事実と解釈の違いを整理して、対人関係を気楽に乗り切る考え方
「なんで話が通じないの!?」が消える魔法
「え、なんでそこで機嫌悪くなるの?」
「いやいや、そういう意味で言ったんじゃないんだけど…」
仕事でもプライベートでも、こういう「すれ違い」ってめちゃくちゃありますよね。お互い日本語を喋っているはずなのに、なぜか話が噛み合わず、気づけば気まずい空気に……。
ぶっちゃけ、すごく疲れるよね。
俺も昔はこれでよく失敗してた。そんなもどかしさを解消してくれたのが、戸田山和久さんの『科学的思考のレッスン』という本を読んでから。
この「謎のすれ違い」の正体の輪郭が見えてきた。
結論から言うと、原因は私たちの語彙力でも相手の性格でもなかった。
頭の中で
「事実(Fact)」と「理論(Theory / 個人の解釈)」
がごちゃ混ぜになっていること
が原因ってことを教えられた。
蛇足だけど、この書籍は、2011年出版。初めて読んだのは、2012年。そこの頃本当の意味で病んでいる時期で、人間関係も含めて大きく変わったり、思い出したくないつらい時期でもあった。別のところでも書いたんだけども、本気で生きることに向き合ったのがこの頃。自分自身を全面的にアップデートせざるを得ない状況で出会い、そして救われた本のひとつとして、今もまだ何度も読み返している。
「それ、あなたの感想ですよね?」が起きる、よくある職場の一コマ
たとえば、職場でこんなやり取り。
若手社員が、上司に商談の報告をしています。
若手:「部長、今日のA社へのプレゼンですが、完全に脈なしでした。あの案件は一旦保留にした方がいいと思います」
部長:「えっ、なんで? 先方の求めてる条件はクリアしてたはずだけど」 若手:「先方の担当者、ずっと渋い顔してて、細かいデータばかりネチネチ聞いてきたんです。絶対ウチの提案、気に入らないんですよ!」
部長:「……いや、それって君の感想だよね? 先方は明確に『ノー』って言ったの?」
さて、この若手社員の報告、何がマズかったのか?
冷静に分解してみると、
ここで起きている「事実(誰が見ても否定できないこと)」は、以下の2つだけです。
先方の担当者が渋い顔をしていた(ように見えた)
細かいデータについて質問された
しかし、若手社員はこれを自分の勝手な「解釈(理論)」で分厚くコーティングしてしまいました。
渋い顔をした = 私の提案が気に入らないから
細かいデータを聞かれた = アラ探しをして断ろうとしているから
結果 = この案件は脈なし
もしここで、若手社員が「事実」と「解釈」をきっちり分けて報告できていたら、どうなっていたでしょう?
「先方から細かいデータについて3点質問がありました(=事実)。
懸念点をクリアにしようとしているように見えたので、追加資料を出せば前向きに検討してもらえると考えています(=自分の解釈)」
これなら、上司も「よし、じゃあその追加資料を急いで作ろう」と建設的な議論に進めそうですね。
「事実」と「解釈」をごちゃ混ぜにして話すと、相手からすればツッコミどころ満載になり、話が全く前に進まなくなってしまう。この違いをしっかりと整理しておくことって、普段のコミュニケーションにも濃淡あれど、かなりの頻度で出てきます。そこまで深く考えなくてもいい内容だから、ある程度でスルーされてるってのが現実ですね。
こじれやすい「地雷テーマ」ほど、この仕分けが効く
この「事実と解釈を分ける」という考え方。
仕事の報告だけじゃなく、日常のあらゆる場面でめちゃくちゃ強力な武器になります。
特に効果を発揮するのが、政治や宗教、あるいは「推し活」のスタンスなど、ちょっとした言葉の綾で大炎上しそうなデリケートな話題を話す時。
こういう話題って、みんな自分の「解釈(信条や価値観)」に強い熱量を持っていますよね。だからこそ、自分の解釈をあたかも「絶対的な事実」であるかのように相手にぶつけてしまいがちで、結果的に激しい衝突を生んでしまいます。その手のSNS界隈にいる人なら日常茶飯事ですよね。
でも、「ここまではデータで示されている事実だよね」「ここから先は、その事実を踏まえた上での私の意見なんだけど」と、自分の中で明確に線を引いてから言葉を発するようにすると、空気はガラッと変わります。
相手も「なるほど、ベースとなる事実は共有できているね。でも、そこからの解釈は自分と違うんだな」と、冷静に受け止めやすくなる可能性が生まれる。相手を論破するためではなく、無駄な衝突を避けて「精密なやり取り」をするために、この切り分けは最高のクッションになります。
重要なのは、それを「相手に求めない」事です。
それそのものが火種になっちゃうからね。
