<主張>東大学園祭の中止 言論封殺「テロ」許されぬ

社説

東京大学の学園祭「五月祭」が安全管理上の理由で中止に。構内にいる学生らに学園祭中止の案内をする学生スタッフ=5月16日午後、東京都文京区の東京大学(読者提供)

言論と学問の自由が白昼堂々侵された深刻な事態である。

東京大の学園祭「五月祭」に爆破予告があり、16日午後に行われる予定だった参政党の神谷宗幣代表の講演会を含む全ての企画が中止された。五月祭のホームページ宛てに、神谷氏を殺害するとのメールも送付されていた。

大学の学園祭は、主張や立場の違いを超えて、さまざまな研究成果を発表しあう場だ。最も尊重すべき言論の自由を、テロに等しい卑劣な手段で奪うことは断じて許されない。

神谷氏の講演会は、16日正午から政治系の学生サークル主催で開かれることになっていた。爆破予告のメールが届いたのは同日午前で、キャンパスの各所に爆弾を仕掛けるなどして、神谷氏の殺害を予告する内容だったという。

同講演会を巡っては、神谷氏を「排外的な差別主義者」と批判する一部学生らが開催に強く反対し、当日も講演会に反対する人々が会場前に座り込んで通路を塞ぐなどの妨害行為を繰り広げていた。

抗議や批判は自由だが、こうした実力行使は暴力的で学問の場にふさわしくないばかりか、「爆破予告」を誘発した可能性もある。言論には言論で対抗できないようでは、学問や社会を論じる資格はない。

想起すべきは、大学紛争真っ盛りだった昭和44年、東大で行われた作家の三島由紀夫と全学共闘会議(全共闘)との討論会だ。全共闘の学生らは、主義主張がまったく異なる三島を招いて互いの主張をぶつけあい、「伝説の討論」と呼ばれた。

60年近くが過ぎたいま、言論空間は、SNSの登場によって過激で刹那的な言説が満ちあふれ、分断が進んでいる。考え方の異なる人々が、一堂に会して論議する場もほとんどない。

講演会の中止後、神谷氏は「意見が違うからといって、有形力の行使のようなことをするのは絶対に許されない」と述べた。選挙などでの政治家の演説への不当な妨害は、これまでも問題になってきたが、事態はますます深刻になっている。

警察が犯人を検挙し、動機や背後関係などを徹底的に解明するのは当然として、いかに言論の自由や学問の自由を守るかは国民的課題である。国会でも真剣な論議の必要がある。

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