light
The Works "私を誑かしてどうするつもり?他" is tagged "omcr".
私を誑かしてどうするつもり?他/Novel by 瀬谷 莫(せや な)

私を誑かしてどうするつもり?他

4,913 character(s)9 mins

今回は恐山が多めになっております。
今まで動かなかった不動の山。
かと言って別に次に動くわけではないのですが。

前回の企画ものから元に戻って、って感じになりますが
これは元々、前回UPより先に作っていたもので
ゲームショウの永田さんの部分がパンチ強めだったので前回が永田さん要素が薄めになりました。

最近、寒くなって来たからか
やや喉がイガイガしております。
皆様も風邪などには気を付けて下さいませませ。

1
white
horizontal



ゲームのバグを探すのもだいぶ進んだ。
しかし、恐山のパートだけイベントが始まらない。

「変だなぁ、恐山だけ…」
「えっ、失礼じゃないですか?」

山口さんに知らせに行こうと考えながら歩いていたら声に出ていて、本人に聞かれていた。
あ、や、そうじゃなくて、と説明して

「なんだ、突然の暴言かと」

気にもしてなさそうに言う。

「…なんでケロリとしてるの…暴言だったら嫌でしょ…」
「嫌ですけど。まぁ、所詮他人ですからね」

あんまり気にしない。と言われて「へぇ」なんて返事をする。そこそこ嫌だけどな、暴言。
そんなことを思いながら、恐山と別れて山口さんを探していると加藤さんを見つける

「……!!…っ…!」
「ん?どうしたの?」
「何か加藤さんに暴言を、と思いましたが思い浮かばなかったです…」

えぇ?なにそれ、と楽しそうに笑うのでことの経緯を説明してから

「加藤さんは、何か褒めたくなりますね。」
「そうかなぁ、いいよ。いつも褒めてくれて」

別にそうとも思ってなさそうなことを口にして、へへへっ、とイタズラっぽく笑う。

「じゃあ…可愛いです」

褒めてみようと思って素直に伝えたら驚いた顔して首まで真っ赤にしていた。


そんなこと言われると思ってなくて。
(あっ、あー…なるほど…ねぇ…)
(加藤さん、可愛いです)
(いや、あの、嬉しいけどさ)
(加藤さん!)
(ストップ!たんま!ほんとに!もう!)


少し冷えるようになって来た季節の変わり目
出勤中、少し先に見慣れた大きな背中が見える

「おはよう、ヤスミ…ノ…」

後ろから追いかけて顔を上げて見遣れば
目の下に酷いクマを連れて歩いていた。

「どうしたの…?何か、…あった…?」

聞いていいのか、泣いていたのかと心配して途切れ途切れに尋ねると

「最近上がった記事、見ました?同僚が学生服着て…はれん」

言ってる途中だが脇腹を殴られた。

「仕事!し・ご・と!!」

私が好んで制服を着た訳じゃない!と強く主張すると

「いや、分かってますけど。なんか、でも、…うーん。ほら」

歯切れが悪く説明をする。
なにが不服なの?とやや怒り気味に問うと

「学生服だから“良い”、って誰かに思われそうで。自然体のままが良いのに。良くない記事だったな、って。」

伝わりますかね?と言われて多分、頭上にハテナが浮かんだ

「ごめん、もう少し…わかりやすく」
「えっと、だから、貴方の良さって“そのまま”で良いのに、コスプレ萌えのおじさんとかにあの記事見られて“おっ、この子、ええやん”とか思われたら嫌だなって」

真剣に腕組んでウンウン言うヤスミノを見上げたまま私は恐る恐る尋ねる。

「……そんなこと、クマが出来るほど考えたの?」
「…………。」


え?嫌じゃないですか?
(いや、嫌だけど…寝なよ)
(だって、気持ち悪いじゃないですか)
(それは私が決めるよ)


