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転校生 藤丸立香/Novel by きり

転校生 藤丸立香

4,110 character(s)8 mins

前回の投稿から随分時間が経ってしまいました。
今回はエミヤについてのお話しです。
我がカルデアは弓だけ☆5がいないのでエミヤズがいつも頑張ってます。
エミヤ、早く二部に出てこないかなぁ。
お弁当作ってくれないかなぁ。

今回はぐだこです。
しかしまたもや士郎目線です。
時間枠?さて…いつ頃なんですかねぇ……
sn見てないってのにまた出てきてしまいます彼。

お気に召しましたら他2作品も目を通して頂けたら幸いです。

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「あ、お疲れ様ー」



西陽の差し込む教室の扉を開けるとふわりと柔らかい香りがした。
声の方へと目を向けると、窓際の席に座って夕陽に照らされる少女が机に頬杖をついてこちらを見つめていた



「おう。まだ残ってたんだ?」



労いの言葉に返事をすると彼女は目を細めてにんまりと笑った。
その表情含め、夕陽に溶けそうな髪はまるでおとぎ話の猫のようだ。



「あぁ、うん。待ってたんだ、君……士郎のこと」

「俺のこと?」



俺は彼女の前の席…俺の座席に腰掛けた。
机と背もたれに肘をかけ静かに俺の動作見つめていた彼女に顔を向ける。



「……お前、何か…香水つけてる?」

「え?つけてないけど…なんで?」



彼女の名前は藤丸立香。
俺たちの入学後すぐ来た転入生で、隣の席だったことから話すことが多かった。
学年が上がった後も同じクラスだったので、今では数少ない友人たちの中でも特に親しい方だ。



「何か…花みたいな甘い匂いする」

「…ふーん。なんだろ?」



彼女は一瞬眉根を寄せて机を人差し指でトントンと叩いた。



「別に嫌な匂いじゃないよ」

「そお……?」



依然として嫌そうに顔歪めていたが、花の香りなのだからそんなに嫌がることもないだろうに。
少しおかしくて笑ってしまうと彼女は表情を緩めた。



「それで?俺に用なんだろ?」

「あ…うん。用って言っても、少し話したかっただけ」

「何だよ?改まって」



少し顔を覗き込むと彼女は目を丸くしたが、すぐいつものように薄く笑った。



「士郎ってさ、優しいよね」

「…はぁっ?な、何だよ急に…!」



何か企んでいるのかという疑いと、単純に照れるのとで俺は身を引いた。
彼女はそれを面白そうに見つめていた。



「…だって、今だって生徒会の頼まれごと手伝って来たんでしょう?昼間だってワカメみたいな頭の人に何か押し付けられてたのに嫌な顔しないで引き受けてたし」

「ん、まぁ、人の役に立てるなら俺はそれで」

「はぁ〜?何ソレ」



彼女は鼻面に少し皺を寄せて低く唸った。



「何で他人のためにそこまですんのさ。みんなの役に、って何でも引き受けて結果傷つくのも損するのも君じゃん。何で他人の得のために自分を犠牲にするの?」



嫌悪丸出しの彼女に苦笑しつつ、その表情に少しの違和感を覚える。
俺は一呼吸置いて彼女の問いに答えた。



「俺、夢なんだ。正義の味方になるの。だから、誰かの頼みを引き受けるのは全く苦じゃないんだよ。むしろ人助けが趣味みたいなもんかな」



俺の生い立ちは以前話したことがあるので彼女は俺の命救った養父のことも知っている。
あっけらかんと何でもないように……いや、実際俺にとっては何でもないことなのだが……
そう言うと彼女はじっと俺を恨めしそうに見つめたあと、窓の外へと目を逸らした。



「…はぁ。何、ソレ」

「何だよ、今日変だぞ?どうした?」



何か彼女の気に触ることでもしたのだろうか。
今日はどうも機嫌が悪いらしい。
いつもなら、もっと………


……………………いつも?


いつもって、いつーーーー?



「あのさ」

「ッ!!……ぁ、え?」


外を見ていたはず彼女の瞳が俺を捉える。
彼女の、名前は、



「じゃあ、私からも頼みごといい?」



……そうだ、彼女は藤丸立香。



「ああ、どうぞ」



入学後すぐに来た転入生で、俺の親しい友人。



「私の友人ですごくいい奴がいるんだ。助けてあげて欲しいの。そいつは身を削って人を助けるんだよ。」

「あ……」



少しうつむき気味で、影になった前髪の下から、きらきらと夕陽色の瞳がみずみずしい光を放っていた。



「私は、その人の、行く末を知っている。どうなってしまうのか、彼が進むかもしれない道の可能性を、2つ、知っているの。私は……、私はっ……!!」



綺麗だと思った。彼女の瞳が。
守りたいと思った。その夕陽に涙をいっぱい溜めて震えているこの少女この手で。


どこからか、甘い匂いが漂う。
頭がクラクラしてきた。



「……私、は。君みたいには、なれないや。とても、他人のために自分の命を差し出すことは出来ない。今まで何度も立って走って叫んで来れたのだって、全部結局は自分のためだもの。人類史を救ったのもそれは、私が死なないためだもの」



………何?


何て言ったんだ?ジンルイシ?何の話をしている?



