今年の3月18日(anond:20260321192723)にプーチン氏に反旗を翻した後、精神科病院に収容されてしまったイリヤ・レメスロ氏が、その後退院し(anond:20260505233557)、さらに今回、反旗の告発文の続きを投稿したので、こちらも翻訳して紹介しておきたい。
https://t.me/ilya_remeslaw/11365 - 日本時間 5月17日 15:17
ちょうど2ヶ月前の2026年3月17日(訳注: 日本時間では18日)、私は「私がウラジーミル・プーチンを支持しなくなった5つの(後に6つの)理由」というマニフェストを発表した。
それ以来、多くの出来事があった。私は自由の身であり、健康でもあるため、(法律と良識の範囲内で)プーチン大統領を批判することは、私の特権である。(訳注: レメスロ氏は弁護士)
それゆえ、続けていこう。
理由その7:エリートと民衆の間の甚大な社会的格差。
プーチンは、「スクリパ(社会的結束)」や価値観、そして物質的な富の蓄積とは無縁なロシア民族の「独自の道」について 語る (訳注: リンク先は、プーチンが「我々の自己認識の根底にあるのは、やはり物質的な豊かさではなく、道徳的・倫理的な基盤である。それは家族、国家、そしてロシアの未来の礎となっている」と語る記事) のが好きだ。それは、忌むべき「西側」とは対照的である。
しかし、プーチンの唱える調和を、代数で検証してみようではないか。(訳注: ロシアの劇作家プーシキンの悲劇『モーツァルトとサリエリ』からの引用で、ここでの代数は現実の数字という意味)
プーチン自身、決して質素であるとは見なされたことがない。 彼は20もの邸宅を利用し、何一つ自分を制限しない。また、「中傷者であり外国の代理人」とされる者たちは、国の指導部が支配する国営企業の口座に天文学的な金額(数十億)(訳注: 1ルーブルは2円)が眠っていると主張している。我々は当然、これをほとんど信じていないが――プロパガンダの犠牲者でなければ、プーチンが給料だけで生活しているなどとは信じないだろう。
大統領の友人や側近たちの収入は莫大な額に上る。国営企業のトップの公式給与でさえ、数十億ルーブルに達する。そして、規定の枠を超えて蓄積され、分配された資金については、公正な裁判でまだ明らかにされる必要がある。
大統領とその側近たちは、明らかに贅沢を厭わない。そして、一般市民が戦争の苦難、インターネット遮断、経済の低迷、物価や税金の高騰に苦しんでいる最中にも、こうしたことが起きているのだ……
人々と分かち合い、消費格差を埋める代わりに、物質的な富の蓄積は我々の道ではないと説教される。
これは見苦しい、典型的な二重基準だ。身内にはすべてを与え、残りの国民には残飯を……
戦争と動員が始まるまで、多くの人はこうした実態に目をつぶっていた。だが、今は違う。
交戦国の指導者は、少なくとも国民の苦難を分かち合うべきであり、贅沢と二重基準の中で暮らすべきではない。
理由その8:すべての人に対する公正な司法の欠如
この問題は、一般市民にも、プーチンの側近グループに属さない起業家にも等しく関係している。
ロシアでは、まともな法執行機関や裁判所が長い間存在していない。裁判官や警察官からは常に数百億ルーブル規模の資産が見つかる一方で、他の者たちは手を付けられないままだ。腐敗に対して体系的に取り組んでいる者は誰もいない。
「司法制度」は、理不尽な理由で人々を投獄し、彼らのビジネスを奪い、日常生活レベルでさえ権利を守る機会を与えない。
