母のサ高住入居まで①
去年の夏、私が何軒かの有料老人ホームを見学したことは前回書かせて頂いた。その後、私が持ち帰ったパンフレットに目は通すものの、積極的に見ようとしない母は、かつて、老人ホームへの入居は考えられないと大阪での入居予定を土壇場で蹴った。その後、乳癌の予兆もあり、私のケアを求めて北海道に来たわけなので、母に入居を勧めても無駄だとわかってはいたが、母との生活に疲れていた私は、もう無理だと投げ出しかけた、去年の夏。
世間では嫁姑問題が世の常だと考えられているが、なかなかどうして、実の親子の同居問題も複雑なのが現実だと思う。特に私は関西から北海道に嫁いで来た人間なので、親とは会う回数からしても、本当に少なくて、遠くの実家より近くの義実家という状態で、すっかり義実家に馴染んで暮らしてきた。
関西人はとかく忙しく歩き、エスカレーターもじっと乗っていないのは有名な話。そんな関西人の私にとって、北海道人のおおらかさは心安らぐものがあり、住み心地は最高だと思っている。義実家の義妹とは本当の姉妹のように仲良くさせて貰っている。
北海道は冬の自然災害と常に隣り合わせなので、北海道人は諦めることを知っている。自然を相手に敵うわけがないから、吹雪の時はひたすら家の中で通り過ぎるのを待ち、何日も雪の続く日には皆が雪と対峙しなければならない。余計なことは考えず黙々と雪かきをする。道路が通れなくなったり、玄関から出られなくなったら大変なので、早めに、こまめに雪かきをする。何も考えない。ひたすら、毎日雪かきをする。いつかは晴れるだろうと、黙々と雪かきをする。
母は勿論、雪かきはしないのだが、先の冬、滑り止め付きの冬靴を買うのを拒み続けた。滑りづらい靴底のついた冬靴は生活には必須だったが、おしゃれな母は自分のお気に入りの靴しか履かないと言う、上手に歩くから大丈夫だと言う。いやいや、そんなに簡単ではないよと私は思ったが、母は頑固だ。怒らせては元も子もないので、宥めすかして、ケアマネの助言も貰って、母が冬靴に納得するのに3ヶ月かかった。そう言えば、乳癌の受診を説得するのにも3ヶ月かかったと思い出した。
結局、百貨店に買い物に行こうと誘うと、疲れるから行きたくないと言い出す始末、私ひとりで出向いて買い求めた。
年がら年中、夏靴で歩き、自転車も乗れる生活は快適だろう。そんな所からやって来た母と、何十年のうちに数えるほどしか会えずにいた娘だものお互い疲弊するのは当然だ。


実の親子だからこその、逃げ場のない息苦しさ。 読ませていただき、思わず深く頷いてしまいました。 私も88歳の母をサポートしており、日々のちょっとしたやり取りで途方に暮れることがあるので、そのお疲れ、骨身にしみて分かります。 冬靴ひとつに3ヶ月…。あの手この手で宥めすかす徒労感たるや…
ご丁寧にありがとうございます。 一つ一つの心のこもったお言葉が身に染み渡り、心から感謝申し上げます。 親との問題は経験しないとわからないことが多いものですよね。 hiroさまもご無理なさらずに、ご自分を1番大切になさってくださることを祈っております。