梅酒とミード
少し前に、梅酒仕込みながら、槍弓で梅酒仕込んだら可愛いのではないかと思った話。
大きな立派な身体で二人してうだうだ話しながら、小さな梅のヘタを取って欲しかったのです。
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開け放した窓から爽やかな風が入ってくる。
南の方では梅雨に入ったとテレビで言っていたが、この辺りにまだその気配はない。
程よい気温と心地よい風にとろりと眠くなってくる。
「ランサー。手は空いているか?」
しかし、階下から聞こえた声にがばりと起き上がる。
「おー!」
普段家の事を任せきりにしている分、声を掛けられたら俄然張り切ってしまう。人に頼ることが下手な、愛しい男からならば尚更だ。
何だなんだと、下に降りてみればどこか甘い匂いがして、ランサーはすんと鼻を鳴らす。
どこかで嗅いだ匂いだが、何だっただろうか。
居間に顔を出せばその正体はすぐにわかった。
「もうそんな季節か」
畳の上には新聞紙が広げられ、平たく大きなざるが置いてある。その中にはたくさんの青々とした梅がのせられていた。水から上げられたばかりのそれらにはまだ水滴がついている。
「暇なら手伝いたまえ」
その一つ一つを丁寧に柔らかいタオルで拭く手を止めないまま、ランサーの愛しい恋人、エミヤは言った。朝から家事に勤しんでいた彼は黒いエプロン姿だ。
「へいへい」と返事をしながら、ランサーは畳にどかりと座りあぐらをかく。
それから、座卓に置いてあった竹串を手に取り、エミヤが水気を拭きとった梅のヘタを取り除いていった。
串の先でつつけば、面白い程綺麗にヘタがとれる。最初の頃は、竹串の先で梅の実を傷つけたりもしたものだが、今ではもう手慣れたものである。
何をしろとは言われずとも、何をすればいいのかわかるようになったことに、寄り添った年月を感じて口元がにやけてくる。
青い梅からこんなに甘い匂いがするなんて、この男と出会うまでランサーは知りもしなかった。
言葉はなくとも、ただ当然のように側にいることが嬉しく、愛おしい。
「ランサー。何だ、その顔は」
「どんな顔だよ?」
「……随分と、締まりのない顔だ」
何がそんなに嬉しいと、ちらりと見やってくる男の顔は涼し気だ。
「君がこういう細かい作業が好きだとは知らなかったぞ?」
それともそんなに今年の分が嬉しいのか?と手を止めないままに言ってくるエミヤの調子を崩したくなり、さらに顔をニヤつかせてランサーは答える。
「だってよぉ、俺たちのミードだろ?」
そりゃ、嬉しいさね、と続けると、エミヤの顔が一瞬で朱に染まり眉間に皺が寄った。濃い肌の色のせいでパッと見にわかりづらいエミヤの顔色だが、今ではランサーは手に取るようにわかる。
「何年も前の話を持ち出すな……」
「いいじゃねぇか」
誤魔化すように目線を下ろして梅に集中するエミヤに、ランサーの笑みは深まるばかりだ。
今年の梅は丸々として張りがある。形も綺麗だ。
「今年も良いのが出来るといいなぁ」
「気が早いぞ、たわけ」
今年はどんな梅酒が出来るだろうか。
ランサーが背中を丸めて小さなヘタを取ってる後ろ姿が思い浮かんで幸せでした!