『名探偵コナン』毛利蘭が真の意味で“最強ヒロイン”な理由 ベルモットも救った無償の愛
劇場版最新作『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』が大ヒット公開中の『名探偵コナン』シリーズ。そのメインヒロインとして、ファンたちに長年愛されている毛利蘭。そのキャラクター像は、昔ながらの少年マンガに出てくる“守られるヒロイン”とは一線を画しており、コナンたちの窮地を救う空手の達人としても描かれている。しかし蘭の魅力を語るうえで本当に重要なのは、強靭なフィジカルではなく、“もう1つの強さ”なのではないだろうか。 【写真】蘭が少年探偵団に見せる笑顔 蘭というキャラクターが秘めた強さ。それは一言でいえば、他者を包み込むようなやさしさや、無償の愛として描かれる性質だ。 ■「工藤新一NYの事件」 たとえばTVアニメの第286話~第288話「工藤新一NYの事件」は、蘭の人間性を知るうえで欠かせない。この話は探偵として有名になる前の工藤新一が、ニューヨークでとある事件に巻き込まれるというあらすじ。とくに注目すべきは、蘭と黒ずくめの組織の女性幹部・ベルモットとの出会いだ。 事件解決後、新一とタクシーで移動していた蘭はハンカチを風に飛ばされ、廃ビルへと足を踏み入れる。そして非常階段で拳銃を持った通り魔と遭遇し、襲われそうになるのだった。 しかし老朽化していた階段の手すりが崩壊し、通り魔は空中へと放り出される。すると蘭は自分を殺そうとした相手であるにもかかわらず、とっさに階段から腕を伸ばして通り魔の命を救う。 実はこの通り魔はベルモットの変装した姿。激しい人間不信に陥っていた彼女は、何の理由もなしに自分を助けようとした蘭との出会いに衝撃を受ける。そしてこの出来事以降、蘭のことを「エンジェル」「宝物」と呼んで大切にするようになるのだった。いわば蘭のやさしさが、世界に絶望した人の心を浄化したのだ。
待ち合わせに2時間遅刻した新一に蘭がかけた言葉
■劇場版『名探偵コナン 迷宮の十字路』 また蘭の愛とやさしさは、もっと日常的な場面にも表れている。それは劇場版『名探偵コナン 迷宮の十字路』で描かれた回想シーンでのこと。 コナンは新一だった頃、蘭と会う約束を忘れていて、待ち合わせに2時間遅刻していったことがあった。そこで当然、新一は平謝りを繰り広げたが、蘭は怒るような素振りもなく、「よかった、新一の身に何か起こったんじゃないかって心配してたんだ」と笑顔を見せた。 蘭の性格からして、多少の遅刻であれば怒り出しそうなところだが、あまりに長い時間だったため真っ先に心配する気持ちが湧いてきたのだろう。自分が待たされたことへの不満よりも、相手の無事を気にかける……という態度は、思いやりに満ちている。たんなる好きな人への一途な愛情ではなく、海のような心の広さと慈愛の精神を感じさせるエピソードだ。 ■「結婚前夜の密室事件」 もっとさりげないやさしさを見せたエピソードとしては、アニメ第141話〜第142話「結婚前夜の密室事件」が挙げられるだろう。この話では、蘭と遠山和葉が仲良くなる前の出来事が描かれている。 一緒に東京の服屋でショッピングする2人だったが、なぜか機嫌が悪そうな和葉。蘭が気になって理由を尋ねると、蘭の服が服部平次の服と似ていたため、示し合わせてペアルックにしているのではないか……と疑っていたのだった。 蘭からすればとんだ言いがかりだったはずだが、ここで驚くべき行動に出る。和葉の嫉妬をからかったり、誤解を正そうと説明したりすることなく、すぐさま服を脱ぎ始めたのだ。そして買ったばかりの服に着替えると、「ほら、これでもうお揃いじゃないでしょ?」と和葉に笑いかけるのだった。 しかもこの時2人がいたのは、人通りの多い道路に停められた車のなか。羞恥心よりも思いやりを優先させる蘭の行動に、和葉も思わず「アンタ、ええ子やなぁ……」と目を丸くしていた。 さらに別の角度からいうと、蘭が新一をひたすら待ち続けていることも、人間としての強さに関係しているのかもしれない。自分に理由を明かさないまま姿を消した相手に対して、普通なら不安や怒りが募ってもおかしくないはず。寂しさを覚えつつも新一のことを心から信じ、その無事を祈り続ける蘭の姿は、ちょっとした迫力すら感じさせる。 『名探偵コナン』はミステリー作品である都合上、悲惨な事件が絶え間なく描かれていく。そんな同作において、すべてを愛し、受け入れる蘭という女性がヒロインに据えられていることには、特別な意味があるのではないだろうか。 なお、約30年にわたって蘭に生命を吹き込んできた声優の山崎和佳奈さんは、先日ファンたちに惜しまれつつ亡くなった。いまだ鮮明に記憶に刻まれているその活躍を心から偲びつつ、あらためて哀悼の意を表したい。
キットゥン希美