「辺野古ボート転覆事故」反対協幹部が周辺海域に案内した中国女性記者を直撃 「敵の敵」と無批判に連帯する沖縄の市民運動の危うさ
基地建設反対運動が続く沖縄県の辺野古沖で3月16日、抗議団体「ヘリ基地反対協議会」が運航する小船舶2隻が転覆。研修旅行で乗船していた同志社国際高校2年生の武石知華さん(17)と船長が犠牲となる痛ましい事故から2か月が過ぎた。
【動画】辺野古ボート転覆事故・反対協幹部が中国共産党“宣伝機関”配信動画に登場 中国人記者を船に乗せて周辺海域を案内し、当局から警告を受けていた
団体側の対応に批判が集まるなか、新事実が発覚した。同団体の事務局長が、中国共産党の宣伝機関の記者を船に乗せ、辺野古基地の周辺海域を案内していたのだ。中国事情に精通する紀実作家の安田峰俊氏が、その全貌を伝える。【全3回の第3回】
現地の政治的キーマンは「何も話すことはないです」
環境時報の記者、邢曉婧(シンチャオジン)氏の沖縄滞在には、他にも興味深い動きが観察されている。
「12月25日、那覇市内で彼女を見ました」
県内の中国人コミュニティに詳しい人物の一人は、邢氏の顔写真を見てそう証言する。
彼女らを見た場所は、中国政府関係者が沖縄訪問時にしばしば利用する中華料理店。県内の華人団体のリーダーらと会食をおこなった模様である。
邢氏はここで別の人物とも会っていた。
「沈添紅(シンティエンホン、仮名)という中国人女性経営者です。さまざまな会合に顔を出すことで有名で、なぜか県庁内部の人事情報までよく知っている」(同)
沈氏は50代後半。琉中関係史の修士号を持ち、地元自治体の国際交流協会の理事をつとめている一方、沖縄戦に関する親中派の平和団体「南京・沖縄をむすぶ会」の中国訪問時のガイドをおこなった経歴を持つ。
さらに中国側の報道を調べると、沈氏は一昨年5月、中国政府系のシンクタンクが北京で主催した沖縄シンポジウムで報告をおこなっていた事実も判明した。
日本の沖縄統治の不当性と中国との関係発展を研究すると称する「琉球学」なる学問を掲げた、政治性の強い会合だった。沖縄の日本帰属に疑義を呈する著名な歴史学者・徐勇(シェイヨン)氏や、平和主義や差別撤廃を訴える日本(沖縄)側の著名人が多数参加していたのが確認できる。
『環球時報』の邢氏は、取材の最後に沈氏という現地の政治的キーマンに会い、いかなる謀議をおこなったのか。
「あなたに対しては、何も話すことはないです」
事情を知りたい。入手した邢氏の番号に国際電話を掛けてみた。だが、彼女は当初こそ愛想よく応対していたものの、私が「辺野古の……」と口にした瞬間に鋭い声で言い放った。
「あなたに対しては、何も話すことはないです」
この一言とともに、電話を一方的に切られた。
沖縄では今年に入り、別の平和運動団体が中国共産党の吉林省党支部と関係が深い団体と共闘して自衛隊に抗議をおこなった例や、「中国台湾省」との交流をうたう中国大陸系団体とのシンポジウムを共催した事例も確認されている。辺野古の反対協を含めて、こうした市民団体の関係者の話に耳を傾けると、中国側の意図について自覚的ではないケースがほとんどだ。
沖縄の基地問題の弊害は、現地を歩くだけでおのずと感じられる。痛みによりそい、反対の声を上げる気持ちも尊重されるべきだろう。
ただ、彼らの運動に手を差し伸べる中国は、そもそも国内で同じような「反対の声」を上げられる国だろうか。こうした「敵の敵」と、無批判に連帯する市民運動のあり方は、平和を目指すうえで本当に適切なのか。
悲惨なボート転覆事故の背後に、沖縄の市民運動が堕した無責任さと危うさが浮かび上がる。
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【プロフィール】
安田峰俊(やすだ・みねとし)/1982年、滋賀県生まれ。立命館大学人文科学研究所客員協力研究員。『八九六四 「天安門事件」は再び起きるか』(KADOKAWA)で第5回城山三郎賞、第50回大宅壮一ノンフィクション賞を受賞。『戦狼中国の対日工作』(文春新書)など著書多数。近著に『民族がわかれば中国がわかる』(中公新書ラクレ)がある。
※週刊ポスト2026年5月29日号