引きが偏ったマスターのカルデアの話・前編
此方は以前行った『フォロワーさんが気付いたら100名越えててその時にやり損ねた記念企画』でアンケートをとり一位となった『クー・フーリン(術)でFGO空間、71票』のお話です。選択肢4つに対し175票を頂きました、次点がギルガメッシュ(術)でFGO空間の62票というキャスター優勢な結果だった事に笑ってしまいましたが…1話に収まり切らなかったです、ごめんなさい。後編は次週に予定しております。
更新に関して何ですが、シリーズ2本は月1更新が濃厚です。単発ネタが色々と出てくるのと、シリーズの方は書きたかった箇所があらかた書けているので。
二次創作だから何でも有りだよね、と寛大なお気持ちでお読み下さい。公式と食い違いがあっても二次創作だもんね…と流して下さいお願いします。
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自分じゃそんなに運が良いとは思っちゃ居なかったんだが、槍持ってる俺の不運っぷりを見ているとマシなんだろうなと思えるようになってきたのは特異点も三つ目辺りになった頃だろうか?だってなぁ…冬木での仮契約、からの召喚されて本契約までの流れは悪くなかったんだがその後が散々だった。第一特異点において最も多かった敵は騎兵であり、魔術師にとっちゃ最も相性の悪い相手で…自然、レイシフト要員から外される事となった。まぁ此れは俺だけでなく、魔術師クラスの者は全員だったので納得もいったし…マスターは最初に会ったサーヴァント(盾の嬢ちゃんは除く)として俺の事を重宝してくれていたのでそこまで不満があったわけでもない。
暗殺者がたくさん出る様な戦場があったらキャスターのクー・フーリンに嫌って程戦ってもらうからね、そう言って渡される種火を消費して大人しくレベルとやらを上げる作業の日々。戦闘に参加はできないが戦況に関する相談、戦術指南、簡単な魔術の手解きにはじまり戦闘に参加しなくても戦場に立つ者としての最低限の心構え等々やる事はあったし、第一特異点を越えてからは宣言通りにいろんな戦場に駆り出されたので概ね満足な毎日を送っている。
さて、ここで問題となったのがマスターの引きの偏りだった。最初はそう目立たなかったんだが…何故かマスターは魔術師クラスのサーヴァントを喚べなかった。これはまぁ、正確に言えばまっとうな魔術師を、という話で俺の様に魔術使いつつ殴るとか、そういった肉弾派とか魔術師というには首を傾げてしまう魔術師クラスの奴しか召喚されなかったのである。数は少ないが居ないわけじゃないなら戦術で乗り切れと教育した甲斐もあってマスターは知略でもって何とかしていったのだから褒めるしかねぇだろ?弟子を持つってのはこんな気持ちなんかねぇ…そして何処か引きが悪いクラスがあれば、引きが良すぎるクラスがあるのも想像はできたわけで。
マスターは弓兵に関しては異常な引きの良さを見せた、一部を覗き。初っ端からあの英雄王を召喚したと思えば女狩人を、女神をオマケにつけた熊を、魔人と呼ばれた奴を筆頭に弓兵クラスに分類される者達を片っ端から召喚していったのである。これには俺もドクターも目を丸めちゃいたが…マスター自身は別に弓を触った事も無いって言うんだから何故こんなにも偏ったのかが謎だったんだが、戦力が増えるという意味で悪い話でなは無かった。戦力にはなるが性格その他に難がある面子、それをコミュニケーション能力だけで捌ききるマスターって実は凄いんじゃないのかとも思い始めた。
このカルデアに召喚された俺達に一様に課せられた枷、マスター達はレベルとか再臨とか言っていたが…要は俺達英霊の能力を抑えた状態で召喚し、召喚後に魔力と必要素材を持って元々の能力に近付けていくという面倒な方法。これもドクターから話を聞けば面倒ではあるが必要性は理解できた、召喚される英霊が必ずしも呼び出した魔術師に対して友好的とは限らないし、強力すぎると抑止力とかの関係で召喚するのも一苦労だとか。狂戦士の奴等を見れば召喚早々にマスターである筈の奴を攻撃なんて騒ぎが無いとは言えない…特に一見会話が成立しているように見える狂戦士は曲者だ。
マスターを己が愛した男の生まれ変わりだと信じ、特異点から着いてくるという暴挙をかました清姫。もしアイツが普通にマスター以外の奴に召喚されたとして、自分を召喚した奴が『嘘』を吐けばどうなるかなんて考えるまでもない。クー・フーリンも裏切りやらを忌避しちゃいるが、それでもマスターであれば従うと決めているような奴等ばかりとは限らない。現代の魔術師達は裏切りや計略が当たり前らしいというのだから、清廉潔白な奴が呼ばれちまえば衝突は避けられない。最悪、自らを呼び出した召喚者を殺して契約を解除するサーヴァントがでるかもしれない、と危惧されていたらしい。
