縁とスカウト運が繋いだ髙橋宏斗 形式上「投手」として指名した岡林勇希 元中日スカウトが明かすドラフト秘話
「縁」と「スカウト運」が繋いだ髙橋宏斗
中京大中京時代の高橋。近藤氏は「膝」に注目する
【写真は共同】
東海地区では担当したトヨタの栗林良吏(広島1位)のことも高く評価していました。名城大時代から評価していた右腕ですが、当時は2位縛りがあって獲ることができませんでした。
中京大中京の髙橋宏斗も私の担当でした。この年はコロナがあって甲子園が中止になりましたが、例年通り開催されていたらもっと騒がれていたでしょうし、本人が12球団OKなら複数球団重複していたはずです。それくらいのピッチャーでした。
宏斗の魅力はやっぱり真っ直ぐ。あとは岡林のところでも触れましたが右の膝の割れです。これができると上半身の負担も少なくなって怪我もしにくくなる。腰も開かなくなるからバッターからしたらボールが見えづらい。宏斗はこれが抜群でした(今は良かったときの「膝の割れ」がなくなっているのが気になります)。スプリットも良くて球種も豊富でしたしね。
ただ本人が慶応大進学希望でしたから、こちらはその結果を見守るしかありませんでした。お兄ちゃんが慶応大出身で、本人よりもお父さんが宏斗を慶応大に入れたがっていたようです。
本人はどちらかというあまり勉強が好きではない。そんな情報をキャッチしていましたから「これは分からんぞ」ということで、この年は宏斗の大学合否が出るまでは1位は決めない、もしも大学がダメだったら直ぐにでも「中日は髙橋1位!」と公表する。そんな戦略で動いていました。
合否結果の発表が遅かったのも中日には追い風でした。他球団は「1位は●●」とどんどん決めていた時期と重なったため、中日以外はこのタイミングで「1位は髙橋」と直ぐには動けなかったはずですから。
宏斗が小さい頃、私の自宅の目の前にあった託児所に預けられていたと聞きましたし、お父さんとも私の高校時代に対戦経験がありました(私がヒットを2本打たれています)。そんなことから髙橋家とは「縁」を感じていましたし、中田さんに言われたように私には「スカウト運」があったのでしょうね。
このとき、中京大中京にはショートに中山礼都(巨人3位)もいました。担当としてもちろん評価はしていましたけど、プロ入り後にバッティングがあんなに良くなるとは思いませんでしたね。中日は3位で同じショートでも、中山よりも守備力の高い近江の土田龍空を指名しています。土田のプレーはちょっと横着そうに見えますが、あれが土田の持ち味なんです。あれを直そうとすると土田の良さが消えてしまう。凄い選手になる可能性を秘めている選手だと思うのですが、そういうところで損をしているのかもしれません。もう少し上手く使ってやってくれたら......そんなことを思います。
スカウトから大学野球の監督へ
2021年のドラフト会議が近藤氏のスカウト最終年となった
【写真は共同】
この年は私の担当した東海地区にはあまり有力な選手もいなくて、クロスチェックもできなかったですから、スカウト人生の最後としては大人しい1年になりましたね。
この年限りでスカウトを辞めたのは、現在監督をしている岐阜聖徳学園大学から監督就任依頼の話しがあったからです。それまでにも声をかけていただいていましたし、ずっと悩みもしました。このとき相談させていただいたのが、スカウトの師匠である中田さんと、入団したときからずっと可愛がっていただいていた先輩の小松辰雄さん。お二方に背中を押してもらい、大学野球の監督という新しい道を歩む決心がつきました。
今の私の目標はこの大学から直接プロ野球に選手を送り出すこと。そして岐阜リーグでダントツのチームを作ることです。ちなみにユニフォームは尊敬する落合さんに直接許可を頂いて、強かった時代の中日と同じデザインにさせていただきました。
みなさん、岐阜聖徳学園大学の名前を覚えておいてくださいね。