次の企画の話し合いの為、会議室ではなく丸いテーブルで話し合う。
会議室は他のメンバーが使っていた為
とは言っても、もう他の面々はネタ出しをしてる段階で、

「で、公正を期すため、2人には、まぁ、嫌なんだけど」

仕方なく、と付け加えて原宿が伝える。
いいムードぶち壊し王のカップル役として、マンスーンと私が選ばれた。

「いいの?ぼくで」

他にもやりたいって人居たでしょ。とマンスーンが揶揄うように笑う

「良かないけどモデルさんに迷惑かけるのも悪いし」
「私はマンスーンさんと一緒で良かったです」

原宿がもにょもにょ言っている横で
宜しくねー、なんて気軽に挨拶を交わせば
風紀委員原宿からカップルの振る舞いをして欲しい旨とお触りは禁止と伝えられた。

「いや、お触りなんてしないけど、カップルの演技でしょ?」
「清く正しい交際を、」
「大人なんでしょ?」
「清い交際をしている…」
「大人なんだよね?」

マンスーンに問い詰められてもずっと清廉潔白と主張を原宿が続けているとふと、

「あれ?もしかして2人、お揃いじゃない?」

衣類を指差し、マンスーンの言葉にお互い顔を見合わす。
原宿はくすんだ黄色のトレーナーを
私はからし色のセーターを着ていた。

「ちょっと似てますね」

自分のセーターに視線を落として裾を伸ばしながら
原宿の顔を見たらみるみる真っ赤になってしまった。


ちょっと、ちょっとよ?
(あ…えっと…)
(全然ねぇ、どこが地雷源か分かんないねぇ)
(こうなると暫く話し合いは無理ですね…)


「どうぞ〜!」
「見て行って下さい〜!」

コスプレをした人達が各ブースからメーカー名や商品名の書かれたボードを手にしながら声をかける。
前に急遽会議をした案件の取材で面々はゲームショウに来ている。
一般向けのイベントはまだ先で先行の企業向けイベントだが、企業に雇われたコスプレイヤーさんの動員でこの企画の本気度の高さが窺える。
案内の人が両サイドに構える各企業ブースの前を通りながらイベントの説明をしてくれているとキャラクターに扮した可愛い女の子が愛想よく手を振ってくれる。

「あっ、オモコロの永田さんですよね?」

不意に声掛けられた永田が反応すると、いつも見てます〜と声を掛けられている。

「あ、有り難うございます」
「楽しんでいってください〜」

その様子を斜め後ろから見ている私。
軽く会釈をして、その場を離れてから

「…可愛い子でしたね」
「そうか?」

永田に声を掛けると不思議そうな顔で振り返る永田に、不思議な顔を返してしまう。
かわいいよ、だから仕事してるんだよ。
前を歩く永田の後ろを歩きながら

「永田さんって女の子にデレデレしないんですか?」
「?何を、急に……」

やや呆れたような声が言いかけたが、永田はピタリと立ち止まり、此方を見る

「もしかして、……嫉妬…」

永田の嬉しそうな気持ちが表情と声に隠しきれない。
え、と言い掛けて喉で言葉がキュッと詰まる
口元に手を当てて思案していると
先頭を歩いている案内係の人の後ろを歩くARuFaが「置いて行っちゃうよー」と後ろを向きながら手を振って声を掛けてくれている

「確かに…なんか、見てて…ちょっとだけイヤでした」

斜め下を見ながら照れ隠しするように早口で言い、足早に皆の元に向かうが、
それだけで永田は嬉しそうに目を細める。
だって、ずっと追うばかりでこんなことなんてなかったから。
皆の元へと急ぐ足をわざと邪魔するように指を絡められる。
咄嗟に振り返り、ビクリと体が反応して指を引っ込めようとする動きも逃がさないように手を繋がれてしまう。

「なっ、」
「大丈夫、大丈夫。誰も気付かんて」
「そういうことじゃーーー」

突然繋がれる手に、真っ赤な顔で永田を見上げれば、
見たこともないくらい嬉しそうな顔をするから

「ーーーっ!」

何も言えない。
少しだけですからね、としか釘を刺せなかった


皆に内緒で。
(デートみたいじゃんね)
(仕事ですからね)
(へぇへぇ)


動画の導入部分の撮影が終わり、VR体験の撮影に移行する。
原宿が体験してみてリアクションの部分も撮れ、撮影は順調。
少し時間があるのでARuFaも自分もやりたいと言い、やらせて貰うと
「恐山もやらせてもらった方がいい!」とテンション高めで勧められて恐山も少し体験することに。
足元がよく見えないほどの高所のビルの上を鉄橋で渡るVR

「えぇ、なにこのリアリティ…!こわ、えっ、さすがに怖いんですけど…!」

いたずらに横から恐山に皆で扇風機の風を当てて更に演出する

「うわ、風が、ちょ、やめて」

VRゴーグルを外したが、もうへっぴり腰で何でもない平面の床なのに歩けそうにない

「すみません、少し酔ったので先に行ってて下さい…」
「えー、大丈夫?ざんっち」
「無理しちゃだめだよ〜」

面々が心配して、ごめんなーなんて謝るが
企画の関係上、スケジュール的に恐山を待つことは出来ず皆は案内係の人に次を案内してもらう事にして
会場の隅でパイプ椅子でグロッキーになる恐山。