大企業にも問題がある。以前は外国の裁判所に訴えることができたが、現在はロシア国内でしか紛争を解決できない。独立した裁判所の代わりに、プーチン大統領の友人からの電話が支配しているのだ。
まともな裁判所が存在しないことは、制裁が解除された後であっても、ロシア連邦における経済発展を不可能にしている。「プーチンの友人たちのための法律」と、それ以外のすべての人々のための法律が存在する国で、まともな実業家が事業を行うことはあり得ない。起業家たちは、まともな法律と裁判所がある場所へ、資金をロシアから移していくことになるだろう。
理由その9:プーチンと彼のチームに個人的な責任感がないこと
わが国の大統領は決して間違いを犯さず、無垢な存在だ。何か良いことが起これば、大統領府の広報担当者はそれをプーチンに帰する。悪いことが起これば(クルスク州への侵入、テロ、ドローン襲撃など)、大統領はどこかへ控えめに姿を消し、長期にわたり姿を現さない――市民が動揺せず、支持率が下がらないようにするためだ。貴族どもに自分で責任を取らせればいい……
プーチンが自らの過ちについて国民に謝罪した話を、私は一度も聞いたことがない。例えば、「天才的」に計画された特別軍事作戦(SVO)についてなど。
大統領の友人や同僚たちも、どうやら決して過ちを犯さないらしく、それゆえに不可侵の存在となっている――彼らがどんなことをしても、せいぜい別の役職への異動が待っているだけだ。
プーチンは、自分に競合しうる人物(特に人気のある軍人、恐れているのか?)を要職に任命しない。彼はまるでわざと、愚かで無能な者たちを任命し、彼らの過ちや犯罪については問いたださない。彼は賢明で慎重な政治家であり、不忠実でありながら有能な人々さえ将軍に抜擢したようなナポレオンなどではない。
このため、プーチンは必然的に敗北する。もし盗人であり無能な者たちで周囲を固めれば、彼らは最初の好機を捉えてあなたを裏切るだろう。信念を持ち才能ある者なら守ってくれただろうが、プーチンの周囲にはそのような人物はいない。
続く
https://t.me/ilya_remeslaw/11366 - 日本時間 5月17日 15:21
理由その10:プーチン大統領はとっくに現実や国民の苦境からかけ離れてしまっている
プーチンにとっての「現実」とは、机の上に置かれる報告書に他ならない。ヴォロディンが言うように、彼にとってすべては常に「安定」しているのだ。(訳注: ロシア下院議長のヴォロディンが、世界の他の地域における「緊張と混乱」と対比させ、ロシアの最大の成果として「安定」を掲げていることが、ロシア国内でも批判や嘲笑の対象となっている)
一方、国民の現実とは――空っぽになっていく財布と、記録を更新し続ける物価である。官僚の横暴、都市への砲撃、煤の雨、そして終わりのない戦争。これもまた、ある種の「安定」と言えるだろう……
プーチンは、自分の人生を神話的な「地政学的勝利」で測ることに慣れているが、一般市民は食料品バスケットの価格や公共料金でそれを測っている。国民とのつながりが失われると、権力は彼らの苦しみや問題を感じ取れなくなる。大統領は、中央銀行の政策金利に窒息しそうになっている企業にも、税金や借金に溺れている人々にも、全く関心を示さない。
プーチンにとって、人々は「統計上の単位」へと変貌し、この権力が存在すべき理由である「市民」ではなくなってしまった。これは、プーチンが人口問題を取り上げる際に明らかになる――彼にとって興味があるのは「人的資源」だけなのだ。
