部屋に入る直前にアリスが話しかけてきた。
「ラルフ、今日は守ってくれてありがとう。とっても頼りになるのね。あなたがいてくれてよかった」
「はっ、アリス様がご無事で何よりです」
アリスの口調は元気なときのものと同じだ。どうも先ほどくらっときていたのも一時的なものだったようだとラルフは解釈する。彼女から直接感謝の言葉を述べられて、最敬礼しかねない勢いで応じた。褒美にキスでもしてくれないかと期待したが、アリスがくれたものは言葉と笑顔だけであった。
「ふふっ、じゃあわたしお風呂に入ってくるね」
ニッコリと笑ってアリスは自分の部屋へ入っていく。ラルフも自分の部屋のドアを開けた。アリスの言葉を反芻して顔がにやける。
(ああ、アリス様、かわいい、たまらん)
締まりのない顔をしながらあてがわれた部屋の様子を見る。中は調度品もそこそこで適度に華美だった。勤務するフェラーズ家よりは劣るなとラルフは感じてしまうが、お世話になっている家に対してそんなことを思うのも失礼だと思い、なるべく考えないようにした。
隣の部屋のドアが開く音がする。おそらくアリスが風呂場に向かったのだろう。ラルフはベッドに横になり、今日のこと、これからのこと、そしてアリスのことを考えていた。先ほど言われたお礼を反芻しながら風呂に入っているアリスの姿を想像すると、少し幸せな気持ちになれた。
「いやああーーーーーっ!!」
突然女性の叫び声が屋敷内にとどろき、ラルフは思考を中断される。
(今のは、アリス様の声では!?)
アリスに何かあったのだろうか。ラルフはすぐにベッドから降りてドアを開け、飛ぶように風呂場に向かう。
脱衣所ではバスタオルを身体に巻いたアリスが震えており、駆けつけてきたのであろうヴァネッサが横に付き添っていた。そこにルードネスも現れる。客観的にはラルフにとってサービスシーンでもあったが、ここではアリスへの心配の方が勝っていた。
「どうなさったの、アリス様」
ヴァネッサが声をかける。アリスの顔を覗き込むようにしながら、バスタオル越しに彼女の背中に手を置いていた。
「わ、私の背中に……」
そう言ってアリスはバスタオルをはだけようとするが、ラルフとルードネスの存在に気がついたのか、慌ててそれをやめる。
「ちょ、ちょっとタオルの巻き方を考えます……ヴァネッサさん、手伝っていただけませんか」
「は、はい」
ラルフとルードネスはいったん脱衣所から出て、アリスの準備が整うのを待つ。しばらくしてから呼ばれた。
「私の背中にこんな、アザのようなものが……」
タオルを2枚使っているアリス。1枚で身体の前面を多い、もう1枚は腰の辺りで巻いている。背中だけを男2人に見せていることになる。そこには……
「これは、何かの顔のような……」
ラルフは呟く。アリスの背中には悪魔の顔のような紫色のアザができていた。背中の全面ではなく肩甲骨の周辺に広がっている。
もちろん、アリスにそんなアザがあったとはフェラーズ家内でも聴いたこともないし、アリスの驚きと戸惑いようからみても、最近できたことは明らかだ。おそらく彼女は鏡でそれを見て声を上げたのだろう。
「こ、これはっ……悪魔の紋章ですぞ」
ルードネスが慌てた声で言う。アリスのタオルを押さえるヴァネッサもワナワナと震えている。彼らにはピンとくるものがあったようだ。
「悪魔の紋章?」
アリスが聞き返すと、ルードネスは少し悩んだような様子で口を開いた。
「つまり、アリス様は悪魔に呪いをかけられたと思われます。今は背中の上の部分だけに紋章がありますが、これが背中いっぱいに広がりますと……」
「広がると、どうなるんですかっ!?」
ただ事でない様子を察し、ラルフが大声で先を促す。
「し、死に至る、と……その、あくまで、古い文献で読んだことがあるというだけで、正確なところは……」
「し、死ぬって……」
アリスとラルフは顔面が蒼白になる。あまりに唐突かつ残酷なその結論に絶句してしまった。
「おそらく今日のモンスターの襲撃の際に、呪いをかけられたものと思われますが……」
「そ、そんなことはどうでもいいんです。呪いを、呪いを解く方法はないんですか!? その古い文献というのに書いてありませんかっ!」
ラルフは早口でまくし立てる。恋慕するアリスの一大事だ。何としてもルードネスに解決方法を見つけてもらわねばならない。しかしルードネスは考え込んだ表情のままだ。顎に手を当てて眉間にしわを寄せている。
「あの……紋章が背中いっぱいに広がるまでには、どのくらいかかるのでしょう」
今度はアリスが口を開く。
「それが……1日とも、1ヶ月とも、いや、1年だったか……申し訳ありません、正確なところはやはり文献を調べないと……」
「は、早ければ1日で死ぬなんて……」
ラルフは絶望的な気分になる。アリスもあまりの展開に口元を手で覆って少し震えている。
「今から倉庫に行ってその文献を探して参りますので……」
「いえ、ルードネス様、今日は私たちを泊めていただき、お食事まで提供してもらったのに、そこまでご迷惑をかけるわけには参りません。やはり明日の朝には出発し、キャンベル城で契約している魔術師に調べてもらいますわ」
「は、はあ……そうですか」
バスタオルを丁寧に身体に巻き直すアリス。
「私のことでお騒がせして本当に申し訳ありませんでした。皆さんもお休みになってください」
あくまで他人を気遣うアリスの提案で、その場はお開きとなる。ラルフとしてはルードネスと一緒に文献を探すつもりだったが、アリス自身がキャンベル城で調べてもらうことにした以上、この場での口出しは控えることにした。
悶々としたまま部屋のベッドで横になるラルフ。そこへアリスが風呂から上がってきて、廊下からドア越しに部屋にいたラルフに一声かけた。
「ラルフ、あの、私……いえ、ごめんなさい。ラルフ、しっかり休んでね。ではまた明日」
いつもの凜としたアリスの声だが、少し震えているように見えた。自らの死への不安を押し殺して気丈に振る舞っているのだろうか。
何か慰めや安心させる言葉をかけたかったラルフだが、そこは剣術だけやってきた童貞の悲しさで気の利いたことが言えず、はいと返事をしただけだった。部屋から出たらすでにアリスは自分の部屋に入った後。つくづく要領が悪い。
ラルフは自身も風呂につかり、部屋に戻って寝ることにした。
◇ ◇ ◇
「う、ううっ、アリス様っ、そちらに行ってはなりません……」
アリスが自分に別れを告げて、光りの向こうに消えていく夢を見た。ラルフは寝汗をびっしょりとかいて目を覚ました。外はまだまだ暗い。朝になるには時間があるようだが、変な時間に起きてしまった。若干の尿意もあったラルフは下の階まで用足しに向かうことにした。
1階にはルードネスとヴァネッサの寝室がある。他は使われていない客室があると聞いていたが、そのうちの1つにかすかな明かりが灯っているのがドアのすき間から見える。ラルフは不思議に思い近づいていくと、ルードネスらしき声がした。ドア越しにラルフは聞き耳を立てた。
「では、これから呪いを解除する儀式を始めていきますぞ」
「はい……」
誰か女性の声が返事している。
(ア、アリス様の声では!?)
そっと部屋のドアを開けるラルフ。そこにはローブに身を包んだルードネスと、ネグリジェ姿のアリスの姿があった。