Blue sinks in Red(2)
◇◇特殊部隊所属兄貴(超格好良い)とアンケ1位だったお家騒動に巻き込まれアーチャー第二弾です。◇◇ワカメに夢見ててすいません。そして雁夜おじさんとランスにも夢見すぎですいません。◇◇追記※3/30 13:00 槍弓成分があまりにも足りなかったのでちょこっと本文付け足しました。先に読んでくださった方、申し訳ございません!◇◇
2014年10月15日ちょっとだけ改訂
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「まだ見つからないのか? ったく、さっさと始末しちゃえよ、いいか、失敗は許さないからなッ」
イライラと爪を噛みながら、通話を切る。
何が世界で一番優秀な暗殺集団だよ、あんな何の力もない若造一人殺せなくて。
「……兄さま? お電話、終わったの?」
そっと、伺うように聞いて来た義妹の姿に、間桐慎二は途端に笑顔になる。
「ああ桜、終わったよ。どうしたんだい桜、ホラ、こっちへおいで」
にこ、と桜は微笑むと、パタパタと小さな足音を立てて慎二に走り寄る。
その華奢な身体を引き寄せ、慎二は膝の上に抱き寄せた。
「今日は体調はどうだい? ちゃんとお医者さまの言いつけを守って、いい子にしてた?」
こくん、と桜は頷くと、慎二にだけ見せる無邪気な笑顔でちゃんと苦いお薬も飲んだよ、と言う。
(ああ、僕の桜は今日もなんて可愛いんだろう! アイツにやるのは本当に惜しいけど、でもこれも桜の幸せのためだからね)
「で、桜は、僕の友達の衛宮士郎の事は気に入ったかい?」
うん、と桜はにこにこしながら大きく頷く。
「とっても。士郎って優しいね、私、大好き!」
引っ込み事案の彼女がここまで懐くのだから、やはり士郎は自分が見込んだことはある、と慎二は悦に入る。
「桜が大人になったら、士郎のお嫁さんになるってのはどうだろう。士郎はね、ああ見えてとっても良いお家のお坊ちゃんなんだよ」
「そうなの?」
「ああ。アインツベルンは桜も知ってるだろう、ほら、桜と同じ年のイリヤという女の子とこの間のパーティーで逢っただろ?」
「うん。イリヤちゃん、とっても可愛かったね」
「そうだね」
でも僕の桜の方が数十倍、いや数百倍可愛かったけどね! そう心の中だけで叫び、慎二は優しく桜の髪を撫でる。
「士郎は、そのアインツベルンの御曹司なんだ。順当に行けば、数年後には彼が世界有数の財閥の頭首になる。おまえの旦那さまとしては、まあまあってとこだ」
「でも、士郎はお兄様が居るって言ってたけど……」
普通は長男が継ぐものではないだろうか。
「また余計なことを……腹違いの愛人の子にまで優しくしてンのかよアイツは」
お人よしなんだから、と慎二は吐き捨てる。
「兄さま? こわい、かお……してる」
「あ、ああごめんよ桜。大丈夫、桜が成人するまであと8年。兄さんが絶対に良い相手を選んであげるからね」
「はい、兄さま」
「――相変わらずだな、慎二」
いつの間にそこに居たんだろうか。そう小さく笑われて、フン、とその影のように佇む異様な風体の男を見る。
「オマエがそんなに桜を可愛がるとは、想定外だ」
「雁夜おじさんじゃあるまいし、って? やあおじさん、元気? アレはどうしたの、おじさんの忠犬の、なんてったっけ、ランス?」
元ストーカーの、と慎二がバカにしたように笑うと、雁夜はほんの少し引きつって歪んでしまった眉を上げてみせる。
「何を、たくらんでいる? 間桐の闇の部分には関わるなとあれほど」
「おじさんみたいに、報復でそんな身体にされかねいから?」
雁夜の半身は殆どが作り物だ。いかな技術が進んだとはいえ、まがいものの身体では歩行も困難だ。けれども雁夜はそれを闇に在るものの当然の結果であると受け止めていた。
「おまえは間桐の正統な後継者だ、光の下だけを歩け」
まあ、それもいいんだけど、と慎二は桜が去って行った扉を見詰める。
雁夜の言う通りに、まさか自分があれほどあの義妹に執着するとは思わなかった。ただうっとおしくて邪魔だっただけなのに。
桜の、小さな手を思い出す。
彼女だけが、慎二に、希望(ひかり)をくれた。
絶望の淵に追いやられていたバカな義兄を――あの小さな身体が、救ってくれたのだ。
あの時の後遺症で、未だ身体は本調子ではない。あんなにも、小さくて、弱く見えるのに。彼女は誰よりも強く、美しい。
「おじいさまから、桜を守れる手段は、いくつあってもいいだろう?」
アインツベルンの頭首になる男の想い人となれば、いかなあの老人でも、おいそれと桜に手は出せまい。それに、あの気に食わない男よりも友人の士郎がトップになったほうが、色々、便利だし、と慎二は嘯く。