「すみません…」
「皆なら大丈夫だよ、気にせずに休もう?」

俯いたまま辛そうな恐山の前にしゃがんで書類をうちわ代わりに弱い風を送り、水を少し飲むようにペットボトルを差し出す。
水を飲む恐山の背中を静かに摩って、ペットボトルを受け取るが
まだ具合の悪そうな恐山は俯きながら

「肩、借りて…いいですか…」

掠れた声で言う。
いいよ、と返事すると仮面と眼鏡を外して肩に頭を預けるように寄り掛かる。
こんなに辛そうで可哀想に、と思いながら背中を摩っていると

「いつも…こうやって面倒見てもらって、感謝してます…」

珍しくお礼を言われる。余程、辛いのかも。と思いながら聞いていると

「具合悪いとき…いつも居てくれたら、って思います…」
「誰かに摩って欲しいときあるもんねぇ」

笑いながら聞いていると、弱く人差し指が差し出される

「少しだけ、…握って貰っていいですか…」
「それくらい、いいよ」

大きな仕事で緊張で疲れちゃったのもあるのかもな、と思い
恐山の指先を軽く握り

「大丈夫、大丈夫だよ」

反対の手で背中を摩れば、安堵したような息が漏れる。

「なんで…何でもお見通しなんですか…」

声が震える恐山に
そんなことはないよ、と言いながら背中を摩っていると

「弱ってるわたしに付け込んで…誑かす気ですね…」

弱々しい声でふざけたことを言ってました。


元気なら置いていくよ?
(ごめんなさい…うそです、ひとりにしないで)
(大人しく弱ってなさい)


「おーい、恐山ー。大丈夫かー?」

ブースの人だかりの向こうから原宿の声がする。まだ撮影中の筈だが

「あ…みんな…」

迷惑を掛けたことで元気だと振る舞おうとして慌てて立ち上がろうとする恐山に「まだ、」と言い掛けたが

「あ…」

急に立った貧血でふらつく恐山が私にもたれ掛かるので

「ざんっちぃぃい!!!」

心配からではなさそうな永田の怒号が飛んだ。


起立、礼、着席!
(具合が悪いなら大人しく座ってろ!)
(そこに何か含みを感じる…)


「お疲れ様ー!」

皆のグラスがカツン!とぶつかる音がする
ゲームショウは撮影を一区切りにお昼休憩を頂き、ご飯を食べて恐山の具合が良くなってからの全員集合した形で最後の撮影に挑めたので、多少のトラブルはあったが最後には万全に終われた。

「いやぁ、大きな仕事を成し遂げましたねぇ!」
「今日はよく眠れる」
「皆さん、ご迷惑お掛けしました」
「いーの、いーの!全然気にしない!」

皆で楽しく打ち上げに至る。
一つの大きな仕事を終えてホッとする。あとは編集に今回のイベントの詳細情報を投げればわたしの仕事は終わったようなもの。
嬉しい気持ちでグラスに口を付けて沁み沁みしていると

「あの…改めて、有り難うございます」

隣に座る恐山がグラスを斜めに差し出すので、自分のグラスを傾けてコツンと鳴らす

「大丈夫?もう具合悪くない?」

恐山の顔色を心配して伺えば、お陰様で、と返事をした途端

「よし、じゃあチェンジだ」

恐山、私、ARuFaの並びで座っていたのに隣に座っていたARuFaを押し除けて永田が隣に座ろうとする

「ちょっ、やめてー!永田さーん!」

お座敷飲み屋あるある。
恐山がまた具合が悪くなるかもだからふざけないの!と恐山を背中で守り、隣に座りたがる永田と
面白がって退こうとしないARuFaがふざけているのを恐山は彼女の背中越しに見る。
気付かなかっただけで、この背中に守られてたところもあるんだな、とふと静かに思った恐山だった。


私を誑かしてどうするつもり?
(そうやって皆を誑かしたんですね)
(え?何の話?)
(もういい!恐山が退け!)

Comments

  • ぽいり
    November 16, 2024
Potentially sensitive contents will not be featured in the list.
© pixiv
Popular illust tags
Popular novel tags