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博報堂を辞めて、日本のエルメスを作ることにしました。

「えっ、次どこ行くの? コンサル? TikTok?」 退職の意を伝えたとき、先輩や同僚からは当然のようにそう聞かれました。

「いや、ちょっと地方の工場とか酒蔵みたいな、伝統工芸の会社を買おうかなと…」 「……え? 岡本、そういう儲からなそうな方向いくの?」

2020年に入社した博報堂。大手飲料メーカーや通信会社のマーケティング、CM制作、新規事業開発と、傍から見れば絵に描いたようなエリート街道(※ただし実態は、深夜の会議室で『このCMのカットの"てにをは"、どれが一番エモいか』を大の大人5人で真顔で3時間議論するような、愛すべき泥臭い世界です)を歩ませてもらいました。

数億円という大きな予算をお預かりし、テレビや街頭をジャックして世の中の空気を変えていく。カタカナのビジネス用語(シナジー、アグリー、エビデンス、フィジビリティ…)を駆使しながら、六本木や赤坂でタクシーに飛び乗る日々。正直、めちゃくちゃ楽しかったですし、やりがいもありました。博報堂という会社には今でも感謝しかありません。

でも、心の奥底で、チクチクと刺さる小骨のような「違和感」が抜けなかったんです。

私は学生時代、ファッションが好きすぎて自分でメディアを立ち上げるほどのオタクでした。当時から、大量消費されるトレンドの服よりも、どこかの誰かが一針一針縫ったもの、職人が目を血走らせて削り出したものに異常な魅力を感じていました。 アパレルの工場や工房に足を運ぶたび、その圧倒的な技術と、それに反比例するようなギリギリの経営状況を目の当たりにしてきました。

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懐かしき「SHALE」の記憶
ファッションメディアと調べたらほぼトップで表示されてたなぁ

広告の世界では、大きなお金を動かすことが一つの正義です。それは資本主義として正しい。でも、私がCMの15秒枠に数千万円を使っているその瞬間にも、日本のどこかで、国宝級の技術を持った職人さんが「後継者がいない」「儲からない」という理由で、静かに工房のシャッターを下ろしている。 私の持っているマーケティングのスキルや、大きな予算を引っ張ってくる力は、私が一番救いたい「小さな作り手たち」には、まったく届く構造になっていなかったのです。

「このままでいいのか? 僕は一生、カタカナ語を喋りながら港区で生きるのか?」

そんな悶々とした日々の中で、運命の出会いがありました。プラットフォームホールディングスの阿部さんです。 彼らがやっていたのは、コンサルタントとして外から「ああしろ、こうしろ」とアドバイスする支援ではなく、自ら事業に投資し、中に飛び込んで、一緒に泥水をすすりながら事業を最大化させるという、ドMの極みのような(でも最高にクールな)ビジネスモデルでした。

「あ、これだ。僕がやりたかったのは、口を出すことじゃなくて、腹を括ることだ」

気づけば私は、安定した給与と引き換えに、大海原へダイブしていました。「M&Aをして、そこの社長になればいい。自由にやってみなよ」という阿部さんの言葉に背中を押され、私の「伝統工芸探し」の旅が始まりました。

しかし、現実は甘くありませんでした。 「よし、まずは酒蔵を買おう!」と意気揚々と地方へ飛びました。スーツをビシッと着て、ピカピカのパワポ資料を持って、歴史ある酒蔵の門を叩きました。

結果、惨敗の連続です。 「東京から来た若い兄ちゃんに、うちの看板が背負えるか」 「ブランディング? なんだその横文字は。うちは味がすべてだ」 おっしゃる通りすぎました。カタカナ語を封印し、夜な夜な酒蔵の社長と飲み明かし、二日酔いで頭を抱えながら見たこともない貸借対照表(バランスシート)を睨みつける日々。1年弱、本当に「探してはダメになり、探してはダメになり」を繰り返しました。通帳の残高が減っていくのを見つめるたび、何度「博報堂に戻りたい…」と深夜に枕を濡らしたか分かりません。

そんな暗黒期の末、ようやくひとつのご縁が繋がりました。 それが「江戸切子」を活用したキャンプブランド『銘灯』です。ガラスと光の美しさに、私は一瞬で心を奪われました。

江戸切子を施したガラスシェードのランタンを販売するブランドです。

昨年の5月、私はついにプラットフォームホールディングスと共同で、このブランドの事業承継を行い、自分の会社を立ち上げました。

社名は「株式会社TOKIMEKI」


ふざけていません。大真面目です。 現場に入って、職人さんたちの手仕事を見る中で、私はあることに気づきました。それは、今の日本の伝統工芸が「伝統」ではなく「伝承」になってしまっているという残酷な事実です。

昔のやり方を、1ミリも変えずにそのまま次の世代にパスダウンする。それは「伝承」です。 でも、私たちが今「伝統」と呼んでいるものは、もともと「その時代の最先端」だったはずです。昔の素晴らしい技術に、今の時代のライフスタイルや感性(自由)を掛け合わせ、常にアップデートし続けること。それこそが本当の「伝統」ではないでしょうか。

過去の遺物としてショーケースに飾るのではなく、今の時流にのせた今に「時めく」ブランドを創り、私たちの生活に「ときめき」を与えるラグジュアリーブランドを作りたい。そんな思いを込めて、この社名にしました。

いずれは、馬具の工芸から始まり世界的なラグジュアリーブランドになったエルメス以上のブランドを日本の職人と作っていきたいと考えています。

そしていよいよ来月、私たちの新たな挑戦の結晶が世に出ます。 第一弾は、江戸切子にとどまらず、鹿児島が世界に誇る「薩摩切子」の圧倒的な技術を注ぎ込んだ『テーブルランプ』です。

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圧倒的な薩摩切子の存在感。

薩摩切子の特徴である「クリスタルガラスのポテンシャルを最大化する磨き」の技術。分厚い色ガラスを削り出すことで生まれる、息を呑むようなグラデーション。それを現代の空間を彩る照明へと昇華させました。試作品に初めて明かりを灯した夜、私はその美しさに本当に言葉を失い、少し泣きました(疲労もあったかもしれません)。

このランプは、決して安くはありません。 なぜなら、職人さんたちが魂を削って作ってくれたものに対して、正当な対価をお支払いし、彼らの給与水準を上げ、技術を次世代へ繋ぐための価格設定にしているからです。「良いものを安く」ではなく、「最高のものを、誇りを持てる価格で」届ける。これが私たちの戦い方です。

博報堂という大きな船を降りて、小さな小舟で漕ぎ出した私の、これが最初の大勝負です。 日本の技術が生み出す「光のときめき」を、ぜひ皆様の目でも確かめていただきたいです。

どうか、プロジェクトページだけでも覗いてみてください。そして、もし心が少しでも動いたら、応援していただけると本当に、本当に嬉しいです。

プロジェクトは6月5日からスタートです!
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岡本 啓太郎【ブランドプロデューサー】 こいつのノートもっと読みたいなってかたはチャリンください。 おこずかいの分だけ余裕が出て執筆に励むことができます。

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ジロウ: 「“日本のエルメスを作る” って言葉、 めちゃくちゃワクワクしました……! しかも、 “伝統を止める”じゃなくて、 “今の時代にときめかせる” って考え方が本当に素敵です……!」 ハナ: 「“良いものを安く”じゃなくて、 “誇りを持てる価格で届ける” って言葉、 す…

博報堂を辞めて、日本のエルメスを作ることにしました。|岡本 啓太郎【ブランドプロデューサー】
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