(あいつは、ダメだ。あんなのがアインツベルンのトップになったら……僕の計画全てが台無しになってしまう。遠坂の娘だって、あいつに夢中だし。あんな雑種、どこがいいかわらかないけど)
あの男を排除して、傷心の遠坂の娘を手に入れる。アインツベルン、遠坂、間桐の三家が婚姻で結びつけば、より強固な王国が築けるのだ。
「だから、邪魔しないでよね。まあ、いざとなったらおじさんのあの犬の手を借りるかもしれないけど――いいよね? ね、雁夜おじさん」
かつて死神と恐れられ、幾多の命を冷酷に奪った男は、可愛い甥のおねだりに、否とは言えなかった。
「まず足を確保した方がいいな。おいあんた――アーチャー、金はあるって言ったよな。今いくら出せる?」
まずは徒歩で移動し、途中の路上で若い男と中年の男に交渉して服を取り替えて貰う――アーチャーもランサーも一見シンプルだがとても高価な服を着ていたのでそれは簡単に行えた。今はワゴンセールで買ったようなダサくて目立たない服だ。二人とも帽子を目深に被り、目立つ髪を隠せば遠くからの視認ではそうそう同一人物だとはばれないだろう。サングラスは逆に目立つので、黒いフレームの眼鏡をアーチャーにかけさせる。
そうしてなるべく店頭や路上の監視カメラに映らないようにとアーチャーに忠告し、ランサーはうさんくさげな中古専門店に向かった。キャッシュで支払いさえすれば足の付かないまっさらの車が手に入る。
「いくらでも、望むだけ」
アーチャーはそう言って、ランサーにキャッシュカードとクレジットカードを差し出す。
「………」
ハア、と大きく溜息を付くと、ランサーはそれをアーチャーに叩き返す。
「アホかっ、てめェには追われてるって自覚はあんのかよッ。どこのバカが足が一番付くカードで」
アーチャーの相手がどんな組織かわからないが、一番最悪な事を想定しておいたほうがいいだろう。つまりは、全ての情報を手に入れられる立場に在る、と。
逃げ回るアーチャーを的確に追って来れるということは、それなりの組織力はあるのだろう。
「けれど現金は円でしかないし、それではダメだろう?」
「――なんでドルに替えとかねェんだよ」
「いや、まさか、この国に来た途端に襲われるとは思ってもいなかったのでつい」
「はあ?」
「いきなり呼び出されて取る物も取りあえずこの国に来たんだ。とんぼ返りのつもりだったから特にドルにも替えずに、たいていカードで間に合うし。それが、ゲートを降りた時にこう、両脇を黒服の男たちに抱えられて拉致されそうになってね。身一つで逃げ出すのが精一杯だったのだよ。その後もあのワンボックスカーで襲って来たような輩が後から後から出てきて、ホテルを何度も移る羽目になった」
「え……っと、アーチャー? オマエ、狙われてるのに普通にホテルに泊まったわけ? そのカードで?」
まさかな、そんな事はしねェよな、と期待を込めて問うと、アーチャーはうむ、と頷く。
「なるべく目立たないようにしたんだが」
と、困ったように苦笑する。
「君はすごいな、私も変装はしたつもりだったんだが、こんな風にガラリと変わることは出来なかった」
「へー……」
泊まったんだ、普通に。
その目立つ頭髪を隠そうともしないで、何が変装だ。
色々言いたいことはあったが、ランサーは溜息と共にそれを飲み込んだ。
だから日本人は嫌なんだ。
そう、改めて思う。
危機管理って言葉を知っているか? いや銃も持ったこともない人種に言っても仕方がない。
きっと想像した事もないのだろう。監視カメラの映像やカードの使用状況がリアルタイムに監視されていることなんて。
映画やドラマの中だけのフィクションだとでも思っているのだろう。
「アーチャー、これからは俺の指示に従ってもらう。いいな?」
「む。それはかまわないが、私は今でもきちんと君に従っているではないか。服なら店で買えば良いのに、と主張したいのをグッと堪えて」
「堪えてねーだろ。さんざごねたくせに」
「……だってこの服、匂うぞ」
ばこ、とランサーが思わず手が出る。
「てめェのほうがマシだってぇの、俺なんかなあ、おとっときのレザーパンツと交換したのはこの小汚ねェ染みだらけのカーゴだぜ」
それでもアーチャーのほうに比較的綺麗な服を与えてやったというのに。
遠慮なく叩かれてアーチャーは一瞬驚いたようにランサーを見る。その丸くした目が幼くて、ホントはこいつ何歳だ、とランサーは眩暈を覚えた。
「後でいくらでも弁償する……」
「っ、そういう問題じゃあ」
ねえよ、と言い掛けて、大人気なかったとランサーはちょっと反省する。
「まあとりあえず、事情を聞かせろ。どっか入るぞ」
「……ん」
ぐい、とランサーはアーチャーの腰を抱き寄せると、その耳元に軽いキスを落とした。
(………ッ!)
