書類選考ナシ、55歳でも歓迎…生保レディの「ザル採用」に潜む罠。新人の“友達”を顧客リストとして使い潰す、焼き畑営業の裏側
早期離職前提の「ザル採用」…その実態は?
実際の選考過程は驚くほどシンプルだ。大体は書類選考ナシ、カジュアル面談を二回。よほど非常識な印象を与えない限りウェルカム。こちらからお願いして、入社してもらうくらいの姿勢だ。年齢制限などあってないようなもので、過去には55歳での採用実績もある。誰でも採用し、早期離職が前提になっている。実態はまさに「ザル採用」だ。 なぜ選考基準皆無の採用が成立するのか。構造的な理由が3つある。 理由①:採用が「成績」になる わたしが在籍していた会社では、人材を採用することが、そのまま採用した本人の評価に反映される仕組みになっていた。契約が取れない月も、採用者を連れてくることで帳尻が合わせられる。保険を売れない人ほど採用で補填する実態は、少なくともわたしの周囲では半ば公然の事実だった。 さらに管理職になると、個人の営業ノルマから概ね解放される。つまり個人ノルマから離れたければ、チームを持つしかない。そしてそのチームメンバーは、自分で採用してこなければならない。熱心に声を掛けるのは、善意だけではなく、自分自身がノルマから抜け出すための手段でもあるからだ。
新人の人脈を使った焼き畑農業
理由②:新人が「契約」を連れてくる 新人が入社直後にまず向かう先の多くは、身内・知人といった「自己基盤」とされている。両親、兄弟、祖父母、学生時代の友人、かつての職場の同僚……営業経験のない新人でも、既存の人間関係を頼れば最初の数件の契約は比較的取りやすい。つまり会社にとって、採用は同時に「新たな顧客リストの開拓」を意味する。 理由③:辞めても会社は痛くない 新人が数か月で辞めたとしても、その間に結ばれた契約は残る。離職による損失は限定的であり、新人が入れ替わり続けることで、会社は常に新鮮な顧客リストを手に入れ続けられる。採用を「ザル」にしておくことは、会社にとって極めて合理的な判断なのだ。
工場勤めからの転職組も
同じ支部に、ずっと工場勤めだったと話す30代半ばの女性がいた。人見知りで、オフィスで働くのは生保が初めてだと言っていた。「わたしなんかが営業なんてできるのかな」と言いながらも、「でも変わりたくて」と笑っていた。 入社後の彼女は、最初はとにかくぎこちなかった。売れる営業になるために上司に徹底的に指導を受け、激しい叱責を受けているところを何度も見た。その度に「向いてなさそうなのに入社しちゃってかわいそう」「きっとすぐ辞めちゃうだろうな……」と遠くから見ていた。 しかし意外にも、本人はケロッとしているのだ。気づけば化粧や身に着けるものに気を遣うようになり、明るくなり、人との距離の詰め方も変わっていった。入社直後の数ヶ月は上司が同行してくれるので、最初の契約は取りやすい。その「自分でも売れた」という体験が自信になる。「変わりたかった」と言っていた彼女のことを思うと、自らの変化が本人にとっての救いだったのかもしれない、とも思う。