light
The Works "同室キャス弓【クーエミライフ】" is tagged "キャス弓" and "腐向け".
同室キャス弓【クーエミライフ】/Novel by カサネ

同室キャス弓【クーエミライフ】

4,083 character(s)8 mins

カルデアで同室になってしまった、できてないキャス弓。
Twitterでの企画「クーエミライフ!」様に参加させていただいたものです。
期間限定で使用していたアカウントにて投稿したものですが、アカウント削除に伴いこちらに再掲します。

1
white
horizontal

「サーヴァントは山程いるのに何故君なんだ……」
「それはお前さんが槍の俺とは嫌だっつーから」
「クー・フーリン以外にも!いるだろう!」
「顔見知りのほうがいいだろっつーマスターの気遣いだろうが。無下にしなさんな」
「ぐうっ……」
 カルデアを通してとは言え多数のサーヴァントが一人のマスターと契約しているのはいい。不思議だし妙であるが、目的が聖杯戦争ではなく人理の修復であるならさもありなん。
 サーヴァントが多すぎて部屋に空きがないため、暫く他のサーヴァントと同室にというのも理解できる。未使用だった部屋の整備に時間がかかるのだろう。新参の私には我慢する他ないし、さして嫌でもない。
 だがその同室の相手が何故クー・フーリンなのか。ランサーではなくキャスターの彼である分いくらかマシだが、それでも『彼』に違いはない。絶対に禄なことにならないだろう。というか割と嫌だ。
「んじゃまぁ寝るとしますか」
 どこで?というのがまず浮かんだ疑問だった。
 キャスターの部屋は端的に言って森だ。サーヴァントに割り当てられた部屋は全て同様の造りであるはずなのに、何故か彼の部屋は森と一体となっている。入り口の外から見た時は普通の、他のサーヴァントと同じ部屋に見えたというのに、一歩中に入った瞬間に景色が変わった。
 左手側にはシンプルなウッドデスクと、作業台だろうか。本にフラスコに試験管、見たこともない草花がところ狭しと拡げられている。備え付けのデスクと素材が全く違う点には目を瞑ろう。そもそも壁も木製になっている。きっと気にしてはいけない。
 右手側にはシャワーブースへと続く扉だ。ただしこれも他の部屋と違って木目調の物に変わっていた。
 そして右手奥、通常であればベッドがあるはずの位置には獣道ができている。幅は狭く一人通れるのがやっとというところだろう。規格外の体格をしたサーヴァントには通れまい。青々とした木々のトンネルの先を覗いても果ては見えなかった。部屋の奥行きからは考えられない広さの空間がこの先に広がっているらしい。
 キャスタークラスは自身の工房を持つようだが、それにしてもここまで改築してもいいのだろうか。同じキャスタークラスでも作家陣の部屋は書斎然としていたし、チラリと見えたメディアの部屋は薄暗くてよく分からなかったが広さはあまりなかったように思う。
「おいアーチャー、どうかしたか?」
「あぁいや……その、私はどこで寝ればいいのかね?」
「向こうにベッドがある。ついて来な」
 くい、と親指で獣道の先を示される。はぐれんなよ、と振り返らずに間延びした声で忠告された。子供か私は。
 キャスターに続いて木々のトンネルの中を進んでいく。入り口からは分からなかったが緩くカーブを描いているらしい。木漏れ日とかすかに聞こえる鳥の鳴き声は、ここがカルデアの一室であることを忘れさせる。だが天からは日の光が射しているのに、トンネルを形成している木々の間にあるのは闇だ。一歩木々の向こうへと進めば飲み込まれてしまいそうなほど暗く、音のない闇がそこにある。
 ――――やめよう。深入りはよくない。
「キャスター……?」
 ふと気付くと前方にいたはずの姿が見えなかった。かといって開けた場所に出たわけでもない。振り返ってみても誰もいないどころか、今しがた通った道が先程までより明らかに狭まっている。おかしい。
「キャスター」
 自分でも分かるぐらい不安げな声音だった。
 はぐれるなと言ったのはこのためか。だったらもっとちゃんと説明をしてほしい。
 無性に腹が立って力の限り叫んだ。
「っ、クー・フーリン!」
「だーから言ったじゃねえか、はぐれるなって」
 急に右手首を掴まれる。視線を上げれば呆れた顔のドルイドがそこにいた。

