顔のしわやたるみなどを改善する「若返り(アンチエイジング)美容術」などとうたう東京都内のクリニックで美容医療を受けた女性3人が、目の下や頰にしこりができるなどの副作用が発生したとして、クリニックを運営する医療法人を相手取り、計約1850万円の損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こした。原告側は「事前の説明が不十分で、しこりのせいで人前で笑えなくなった」と話している。(橋本昌宗)
提訴は2月27日付。訴状によると、3人は平成30年~令和4年、顔に薬剤を注入してしわやたるみをとる「プレミアムPRP皮膚再生療法」を受けた。PRP療法とは、自身の血液を採取して濃縮した液体を使うもので、このクリニックではここにフィブラストスプレーと呼ばれる外用薬を添加して使っていたという。
原告側は、クリニックは女性らにこの療法の詳細やリスクについて十分な説明をしておらず、説明義務に違反するなどと主張している。
提訴後に東京都内で会見した代理人の梶浦明裕弁護士は「この療法は人によってはものすごいはれる上、除去手術をしないととることができないのに、十分な説明をしていない」と批判。「同じような施術をしているクリニックはほかにもある」として、今後も同様の被害の訴えがあれば、追加提訴も検討しているという。
原告の60代女性は、「人前で笑えなくなり、鏡に向かうたびに毎日絶望を突き付けられている」と憤る。
30代女性は、クリニックにしこりができたと申し出たが「『くまなくなってるじゃん。成功してるじゃん』と認めてくれなかった」と指摘。「しばらく会っていない友人には顔が変わりすぎて気づいてもらえない」と明かし、「除去してくれる先生を探すために費やした時間も考えると、ただただ悲しい」と話した。
美容医療による健康被害の相談相次ぐ
アンチエイジングなどを掲げる美容医療が社会に定着しつつある一方で、健康被害に関する相談も増加傾向にある。国民生活センターに寄せられた被害相談件数は令和5年度に901件と5年前の2倍以上に増え、その後も高止まりが続いている。
国民生活センターによると、美容医療に関する被害相談は平成30年度に420件だったが、令和5年度には901件まで急増。6年度900件、7年度885件と同程度の水準で推移している。女性からの相談が主ではあるが、男性からの相談も10~15%ほどを占めている。
「ミスにより、挿入した特殊素材の糸が出血を伴い飛び出した」(40代女性)「右ほほが青紫色に内出血し、今も治らない上痛みもある」(40代男性)といった声が寄せられているという。
一方、健康被害だけでなく、返金トラブルなど美容医療業界に関する相談全体でも増加傾向にある。平成30年度には1980件だったが、令和7年度は7207件まで増加しており、特に6年度は1万744件と突出していた。
センターは「『今すぐ施術が必要』などと不安をあおられてもすぐに契約しないようにして、施術前にリスクや副作用の確認をしてほしい」と呼びかけている。