「だから、これも私のためなの。ごめんね、君にとっては迷惑かもしれないけれど。私は……、あなたが辿り着くかも知れない可能性を潰したい。」



頭がぼんやりする。霧がかかったようだ。
何もかもが不明瞭で、スッキリしない。


何をいっている?


彼女は。


誰だ。



「……お前、誰だ?」



目の前で苦痛に顔を歪める少女。
もはや外は薄暗くなり、夜が空を覆い始めた。


そんな中、置いてけぼりをくらったように佇む、夕陽色。


誰だ、この少女は?


知らない。


知らないのに、何故こんなにも胸が締め付けられる?



「マスター」

「っ!?」



ずるり、と少女の影から髑髏の仮面をつけた女性が姿を現した。


俺は驚いて身を硬くしたが、それはこちらに目を向けることなく少女に声をかけた。



「予想通り、彼がレイシフトして追って参りました。今我が分身で足止めしておりますが、真っ直ぐこちらに向かっているようです。」

「そっか…」



少女は申し訳なさそうに肩をすくめながら小さく呟くと、すっと立ち上がり、座る俺の目の前に立った。



「本当はね、話し合って貴方に貴方の夢を諦めて欲しかった。正義の味方なんて…、そんなかっこいいもの目指さないで、普通の人として未来を歩んで欲しかった」



ぽつりぽつりと自身の願望を口にする少女を俺は黙って見上げていた。



「もちろん、私が今まで戦ってこれたのは貴方が居たから。貴方の助け無しではおそらく私に今はなかった。そう思うくらい貴方には何度も助けてもらった。……それでも。いや、だからこそ。貴方が戦う姿を、傷つく姿を、私は見たくない。………貴方に消えて欲しいっていう意味ではないんだよ、エミヤ」



ふと影が落ち、顔を上げた少女ハッとして振り返る。



「余計なお世話だな、マスター」

「っ!!アー、チャー…?」



するりと窓をすり抜けこちらを見下ろす白髪の英霊。
見覚えがあった。
その表情は険しく、咎めるように少女を睨んでいる。



「…ごめん。ごめんね。分かってるよ。でも、私がしたかったの。私のわがままなの」



少女はまるで幼子のように身を小さくして裾を握りしめていた。



「……オルタの私の存在が、君をそうさせたのかね?」

「………」



黙って俯く少女にアーチャーは深いため息をついた。



「余計なお世話だな、マスター。どのような末路に辿り着くのかはその人間個人の選択次第だ。それに介入してルートをひこうとするのは感心しないよ。あくまで私はイフだ。オルタもイフだ。俺の選ぶ道全ての行き着く先がこうなるわけじゃあない。……おそらく、君が望むイフもあるさ。君の声に応じることのないイフが、ね」



少しずつ沈む夕陽の逆光でその英霊の表情は伺えなかったが、おそらく微笑んでいた。
目の前の少女がホッとした顔をしていたから。



「…ごめんね、迷惑かけて。ごめんね、衛宮士郎君。話し合いでダメならロクデナシポンコツ魔術師に魔術かけてもらおうと思っていたけれど、やめておくよ」

「酷い言い様だなあ!」

「うわっ!?」



いつの間にか、横の席で頰杖をついていた男が頰を膨らませ口を尖らす。
この男も、英霊のようだ。



「本当のことでしょ。幻術、解けちゃって私のこと認識出来なくなってたでしょ、彼」



眉間に皺を寄せた少女に黙ってニンマリ顔を浮かべる男。
あぁ、あの匂いはこの男のものか。足元に花弁が落ちている。


もはや名も分からない目の前の少女。よく見れば左手には令呪が刻まれていた。
そうか、この子は魔術師か。マスターか。
そしてこの子は俺の未来を知っているのか……。



「……帰ろうか。みんな、帰ろう。さようなら、士郎君。どうか、どうか…君の歩むこれからの道が平穏でありますように。人を救うのもいいけれど、君が救われることを望む人間もいることを忘れないでね」



ーーーー頭が、クラクラする。
待って。俺は君と話しがしたいのに……。



甘い匂いに包まれて、目の前が霧がかかったかのようにぼんやりした。
冷たい風に頰を撫でられ、気がつけば玄関の前に立ち尽くしていた。



「あ、れ………?」



俺は一体、何をしていたのだっけ?

何故、泣いているのだっけ?



「ーーー………あ」



とりあえず中に入ろうと、鍵を探して鞄を覗く。すると一枚の花弁が出てきた。


……あぁ、そうだ。


今日は友人が転校して行ったんだ。入学してすぐに転入してきた女の子。
割と仲が良かった方だったと思う。
その子が今日転校するので、帰りに話したんだっけ。その時に花を渡したんだっけ。
えぇと確か名前は………。



「名前、は……」



赤い夕陽の色をした少女。
夕焼けの中から現れて、おとぎ話の猫のように夕陽の中に消えていった彼女。


もはや名前は思い出せない。
もはや顔も分からない。







「………腹、減ったな」



俺は、何をしていたのだっけ?
何故、泣いているのだっけ?

とりあえず、中に入ろう。
夕飯の支度をしなくては。


Comments

  • rararara

    士郎思い出してお願いだから

    December 16, 2018
  • 蛇海月(充電中)

    こういう、どことなく胸がキュッとするの、好きです

    December 13, 2018
  • misyou.go4
    December 13, 2018
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