リハーサル済みの「直接対話」では、大統領にとって人に関わるすべてがいかに退屈なものになったかが見て取れる。彼の人生から共感は完全に消え失せた。我々は、彼のパレードのための単なる背景に過ぎない。5月9日、プーチンが優先順位をどう付けたか覚えているだろうか?彼にとって、小さな赤の広場はロシアの他のすべてよりも重要だ。
大統領は、今この瞬間、何百万人ものロシア国民の生活が崩壊していることに気づく代わりに、「歴史の教科書」に自分の名を刻むことばかりに気を取られている。
そして今、自国民に対する傲慢さと無関心に対する代償は、極めて高いものとなるだろう。
理由その11:完全に失敗した外交政策と「ソフトパワー」。
ウクライナ、アゼルバイジャン、アルメニア、その他のCIS諸国に見られるように、クレムリンの影響力の低下には、一つの共通した原因がある。
プーチンには、ロシアの隣国に提示できるような、将来の地政学的プロジェクトの構想が全く欠如している。欧州連合やトルコにはそのような魅力的なプロジェクトがあるため、プーチンの「旧来のパートナー」たちは彼の敵の側へと去って行っている。さらに、ロシアの利益を「ソフトパワー」で推進するために割り当てられた資金が、全面的に横領されているという事実も加わっている……
例としてウクライナを取り上げよう。同国での状況は、2004年頃からすでに、クレムリンにとって好ましい方向に変わり始めていた。
プーチンがすでに「特別軍事作戦」に投入した資金の10分の1でも割り当てていれば、その額で現地での我々の利益を効果的にロビー活動できたはずだ。専門家を雇い、有力な地方組織(LOM)を支援し、政党プロジェクトを立ち上げることもできたはずだ。こうした活動を行い、西側諸国と競合することを妨げる者は誰もいなかった。しかし、その代わりにプーチンはまず、強盗のような男ヤヌコビッチ(訳注: 親露派のウクライナ大統領で後にロシアに亡命)と手を組んだ。彼は国内の一部を敵に回し、マイダンで自身の治安部隊に裏切られた。
その後、プーチンは最も重要なウクライナプロジェクトを、自身の親友であるメドヴェドチュク(訳注: 親露派のウクライナ政治家で後に国籍も議員資格も剥奪)に委ねた。彼もまた、資源を堂々と横領し、すべてを台無しにした。プーチンの対外・治安部門のスタッフたちは干渉しなかった。彼らは、大統領には聞きたいことを言うべきだということに慣れていたのだ。「花で出迎えられるだろう」――まあ、ご存知の通りだ。
その結果が戦争であり、ロシアがどうこの状況から抜け出すのか見当もつかない。ウクライナは今後長きにわたり、ロシアにとって友好国とはなり得ないだろう。誰がその責任を取るのか?
あるいはアゼルバイジャンの例を挙げよう。同国はロシアと良好な関係を築き、モスクワに大きなビジネス上の利害を持っていた。政治的に主体性のある政権は、常に国家の利益のためにこうした出来事を利用するものだ。一方、主体性を持たず、その代表者が外国の支援(訳注: 賄賂や裏金、ビジネスの分け前)を受けている政権では、アゼルバイジャンやその他のパートナーを自らの利益(訳注: ロシアの利益ではなく、個人の利益)のために利用する。だからこそ、「スコアボードの数字」(訳注: 外交上の惨敗という結果)に驚く必要はないのだ。
さらに、航空機墜落事故(訳注: 2024年12月のロシアの誤射によるアゼルバイジャン機の墜落事故)をめぐる典型的な話もある。プーチンはアリエフ(訳注: アゼルバイジャンの大統領)への謝罪をできる限り先延ばしにし、メディアには真実の代わりにありとあらゆるデタラメが流された。これでは、今後アゼルバイジャンに何を期待できるだろうか?