「ついたぜ」
「これは……」
 トンネルを抜けた先は森と温室を合わせたような空間だった。植物園と呼んだほうが近いのかもしれないが、地面は舗装されておらず自然のままだ。目を凝らせば木々の隙間からガラス天上が見える。建物内に森の中を移動させ水路だけを整備した、と言った所か。ただ、空間の果ては見えなかった。
「ベッドはあそこな」
 キャスターが指し示す先は少し開けており、その一角だけ整備されていた。石畳の上に周囲の木と同じ色合いの木目調のベッドと、簡易的なデスクが置かれている。壁沿いに設えられているので、この奇妙な森にも果てはあるらしい。水路と壁の間は階段状になっており、見たことのない植物の鉢植えがまばらに置かれていた。
「ありがとう……キャスター、いい加減離してくれないか」
「おっとスマン」
 また迷子になられちゃ困る、と掴まれた腕はそのままだった。なんとなく掴まれていた手首を擦りながら訊ねる。
「そういえば君はどこで寝るんだ?」
「あ?お前さんの隣に決まってるだろ」
 決まってる、とは一体。
「隣?」
「おう」
 どう見ても2台ベッドがあるなんてことはない。奥側には壁もある。つまり、だ。
「待て、君も一緒に寝るのか?」
「あん?そりゃそうだろ。ベッドはあれ一つなんだし」
 眼前の男はこともなげに言ってのけた。俯き眉間を押さえる。ひどく頭が痛む。
「…………君は」
「なんだよ」 
「どうして断らなかったんだ」
「どうしてって言われてもなぁ。マスターに頭下げて頼まれちまったし、別に嫌ってわけでもなかったからよ」
「嫌じゃないのか!?私と一緒に寝るのが!?」
「そりゃあまぁ綺麗なネーチャンのほうがありがてぇけどよ。ずっとそうしろってわけでもないし、たかが数日だろ?」
 別に気にするようなことではないとあっけらかんとするその姿に、自分が気にしすぎているだけなのかという心地にさえなる。それなりの体格の男が二人、一人用のベッドで眠るのだから必然的に距離はかなり近くなるどころか最悪密着しなければならないはずだ。それを理解しているのだろうか。だがここで駄々をこねても仕方がない。
「そう……だな……たかが数日だ……」
「だろ?んじゃ寝ようぜ」
 あっさりと向けられた背中を見つめる。吐き出した重く長いため息に、「お前肺活量すげぇな」などと明後日な感想が飛んできた。
 
 あれから1ヶ月近くが経った。微小特異点の発生が重なったり予想外の破損が見つかったりで部屋の整備は遅々として進まず、未だにキャスターの部屋で厄介になっている状態だ。
 それだけの時間が経てば流石に色々と慣れてしまう。やはりベッドは狭いのでどちらかが抱き着く形で寝るのが一番楽だった。何故か二度目の夜以外、毎夜抱きしめられるのは私のほうだったが、部屋の主はあちらなのだからそこは譲歩した。
 ただ、毎朝至近距離で光の御子の顔を拝むというのはどうしても慣れない。鮮やかな、けれど深い青の髪と白皙の肌は早朝の淡い陽射しに照らされ、普段よりも神々しさを増す。端的に言ってあれは心臓に悪い。あまりの美しさに、動かず黙っていればいいのに……と思わずはにいられない。戦闘中のクー・フーリンに見惚れたことは一度や二度ではないし、何をしていても美丈夫に変わりはないが、やはり少し残念になる。実に惜しい。
 それとは別に少し困っている点もある。キャスターがいなければあの獣道を抜けられないことだ。

「なんだ弓兵、なにしてんだ」
 夜半すぎ、キャスターの帰りを待っているとランサーのクー・フーリンがノックもなしに悠然と室内へ足を踏み入れてきた。読んでいたルーン魔術の入門書(キャスターが貸してくれたものだ)から顔をあげずに答えてやる。
「見て分からないかね?本を読んでいる」
「あーはいはいソウデスネ。つーかお前さん、明日早くからレイシフトじゃなかったか?こんな時間まで起きてて大丈夫かよ」
 あと15分もしないうちに件の明日はやってくる。持って行く軽食の準備もあるので早く休みたい気持ちは十二分にあった。
「休みたいのは山々なんだが、キャスターがいないとこの先に行けないだろう?今スカサハ殿の訓練に付き合わされているらしくてね、まだ戻らないんだ」
「は?通行証があれば通れるだろ」
「は?」
 聞き慣れない単語に首を傾げる。
 通行証。通行証とはなんだ。
「見せたほうが早いな。ちょっと退け」
「お、おい」
 手をひらひらさせて位置をずれるよう指示してきたランサーは、乱暴にデスクの引き出しを漁りはじめた。
「あったあった。ほらよ」
 ランサーが持つ黒い麻紐の先には青みがかった透明な石がぶら下がっていた。ペンダント状になっているらしい。小ぶりの石にはルーン文字が刻まれているようだが、どのルーンかまでは判別できなかった。
「オレと若い俺とオルタの俺の分と、あと予備で1個あるんだよ。聞いてねぇか?」
 ほらよ、と落とされた通行証とやらを両手で受け取め、しげしげと眺める。
「それがあれば槍なしの俺と誤認してくれる……んだったかな。まぁ詳しい仕組みは忘れたが、要はそれを持っていればあの森に惑わされずに済むってこった」
 そうかそうか、こんなものがあったのか。彼のほうが戻りの遅いは毎日のようにここで帰りを待ち、毎度「念のためだ」と手を繋がれあの森へと連れて行ってもらっていたな。私のほうが遅いときは使い魔の子達をここで待機させてくれていたな。あの優しさは嘘か。
 正直、毎夜抱きしめられて眠るのも違和感があった。確かにそのほうが楽ではある。楽だがそうしなければ眠るのが難しいというわけではない。それを言えばその度に「まぁいいじゃねぇか。減るモンでもないし」などとのらりくらりと躱された。寝惚けていた、とキスをされたことも項を舐められたことも身体を弄られたこともある。あれも嘘ということでいいな?
 手の中でピシリ、と乾いた音がした。
「あ」
「…………キャスター!!」
 ランサーの制止が耳に届くより先に部屋から飛び出していた。

マスターには悪いが座に還ってもらおうか!

Comments

  • emikof
    May 8, 2022
Potentially sensitive contents will not be featured in the list.
© pixiv
Popular illust tags
Popular novel tags