共同通信の世論誘導のテクニックが光る記事でした。
5月15日に共同が配信した記事の見出し、
「本人希望」理由で廃止93万枚
この見出し読んだ人の多くは「93万人も、自主的にマイナカードを返した」と感じるでしょう。しかし、この数字には大きなカラクリがあります。
「本人希望」の意味
記事で用いられている「本人希望」は、総務省が使っている廃止理由の区分で、正しくは「本人希望・その他」です。
引越し後に手続きを忘れて失効したケース、紛失して再発行のために返したケース、カードの追記欄が埋まって作り直したケース——これらもぜんぶ「本人希望・その他」に入ります。
そしてここには、紛失した人や制度に怒って返した人も含まれてています。
数字の時は割合を、割合の時は数字を
では、「自主返納」は実際に何件なのか。
答えは記事の中にあります。
2段落目。
「12自治体を対象に実施した調査では『本人希望・その他』のうち自主返納は約4割だった」
93万枚の4割、計算すると約37万枚になりますが、記事は残りの6割が「紛失・失効・再発行」であることをまったく説明していないのです。
数字の規模感も見ておきましょう。
会計検査院の報告書では、2025年7月までのカード廃止総数は 1623万枚 とあります。93万枚はその一部にすぎません。自主返納はさらにその一部(93万枚の約4割)ですから、37万枚。廃止枚数のうち2.27%でしかありません。
一方、カードの保有枚数は2025年12月に1億枚を突破しています。保有枚数に対す比率で計算すると、わずか0.37% なのです。
共同通信は知らないふりをしている?
さらに気になるのは、3年前のことを無視している点です。
2023年7月、河野太郎デジタル大臣(当時)は記者会見でこう言っています。
「これは転入処理忘れや在留期限等も含まれる数で、自主返納の数だけではありません」
共同通信が、まさかこれを知らないはずがありません。それでもこの記事は、同じ区分の数字を「不安による自主返納が増えた可能性がある」と結びつける構成にしています。
しかも、会計検査院の報告書の原文はかなり慎重な書き方をしています。
「自主返納が発生していた可能性があると思料される状況も見受けられた」
という表現です。「断定はできないが、そういう可能性はありそうだ」という意味合いで、官庁文書として最大限に留保した言い方です。それが記事では、検査院が不安による返納を認めたかのような印象で読めてしまう配置になっています。
報告書の結論は何だったか
今回の報告書、その本来の結論は何だったか。これも記事には書かれていません。
「マイナンバーカードの一層の利活用を図るよう求めた」
つまり、「もっと使いましょう」という話です。
報告書はカード普及の成果を評価した上で次のステップを促したはずなのに、共同通信は「93万枚廃止・国民の不安」という記事にして配信したのです。
嘘はついていません。ただ、93万という数字を見出しにして、「不安」「自主返納の可能性」を冒頭に並べ、自主返納はその4割だとする内容は、二段落目まで読まないとわからない──報道機関でありながら、共同通信はこうしたレトリックが多すぎます。
何度か話していますが、数字で何かを伝えるニュースは比率を、比率で何かを伝えるニュースは実際の数字も確かめるようにしましょう。共同通信に騙されないように…
Quote
共同通信公式
@kyodo_official
「本人希望」理由で廃止93万枚 - マイナ消費効果は2兆4千億円
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