「事実とは?!」「解釈とは?!」ってね。
そういう時はそっと離れましょう。埒が明かないし時間の無駄です。
SNSならブロックできるけど…職場の「すぐ戦闘モードになる人」の対処法
ここまで読んで、「自分が気をつけても、相手が『事実と解釈』をごちゃ混ぜにして絡んできたらどうするの?」と思った方もいるかもしれません。
SNSなら即ブロックで終了ですが、職場の同僚や上司、取引先となるとそうはいきませんよね。感情的になって「だから君はいつもダメなんだ!」と、自分の「解釈(しかも悪意マシマシ)」を絶対的な事実のようにぶつけてくる、すぐケンカ腰になる人。悲しいですが、現実には存在します。
そんな時こそ、この「事実と解釈の切り分け」が、あなたの心を守る最強の「防御の盾」になると思っています。
相手が感情的な言葉のボールを投げてきたら、まともに胸で受け止めず、頭の中のフィルターでサッと「事実」だけを抜き取ってみる。
例えば、職場でこんな風に怒鳴られたとします。
相手:「この資料、全然使えないじゃないか! 君はいつも適当に仕事をしてる!」
ここで、「適当になんてやってません!」と相手の「解釈」に対して反論してしまうと、泥沼の始まり。「こうだ!」「そうじゃない!」「だからこうだ!」無限ループ……。
そうではなく、相手の言葉から「事実」だけを抜き出して、そこだけに対応するというのはどうでしょう。
あなた:「申し訳ありません。具体的に、どの部分が間違っていたでしょうか?」
相手:「……3ページ目の売上予測のグラフ! 数字が古いままだ!」
あなた:「承知いたしました。3ページ目のグラフの数字が更新されていなかった(事実)、ということですね。すぐに最新のデータに修正いたします」
相手の「君はいつも適当だ(解釈)」という感情的な攻撃は華麗にスルーして、「3ページ目にミスがあった(事実)」という部分だけを拾い上げて対応しましたね。いつもこう上手くいくとはいかないかもですが、アプローチとして採用するとすこしは風通しがよくなるかもしれません。
ケンカ腰の相手というのは、自分の「解釈(=怒りや不満)」にあなたが感情的に反発してくることを、無意識に期待しています。だからこそ、こちらが淡々と「事実」だけを切り分けて会話を返すと、相手は肩透かしを食らい、それ以上攻撃するエネルギーを失うことを期待しましょう。そういうタイプって、他の「獲物」を見つければそこに寄生しがち。こちらが常に「事実」と「解釈」を分けてくる相手とみなされれば、徐々にそれは減ってくる可能性を生み出します。病的な相手の場合はって?それはまた別の問題ですね。またいずれ。
相手を変えようとしない。ただ「事実」だけを抜き取る
相手の思考回路を整理してあげる必要はありません。他人の性格を変えるのは不可能です。
私たちがやるべきなのは、飛んできた言葉の塊から「事実の骨」だけを抜き取り、「解釈の肉(感情・嫌味)」はゴミ箱にポイッと捨てること。
自分が上手に伝えるためだけでなく、理不尽なストレスから自分自身を守るための防具としても、「科学的思考」は最高のツールになります。
ただここでお節介ながらもひとつ。
身近な存在、例えば家族、友達、大事な人。こういう相手には、多少配慮する価値があると思っています。感情的な部分もまた、その人が自分のことを信頼してくれている証。自分の中で整理しながらも、そこを配慮しながら、結果円満になることを目指して言葉を選ぶのも大切だと思います。
明日からできる、超シンプルな思考のレッスン
「科学的思考」なんて言うと難しそうに聞こえますが、やることは本当にシンプル。
誰かに何かを伝える前に、頭の中で1秒だけストップして、こう自問自答してみてください。
「今から私が言おうとしていることって、カメラで録画できる『事実』かな? それとも私の頭の中にある『解釈』かな?」
これを意識するだけで、あなたの言葉は驚くほど相手に伝わりやすくなり、人間関係の無駄なストレスが激減します。
一応補足しておくと、「科学的思考のレッスン」では、「事実」と「理論」の文脈で語られていきます。
「理論」は「常に仮説」であることが味噌なんですよね。
「理論=解釈」と考えると、またそれもひとつ「寛容な」態度で対応できるようになるかもです。
「影響力の武器」と並んで、対人関係の考え方を多く学んだ一冊です。
明日、誰かと対話するとき、ぜひこの「事実と解釈の仕分け作業」を意識してみるとおもしろいかもしれません。
最後までご覧いただきありがとうございました。



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