代替調達が進んでも石油製品の目詰まりは続くか
個々の化学企業にとって必要なナフサの調達への不安は残る
国内産のナフサは、主に中東産の輸入原油から製造される。日本が従来使用してきたのは、中東産の輸入原油から日本で製造したナフサと、中東から直接輸入したナフサが主流であり、それらが合計で全体の約8割を占めたとされる。 しかし米国、アジアなど他の地域から輸入されるナフサは成分が異なっている。そのため、代替ルートでナフサの調達を増やし、総量は確保できても、化学企業が保有する設備に適合し、また最終製品のニーズに対応した種類、成分構成のナフサが十分に確保できたとは限らない。 米国本土から軽質油を確保できても、中東産の重質油に対応した国内の石油精製設備では精製に支障が生じる面があるが、同様のことがナフサについても言えるのではないか。 そのため、個々の化学企業にとって必要なナフサの調達への不安は残り、減産は続けられる。その結果、ナフサ由来の日用品の供給不足と価格上昇はなお続くことが予想される。
ホルムズ海峡再開まで目詰まりは続くか
エチレンなどの減産の動きが続くもう一つの理由は、ナフサの価格上昇にあるだろう。原油価格の上昇に連動してナフサの価格も大幅に上昇しているが、企業はナフサから作られるエチレンなどの価格に、ナフサの価格上昇分を十分に転嫁できずに赤字になってしまう可能性がある。あるいは、仮に価格転嫁ができて利益が確保されても、エチレンやそこから作られる川下の製品の価格が大幅に上昇することで需要が落ち込んでしまう可能性もある。つまり、エチレンを製造しても売れずに在庫になってしまう可能性がある。 このように、必要なナフサの調達への不安とナフサの価格上昇の影響から、企業は減産を続けていると考えられる。一度生産を止め設備の稼働を止めてしまうと、再開するときのコストがかかるため、採算ラインぎりぎりの水準で設備を稼働させている企業が多いと推察される。 このように、総量としてのナフサを日本全体では一定程度確保できても、いわゆる「目詰まり」は容易に解消されない。企業が必要とするナフサの安定した調達先、いわゆるサプライチェーンは、長い間に形成されてきた緻密なものであり、経済合理性に基づいて完成されたものだ。そのため、短期間でそれを見直すことは難しいだろう。 ホルムズ海峡が再開されることで、個々の企業が必要とする種類、成分のナフサを再び安定的に調達できるようになる、また世界的に原油とナフサの価格が安定化することがない限り、ナフサを巡る「目詰まり」は早期には解決できないのではないか。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/media/column/kiuchi)に掲載されたものです。
木内 登英