「キオクシアはPEGレシオ0.3倍やから割安」——その発想、逆指標やで
Xを見とると、「キオクシアはPEGレシオが0.3倍やから、まだまだ割安や」いう投稿をちょいちょい見かける。
株価は既に爆上がりしとるのに、や。
2024年12月の上場時は公募価格1,455円。
それが2026年2月には年初来高値24,420円をつけて、4月16日終値で33,870円。
約1年ちょいで20倍超や。
それでも「PEGで見たら割安」言うとる人がおる。
これ、違和感ないか?
「爆上がりしたのに割安」って、指標の使い方が間違うとる可能性を先に疑うべきちゃうか。
結論から言うと、キオクシアみたいな景気敏感株にPEGを当てはめるのは、逆指標を掴みに行っとるのと同じや。
今回はその構造と、ほな何で見たらええんか、いう話をする。
そもそもPEGレシオて何や
PEGレシオはピーター・リンチが広めた指標で、PER÷利益成長率(%)で計算する。
1倍が適正、1未満が割安、1以上が割高、いうのが教科書的な見方や。
PER単体やと高く見える成長株でも、成長率でそれを正当化できるかを測るための道具やな。
ちゃんと使えば悪い指標やない。
問題はどこに使うか、や。
なぜキオクシアでPEGは逆指標化するんか
メモリ半導体は景気敏感株の中でも特にシクリカル性が極端な業種や。
NAND価格の変動がそのまま利益に効く。
具体的にどれくらい極端か。
TrendForceによると、2026年第
1四半期のNAND契約価格は前四半期比55〜60%上昇、第2四半期も70〜75%上昇見込み。
DRAMに至っては第1四半期に90〜100%上昇、四半期ベースで過去最高の上昇率や。
利益はこの価格変動に100%連動して動く。
ここでPEGの計算を考えてみ。
分母の「成長率」は、直近のEPS急増分がそのまま入る。
価格高騰でEPSが前年比3倍、4倍になった瞬間、成長率の数字が爆発的に大きくなって、PEGは機械的に小さく(=割安に)見える。
つまりこうなる。
市況ピーク時:EPS急騰 → 成長率が異常値 → PEG小さく「割安」に見える
市況ボトム時:EPS激減 or 赤字 → 成長率マイナス or 計算不能 → PEGが機能不全
一番割安に見える瞬間が、実は天井に近い。
これが逆指標化の正体や。
マイクロンで同じ現象が既に進行しとる。
BofAのアナリスト、ヴィヴェック・アリヤ氏は「マイクロンのマージンはサイクルのピークに達した可能性がある」「現在の収益水準は近い将来の成長を既に先取りしとる」と指摘し、グロスマージンがAIブーム前の60〜70%水準に回帰すると予想しとる。
業績が最高に見えとる時が、サイクルの頂点やいう古典的なパターンや。
キオクシアも同じ線の上におる。
2026年2月の決算で「2026年分のSSD生産枠は完売」と強気の見通しを示したことでヘッジファンドやデイトレーダーが殺到し、株価は急騰した。
売買代金は東証プライムで断トツ、「ジェットコースター銘柄」と呼ばれるほどのボラや。
PEGでこれを評価するのは、台風の目の中で「風が止んどるから安全や」と判断するのに近い。
ほな景気敏感株は何で見るんや
シクリカル株にはシクリカル株の見方がある。
単年の利益指標やのうて、サイクル上の位置を見る、いうのが基本や。
PBRは、景気敏感株では強い味方になる。
売上や利益がサイクルで乱高下しても、純資産はそこまで動かんから、市況底での下値目処として機能する。
歴史的に景気敏感株がPBR1倍を割った時は買い場になることが多い。
逆に今のキオクシアみたいに純資産比で何倍もついとる局面は、利益の持続性に全部賭けとる状態やいうことや。
ちなみにEV/EBITDAも半導体セクターでよう使われる指標やけど、これもPEGと同じで分母のEBITDAが市況で乱高下する以上、単年値では逆指標化する。
本来は過去5〜10年のサイクルを均した正常化EBITDAで計算するもんやけど、キオクシアは上場2年未満やからそもそもその計算自体が成立せん。
結局、景気敏感株で一番効くんは業界サイクル指標そのものや。
NAND契約価格、メモリ在庫水準、設備投資サイクル。
プロが「シリコンサイクル」を語るんは、個別企業のバリュエーションより業界サイクル上の位置の方が株価に効くからや。
今の局面で言うたら、NAND価格は2026年第1四半期に前四半期比55〜60%上昇、第2四半期も70〜75%上昇見込み。
一方でマイクロンはAIブーム前のマージン水準への回帰をBofAアナリストに予想されとる。
スマホ、ノートPC、ゲーム機の出荷予測はメモリ高騰で既に下方修正されとる。
需要の天井が見えかけとる兆候は、サイクル指標を見とれば拾える。
単年のバリュエーション指標では拾えん情報や。
しかも、この手の銘柄は足元の決算だけでは動かへん。
AI向け需要の先行きに陰りが見えるニュース——たとえば原材料不足や電力制約でデータセンター建設が遅れる、といった話が出るだけでも売られやすい。
今の利益水準が期待先行で評価されとるぶん、その前提が揺らぐと株価も揺れやすい。
指標は道具や。
でも、道具は使う場面を選ぶ。
PEGは、利益が安定しとって成長率が読みやすい企業には有効やけど、NAND価格一本で利益が3倍4倍に跳ねる会社に当てはめたら、一番危険な瞬間に「割安」のシグナルが灯る。
見るべきは倍率やのうて、このサイクルが今どこにおるかや。
ワイの見解
今のメモリ業界は「メーカーの棚には何もないが、客の倉庫には爆弾が積み上がっとる」状態かもしれん。
メーカー側の在庫は枯渇して「完売」のアナウンスが出るけど、その裏で川下のPC・スマホメーカーが将来の値上がりを恐れて二重発注気味に積み上げとる——そういうサイクル末期によくある歪みや。
2021〜2022年の半導体不足からの在庫調整で、業界が一度通ってきた道でもある。