そんな危惧するなら魔術師達にちゃんと言っておけば良いんじゃないかとも思ったが、言われたくらいでどうにかなるようならそもそも召喚システムの方に手を加えていないだろう。神秘と隣り合わせの時代に生きた俺には理解できなかったが、この時代じゃ神秘に触れる者は少ないからか選民意識やらが強すぎるとぼやくドクターがある意味で怪我も無く無事だったマスターが嬢ちゃんであって良かったと苦笑いと共に零していた。
特異点に現れるサーヴァント達のクラスにもよるが、戦闘力の高い者を優先して枷を外していくというマスターの方針は特に間違ってはいない。というか偏った魔術師と弓兵以外は召喚された順から枷を外していくという方法で何の問題も無かった、魔術師は数が少ないのでさっさと育てきり余った種火を他クラスへ回す程だったしな。そう、問題は溢れかえった弓兵達だった…戦闘力でと言っても戦闘力が高い者が何人もいれば順番を決めようがなかなか終わらない。先に喚んだ奴等の枷外しが終わっていないのに新しい弓兵が召喚されていくのだからマスターが頭を抱えるのも仕方ないだろう。
戦闘力の関係上、枷外しを後回しにされた弓兵達は二種類に分かれた。小さい方の英雄王は大人の僕が居るなら自分はちょっと遊んでますとふらふら好きにしているし、そもそも自分は戦う柄じゃないと肩を竦める女神や、古代の王はのんびりとだらけている。他の弓兵達は戦闘以外でも手が足りてない箇所はあるだろうとカルデアスタッフの手が回らぬ場所に各々散ってカルデア運営へ助力している、他クラスの調理が出来る者達と組んで食事の用意に回る者、力ならあるからと爆発で破損した個所を片付けたり修復したりする者。
何もしないというのは居た堪れない、気が滅入る、鬱屈する、小さな事でもマスターの役に立つ事で己が存在意義を探しているような状況になっている弓兵達に対しては何とも言えない気持ちになるというか…自分があんな状況に置かれたら臍曲げちまいそうだと苦笑い。聞けば全員、そんな事は無いとか否定しそうだが何だかんだとマスターは好かれているんだと実感する。開き直って何もしないでいる数名の精神が強いというべきなのか、今日まで大きな騒ぎになってはいないので変に突く気は無い。
なんで俺が今さらな事を考えているかというと、今度こそ魔術師と叫んで召喚の儀に取り組むマスターに同席したからとしか言えない。魔力の本流が治まった後、其処に居たのは真っ赤な外套が印象的な弓兵。弓兵ばかりを引きまくるマスターが縁はできただろうに喚べていなかった例外…少しばかり衣装は違うが最初の冬木で見た顔だ、無言で崩れ落ちるマスターの頭を杖で軽く小突く。名乗りを上げかけた赤い弓兵は蹲ったマスターに目を見開き近付こうとしたが杖で突く俺に困惑気味な視線を寄こしてきた、まぁそうなるよな。
「おいマスター、その態度はねぇだろ。」
「すいません…すいません…折角来て下さったのに…」
「いや、その…私で力になれるか解らないが、努力しよう。」
「悪いな赤い弓兵、何でかマスターは魔術師クラスと相性が壊滅でな。万年魔術師クラスの不足でよ、偏り過ぎて戦術にも影響出ちまう状態でな…許してやってくれ。」
「戦術に影響するレベルとなれば、死活問題だな…期待に沿えなくてすまないマスター。だが喚ばれたからには私にできる事をしよう。」
「うぅ…ごめんね、ありがとう。えっと…カルデアだとクラス被っちゃうから名前で呼んでるんだけど、もし名乗りたくなかったらあだ名とかでも可能です。」
「ふむ…私は無名だから名乗っても誰も解からないとは思うが、エミヤという。よろしくな、マスター。それと…キャスターのクー・フーリンで合っているな?」
「おうよ、冬木の記録はある感じか?」
「一応、世話を掛けた分は働こう。」
魔術師不足との言葉に一瞬目を見開き、何処かすまなさそうに目を伏せた仕草に疑問はわいたがすぐに当たり障りない笑顔に切り替わる奴の表情にこっちが目を丸める番となった。冬木以外の記録、槍兵として保持した記録でもこの赤い弓兵…エミヤと名乗った男が笑っている姿など見た覚えがない。失笑やら嘲りを含んだモノであればまぁ無くは無いが…敵対している事が殆どだったので当たり前と言えば当たり前なのだろうが、笑うにしてももっとこう意地悪いようなイメージを勝手に持っていた。
まだ召喚を続けると拳を握るマスターに肩を竦め、カルデアの案内と説明をするからと言えば赤い弓兵は大人しく付いてきた。最初は食堂で説明をと思ったのだが、そういやこいつも弓兵なんだよな…と現状のカルデアの弓兵に対する非常に面倒な状況を思い返すと人目が無い場所で丁寧に説明した方が良い気がしてきたのでマスターに魔術工房用にと開放してもらった部屋へと招く事とした。