強張るアーチャーに
「ハニー、ンな緊張すんなって。すぐにトロットロの天国にイかせてやるから」
甘く囁く。
「いやあん、お兄さん達ったらぁ、こんな真昼っから見せ付けてくれるじゃない~」
派手な化粧をしたどうみてもゴツイ男が、くねくねとシナを作る。
それにウィンクを投げて、ランサーはアーチャーの顔をぐいと己の胸に押し付けた。
なるべく顔を覚えさせたくないのだとはわかるが、そんな風にきつく抱きしめなくても。
子供の頃ならともかく、こんな風に誰かの体温を近くに感じた事のないアーチャーはうろたえる。その男くさい体臭と混じった煙草の匂いに、くらくらする。
「コイツ、俺が始めての男なんだってよ。だから――わかる、だろ? しばらく邪魔されたくねェ。な? ちょっとくらい暴れっかも知れないけど、同意だからな?」
す、と取り出した丸めた紙幣を受け取り、カウンターの男はいいわよぉ、と頷く。
「一番奥の部屋、使って。隣は空けといてあげる。んふふ、頑張ってねェ」
「ああ、サンキュ」
そのまま腰を抱かれながら、アーチャーは始終俯いて、ふらふらとランサーの促すままに奥へと向かう。
「オマエ、いい演技力。可愛い子猫ちゃんって感じでいいぜ」
耳元に直接囁かれて、うう、と小さく唸る。
誰が子猫ちゃんだ、とわめきたいのをぐっと堪える。
「っと、ココか。ちょっとだけ、我慢しろよ?」
「何――ん、んんんっ!」
部屋に入るなり、突然濃厚なキスを仕掛けられ、アーチャーはパニックに陥りそうになる。
(な、何で、わ、舌なんて入れるなたわけがっ!)
ほとんど初対面の男に口腔内まで蹂躙され、アーチャーは一瞬固まっていたが、ようやく我に返る。
もしかしてこの男は、ゲイで、こういう目的でこのホテルに自分を連れ込んだのだろうか。
だとしたら何としても撃退しなくては。
ふわ、と部屋に置いてある備え付けのコップが浮く。それを男の後頭部に叩きつけようとして――
ガシャン!
一瞬のことだった。
無造作に振るわれたランサーの手がそのコップを払い、狙い澄ましたように部屋の鏡を割る。
「くくっ、そんな顔すんなって。すこうし、静かに黙ってろ? あ、あんあん喘いでくれてもいいけど、それは期待出来ねェだろうしな」
おそらく真っ赤になってしまっているだろう頬をペチ、と軽く叩かれ、アーチャーは驚いてランサーを見返した。
「おいおい、そんな暴れんなよ。んな顔すんなって、俺に任せとけよ。すげえイイ思いさせてやるからよ……ハハっ、可愛いぜ、そう、そうして足を開いてみろよ」
「な……っ」
突然大きな声であられもないことを言い出すランサーに驚くが、しっ、と唇の前に指を立てられアーチャーは黙る。
ランサーは部屋のあちこち――主に電源が取れるであろうコンセントの近くや、電話機など――を探ると、いくつかの小さな機械を取り出す。
(盗聴器……?)
「ああ、暴れんなって――おっと、うわ、悪い悪い、そんな、おいおいバカそんなもん投げんなって」
ランサーはいかにも痴話げんかしていますよ、といった台詞を言いながら、その機械の何かを弄った。
「――よし、後は出る時に戻しておけば、単に調子が悪かったと思ってもらえるな」
「………すごいな。もしかしてあの鏡を割ったのも」
「まあこういうホテルには盗撮目当てのカメラが仕掛けてあるモンだしな。念のため。ちなみにこの盗聴器もそういった裏用のモン。ちょっとだけならセックスの演技しながら話すってのもアリだけど、アンタには無理そうだったからな」
「だからって、いきなり」
「は、バージンじゃあるまいし、キスくれェでガタガタ言うなよ」
ランサーの余りのいいように、アーチャーはぐっと黙ってしまう。
その真っ赤に染まった顔と、睨みつける目に、ランサーは改めてうろたえる。
「まー、その、そうだよな。アンタ日本人だし。挨拶で気軽にキスとかする国民性じゃなかったな。悪かったよ」
あやすように言うと、こくり、とアーチャーは頷く。
なんだよ俺は、護衛じゃなくて、子守までしなくちゃならねェのかよ、と、ランサーは天を仰ぎたくなった。
Comments
- 水菓子January 16, 2016