石油関連業界が自民党会議に提出した「ナフサ不足」内部資料を入手「在庫は3~4ヶ月分。直近はさらに悪化」それでも高市政権が不足を認めようとしない事情
入手した資料の一つ、石油化学工業協会の〈石油化学産業の状況について〉によると〈川下の製品の在庫は全体で2か月、ポリエチレン、ポリプロピレンといった主要樹脂の在庫は、3~4ヶ月〉として、〈長期的なナフサ供給の影響は、特定の分野というよりも、幅広い分野の製品の生産のための原料供給に、ほぼ同時に影響を及ぼす可能性がある〉と指摘している。 高市首相が「まもなくそんなに心配していただかなくてもいい情報も」と説明したのはこの自民党合同会議の1か月後だった。その間に在庫状況は劇的に改善していたのだろうか。 本誌が石油化学工業協会に取材すると、首相の言葉とは逆に、主要4樹脂(※注/低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンの4種類)の直近(3月時点)の在庫状況はいずれも前月比で9~14%と大きく減っていることがわかった。 現在、化学メーカー各社はナフサ不足で減産に追い込まれており、国内のエチレン生産設備の稼働率は3月に68.6%に落ち込んだ。政府がいくら流通の目詰まり解消に動いても、生産量そのものが減っているのだから品不足が解消できるはずがない。ナフサ危機は深まっていたのだ。
首相が節約を呼びかけない理由
こうした業界から提出されたデータを自民党も政府も知りながら、高市首相は国民に「供給は大丈夫」「目処がついた」と言い続けている。 高市政権がナフサ不足を認めようとしないのはなぜか。元経産官僚の政治経済評論家・古賀茂明氏がこう指摘する。 「実際、様々な業界から石油や石油製品の不足について苦情や陳情が多く届いているから、官僚は産業界の現場で石油製品が不足している実情を十分承知しているわけです。私が聞いているところでは、経産省は製品不足を認めないように石油関連業界に箝口令を敷いている。高市総理が石油不足、ナフサ不足は大丈夫だと言い、国民に節約は求めないという姿勢でいる以上、経産省としては足りないとわかっていても認めるわけにはいかないわけです」 そうした高市首相の方針に対し、自民党内でも河野太郎・元デジタル相などは補助金でガソリン価格を下げる政策より「節約を呼びかけるべき」と主張しているが、首相は一顧だにしない。 「高市首相の経済政策、いわゆるサナエノミクスは政府支出で供給能力を高めて景気拡大を図るというもの。節約を呼びかけるといった消費抑制につながる政策はサナエノミクスを否定することになるからやりたくない。だから国民に本当のことは知らせず、石油価格が高騰しても補助金、つまり税金を投入してガソリン価格を低く抑えて石油を従来通り使わせる。石油関連業界や自民党内から省エネを促進すべきとの声が上がっても、高市一強の中で黙殺されているのでしょう」(古賀氏) では、高市首相が「大丈夫」としている根拠を役所側は持っているのだろうか。内閣官房にぶつけるとこう説明した。 「(根拠は)5月で中東以外からのナフサの輸入量が前年比3倍、月135万キロリットルになっており、今後毎月、この分量を輸入することになっているという経産省が示したデータによるものです」(副長官補室) そこで経産省に来年までの契約が済んでいるのかを聞くと、「6月分については現在、契約の進捗状況を企業からヒアリングしています。年を越えるまで間違いなく135万キロリットルを超える分量の輸入ができる、と明言はできませんが、そのレベルのナフサ輸入が見通せる状態になっているとは言えます」(製造産業局素材産業課) 「年を越えて供給できる」という言葉は今後も最大量の輸入が確保できると想定した“皮算用”のようなのだ。 ▼▼▼後編記事▼▼▼ 【つづきを読む→】ナフサ危機で悲鳴続々!断熱材やシンナーの不足で建築業界に打撃、プリンの容器やケーキのフィルム、バナナ供給にも影響 ※週刊ポスト2026年5月29日号