ロシア外務省でさえ、品位を欠き、露骨に無作法な振る舞いをしている状況では、「ソフトパワー」など夢のまた夢だ。「サルマト」に関するまったく滑稽な 声明 (訳注: リン先は、ロシア外務次官が新型ミサイルの巨大さを誇る様子を皮肉る、レメスロ氏自身の投稿)。それゆえに全世界がプーチンを恐れているというのだ。まあ、コカインの密売にまで手を出しているわけではないから(訳注: 2018年にアルゼンチンのロシア大使館の敷地内から約400キロのコカインが見つかった)、まだマシだが。
この外務省の茶番劇は、たった一人の観客(訳注: プーチン)のために演じられているような印象を受ける。
続く……
https://t.me/ilya_remeslaw/11367 - 日本時間 5月17日 18:22
ところで、戦争における指導部の過ちの認容について、スターリンは次のように述べている。
第二次世界大戦と現在の戦争を比較するつもりはないが、国家指導者の姿勢そのものについて:
わが政府には少なからぬ過ちがあった。1941年から42年にかけて、わが軍が撤退し、ウクライナ、ベラルーシ、モルドバ、レニングラード州、カレリア・フィンランド共和国の、私たちにとって故郷である村や町を離れざるを得なかった、絶望的な状況の瞬間もあった。それは他に道がなかったからだ……。
繰り返すが、我々には過ちがあった。最初の2年間、我々の軍は撤退を余儀なくされ、事態を掌握できず、生じた状況に対処しきれなかったのだ。
スターリンは、残酷で偏執的、気性が荒く、過ちを認めることを好まない人物だった。彼は、ある人々とは異なり、過ちを犯すことはかなり稀だった。しかし、スターリンでさえ公に過ちを認め、戦争初期の莫大な犠牲に対して罪悪感を抱いていた。
スターリンでさえ、多少なりとも共感の心を持っていた。彼は自分自身に対しても、部下に対しても、徹底的に責任を問うた。
しかし、プーチンには自省心が全くない。彼の器量はスターリンの何分の一にも満たないにもかかわらずだ。そして、彼は明らかにこの戦争に勝てないだろう。もっと謙虚になり、自分自身にもっと厳しく問うべきだが、そんな気配は微塵もない。
理由その 12 (anond:20260517235258) に続きます。
DeepL.com(無料版)で翻訳した上で、誤訳や表記ゆれのみ修正しました。太字は原文を反映しています。
これまでの投稿 2026-03-21 プーチン氏に反旗を翻したイリヤ・レメスロ氏の告発文の翻訳 2026-03-21 その後の彼の投稿から、いくつか抜粋して翻訳しておきます。 2026-05-05 反プーチンのイリヤ・レメスロ氏が、精神科病院から退院していた 2026-05-10 反プーチンのイリヤ・レメスロ日記 5月8日-5月9日 2026-05-17 イリヤ・レメスロ氏の「私がウラジーミル・プーチンを支持しなくなった理由」その 7 から その 11 (本記事) 2026-05-17 イリヤ・レメスロ氏の「私がウラジーミル・プーチンを支持しなくなった理由」その 12
その後の彼の投稿から、いくつか抜粋して翻訳しておきます。(すべての投稿は https://t.me/remeslaw/ から確認できます) https://t.me/remeslaw/2873 - 日本時間 3月18日(水) 13:38 続きは後ほど。私は...
プーチン氏に反旗翻した体制側ブロガー、精神科病院に収容 ロシア 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News https://www.afpbb.com/articles/-/3627616 私がウラジーミル・プーチンを支持しなくなっ...
今年の3月18日(anond:20260321192723)にプーチン氏に反旗を翻した後、精神科病院に収容されてしまったイリヤ・レメスロ氏が、その後退院し(anond:20260505233557)、さらに今回、反旗の告発文の続き...
理由その 7 から 11 (anond:20260517234938) の続き https://t.me/ilya_remeslaw/11368 - 日本時間 5月17日 21:01 理由その12:移民・人口政策が国民の利益に反している ロシアの死亡率と出生率は 壊滅的...
ゼレンスキーよりはマシ
いつも見てるyoutubeの解説動画で時々紹介される内容まんま。 あれもロシアの軍事ブロガーが情報源の情報源だったりするので当然か
カルマを積み増した
今年の3月18日にプーチン氏に反旗を翻した後、精神科病院に収容されてしまったと話題になったイリヤ・レメスロ氏(anond:20260321192723)が、なんと無事に退院して元気に情報発信を続けてい...
ロシアには政府を批判する自由がある……ってコト?!
ロシアの暗殺は高官が直接手を下すと言うよりも高官の感心を買うため関係者が手土産的にやっている節がある。 つまりイリヤ氏が誰かの手土産にならなかったと言うこと。しかしこの...
自演ツリー瞬殺されてた
だけど自分は逃げ回っていますよね 幼稚な人なんですね
レメスロ氏が、かつてのトランプ・ゼレンスキー会談をダシに、今のロシアの現状を嘆いている。 https://t.me/ilya_remeslaw/11315 - 日本時間 5月8日(金) 16:59 例年通り、戦勝記念日にふさわし...